山本卓郎建築設計事務所《大きなテラスの小さな家》オープンハウス

山本卓郎建築設計事務所による《大きなテラスの小さな家》のオープンハウスを過日に見学。
北側接道の敷地面積は70.13平米、最寄り駅からは徒歩10分ほどの住宅地。準防火地域に建つ、木造3階建ての住宅。延床面積は91.41平米。

事務所サイト〜worksには「K-HOUSE」としてスタディ模型の写真が出ているが、《大きなテラスの小さな家》の名の通り、ガレージの上が大きなテラスとなっている。
テラスは2層分の高さがある。
同事務所としては都内では2つめ、国内では5つめとなる住宅だが、今のところどれも"ホワイトキューブ"。「たまたまです。特に白いハコ限定でつくっている訳ではありません」と山本さん。
外壁の仕上げはリシン吹き付け。上の画はガレージの隅、足下を照らす防水灯。ガレージの床はコンクリートの金ゴテ仕上げ。

ガレージに面した玄関から中に入る。グレーのドアは車に当らないよう内開き。その後ろに、扉が鏡面仕上げの下駄箱がある。外壁と同じく白で統一された内壁が鏡面に映り込んで、実際よりも広く感じられる。
玄関で靴を脱ぐ際、正面上方に見えるこの"丸"は何だろなと思いつつ、向かいの奥にある居室と、左側にある水まわりから見学。
1階の居室はFLから650mm下がっている。西側に隣接する駐車場に面して開けられた窓の下端は、だいたい胸くらいの高さ。床はナラ材のフローリング。ドアは両側とも白く塗られ、ブロック形状のドア把手も白で統一。
同じく床レベルを下げている、水まわり空間の見下ろし。3段のステップで出入りする。ラワン合板+オスモカラーの天板に、幅の広い据置ボウルが置かれた洗面所。奥がバスルーム。
床の白丸タイルにあわせ、壁パネルも丸い模様。浴槽据置面はさらに低く、踏み込み高さを抑えている。照明はガレージでみたものと同じ防水灯。洗面所を挟んで反対側の階段下がトイレルーム。
玄関前に戻ると、先刻に目にした"丸"がぽっかりと開いていた。見学時に配布された資料を見ると、どうやらこの壁の裏に収納スペースになっている。出入り口は、東南側をまわるL字階段の途中にあり、隠し部屋のような雰囲気。
天井高1.4m、容積規定内の収納スペース。この1.5階を含めた床面積は104.89平米。
京都某所の寺の"悟りの窓"のよう。こちらは引き戸で開け閉めできる開口から、ガレージに居る見学者の姿が見えた。
開口の引き戸を閉め、逆に出入り口の扉を開けた状態。隙間から階段の段差が見える。このままではモノを出し入れする収納庫としての使い勝手がよろしくないので、側面にレールを仕込んだ3段を奥に引っ込められるようになっている。
山本さんに段差をスライドしてもらっている最中の画。引き渡し前の内覧会につき、階段の段差には養生が施されている。元に戻してもらった階段を上がり、2階へ。
2階に上がりきった正面の壁面、インターホン下のスイッチパネル。収納スペースでも同じ仕様を目にしたが、山本卓郎事務所作品のスイッチパネルはデザインが凝っている。
2階 ダイニング+L字カウンターで使いやすそうなキッチン。水栓金具側が広いのは、ダイニングテーブル側に収納棚を造作しているためである。
外観(1枚めの画像)でも確認できたが、厨房とダクトの一角は西側に出っ張っている。左側の奥は収納スペース。キッチンの中からのテラスの眺めが素晴らしい(下の画)
北側道路から見上げていた時は、これほどの開放感とは想像していなかった。通りからの視線をうまい具合に避けた高さになっている。内覧時は晴天だったので、上の画のように窓を全て開け放っていたが、仮にガラス戸を閉めても、この"抜け感"に大差ないだろう。
実に意外だったのが、これほどの大開口なのに、躯躰壁に正対するため、法規上の有効採光率にはカウントされない。ウソみたいな本当の話。勉強になる。
2階フロアの床はナラフローリング、貼りはヘリンボーン。テラスはどうしても色味にバラつきがでてしまうウエスタンレッドシダー(米杉)をランダムに貼ることで、全体で自然な仕上がりに見せている。リビングの壁3方にはラワンの天板がぐるりとまわり、テレビを置けるローデスクや、ちょっと腰掛けられるベンチにもなる。
茶色い革ソファの向かい、これから入るテレビのかわりに置かれた作品模型。右と左では、西側の窓の大きさと位置が異なっていた。
オープンハウスの開催を知らせる事務所ブログで、山本氏は「"プライベートな屋外空間を持つことは屋内空間と同様に住まいにとって重要なことである"という我々の考え方がそのままコンセプトになっています。」と概要をまとめている。
テラスから、3階部分の見上げ。2階と3階のサッシ窓の間に、横一文字のスリット(目地)が入っている。山本氏に確認したところ、この部分には、専門家には一目で想像できてしまう構造上の梁がわたされているらしい。そのママではベタっと重たい感じになるので、デザイン処理として、目地をスッと1本入れてスッキリと軽さを出している。
テラスから、2階室内の眺め。
蹴込み板をとり、階下への採光や、住まい全体の通風を確保している階段をあがって3階へ。
その途中、階段上から2階リビングの見下ろし。天井面に目立った照明はなく、ダウンライトとスポットライトを要所に配置している。3階、1階も同様である。
3階は施主夫妻の寝室。反対側は書斎スペースとトイレルーム。
3階の北側にも小さなテラスを設け、外に出ることができる。レバーハンドルの取り付け位置が低い理由を訊いたところ、「この物件に限らず、スイッチやレバーハンドルは低めにつけています。フロアから800mmが目安です。古い洋館などで見かける低いドアノブが、使用感覚が手に残るような感じがして好きだというのが理由のひとつですが、パッと見た時に、空間の印象を大きくする効果があると思います。ノブやスイッチパネルの位置が高いと、天井が低く見えてしまう」との回答。
3階からのテラス見下ろし。成る程、レバーハンドルが低めに取り付けられている。
何度みても、この開放感あるテラスはうらやましい。

《大きなテラスの小さな家》
設計管理:山本卓郎建築設計事務所
構造設計:山田憲明構造設計事務所
施工:山庄建設(株)