「戦後日本住宅伝説」@埼玉近美

北浦和の《埼玉近代美術館》(MOMAS)に、企画展「戦後日本住宅伝説」を見に行く。
副題は「挑発する家・内省する家」。監修は五十嵐太郎氏。

会場は黒川紀章氏(1934-2007)設計の《埼玉近代美術館》、開館は1982年(本展終了後は来年の4月10日まで改修工事に入り、休館)。会場では黒川氏の作品も展示されている。

展示作品は以下の通り(掲載順ほか、会場配布物に準じる)
01.丹下健三氏「住居」(1953年)
02.増沢洵(1925-1990)「コアのあるH氏の住まい」(1953)
03.清家清(1918-2005)「私の家」(1954)
04.東孝光(1933-)「塔の家」(1966)
05.黒川紀章(1934-2007)「中銀カプセルタワービル」(1972)
06.菊武清訓(1928-2011)「スカイハウス」(1958)
07.磯崎新(1931-)「新宿ホワイトハウス」(1958)
08.篠原一男(1925-2006)「白の家」(1966)
09.坂本一成(1943-)「水無瀬の町家」(1970)
10.原広司(1936-)「原邸」(1974)
11.宮脇檀(1936-1998)「 松川ボックス」(1971、1978)
12.石山修武(1944-)「幻庵」(1975)
13.安藤忠雄(1941-)「住吉の長屋」(1976)
14.毛綱毅曠(1941-2001)「反住器」(1972)
15.白井晟一(1941-2001)「虚白庵」(1972)
16.伊東豊雄(1941-)「中野本町の家」(1976)

会場は図面、模型に大判写真というシンプルな展示。設計者へのインタビューまたは作品の内外観を撮影した映像資料(所要約3分~35分)もあり、ツブさに見ると、2時間はかかる(荒川修作の絵画作品が出ていたコレクション展までまわれず)。

覚え書き。
本展関連イベントとして、原氏と西沢立衛氏による対談が会期中に行なわれ、壇上の様子を伝える35分間の映像の他、「建築ツアー」などの関連映像を、埼玉近美のYoutubeサイトで視聴できる。

磯崎新「新宿ホワイトハウス」
ネオダダの中心人物として知られる吉村益信氏(1932-2011)のアトリエ兼住居。現在は「カフェアリエ」になっている。場内で流された磯崎氏へのインタビュー映像は店内で収録されたもの。

伊東豊雄「中野本町の家」
場内解説文によれば、当時、夫君を亡くし、娘二人をかかえた姉の為に、家の中に柔らかな光が差し込む住まいを設計した。馬蹄形の平面から、別称は「White U」。築20年ながら、現存せず。その理由は、想い出多きこの家に他人が住むことは、二人の娘さんには耐えられなかったからだったと知る。

黒川紀章「中銀カプセルタワービル」
美術館から徒歩数分の公園敷地内に、現物のカプセルが設置されていた。
2年前に森美術館で開催された「メタボリズム展」でも会場の外での現物展示を見たが、その後どうやら黒川氏ゆかりの埼玉近美に寄贈され、2012年1月から公園内で展示されているとのこと。
参考リンク:寄贈を伝える埼玉県政ニュース
http://www.pref.saitama.lg.jp/news/page/news120113-07.html


展覧会図録『戦後日本住宅伝説─挑発する家・内省する家』(2014、新建築社)は完売。閲覧用図録を捲ると、会場とは異なり、建物の竣工順の掲載に。巻頭エッセイは、MOMAS館長建畠晢氏と、展覧会監修者五十嵐太郎氏寄稿、巻末には月刊『新建築』に掲載された自作について語られた設計者自身のテキストも併設されている。
また、美術館ニュース[ZOCALO(ソカロ)] 2014.8-9号に、建畠館長による関連テキスト「機能主義と官能性」も掲載。
7月5日に始まった本展、会期終了時にはすっかり秋である。
この後は、黒川氏設計の《広島市現代美術館》(2014年10月4日~12月7日)、《松本市美術館》(2015年4月~)、八王子市夢美術館(2015年6月~)に巡回予定。




飲食のメモ。
埼玉近美の中にはイタリアン「ペペロネ」があるが、空腹状態で満席の憂き目に遭う悲劇を避けるべく、駅近くの「キッチンきく」でランチ。
メニュー表に「下にいくほど時間がかかります」と注意書きが添えてあったので、先頭のメニュー「車海老のフライ+生姜焼き」をオーダー。スリッパ履きに短パン姿の地元住民がふらりと来店し、慣れた感じで置かれた雑誌を手にとり、出て来るのを待つ、という感じの店内。
消費税込み850円、プラス味噌汁で50円=900円ナリ。エビが大きくて、おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

「キッチンきく」Twitter
https://twitter.com/kikuchan4353