「SANAA まちをかえる建築」@十和田市美術館

十和田市現代美術館》で開催されている特別展「SANAA まちをかえる建築」を観に行く(会期:2014年2月1日〜3月30日)。



十和田市現代美術館》は、市のメインストリートである官庁街通り沿いにある。旧名を駒街道といい、広い道の左右には松と桜の並木が整然と続き、美しい。江戸時代から名馬の産地であり、1885年には陸軍軍馬補充部が置かれ、「馬の街」として栄えた往事を偲ばせる(以下、響きの良い旧名で表記を通す)。

十和田市 公式サイト
http://www.city.towada.lg.jp/docs/2011121200611/
この日の往路は雪(復路は雨天)。目指す施設を右側に視認すると同時に、何やら不思議な家?が反対側に。

画像左:「ファット・ハウス(Fat House)」
画像右:「ファット・カー(Fat Car)」
共にオーストリアの作家エルヴィン・ヴルムの作品。白壁の”太っちょハウス”は、降りしきる白い雪と一体となって、良い感じに。
ほかにも多数の作品が美術館周辺に点在する。一帯は「アート広場」といい、十和田現美の常設作品の展示スペースという位置づけ。

雪に埋もれていてもすぐ判る、草間彌生の作品群。題して「愛はとこしえ十和田でうたう(Love Forever, Singing in Towada)」。
土足で入れる。“草間かぼちゃ”の作品の中から、十和田市現代美術館の眺め。


白いオバケのような作品は、ドイツ人作家インゲス・イデーによる「ゴースト(Ghost)」。
四角い建物は公共トイレで、設計者は向かいの《十和田市現代美術館》と同じ西沢立衛さん。
「アンノウン・マス(Unknown Mass)」が覗いているのは男子トイレの側。
十和田現代美術館前バス停に置かれているストリート・ファニチャーは、スペインのマイダー・ロペスによる「トゥエルヴ・ レヴェル・ベンチ(TWELVE LEVEL BENCH)」。

美術館周辺もコンテンツが盛りだくさん。

《十和田市現代美術館》は、2005年の設計競技(プロポーザル)で選出された西沢立衛建築設計事務所が設計を担当。十和田市役所のニュースリリース(2008年4月25日発行)に拠れば、地区活性化構想は2001年に始まり、2002年のプロポーザルで基礎調査業務をナンジョウアンドアソシエイツに委託した。美術館だけでなく、前述のアート作品も含めて駒街道全体を美術館と見たて、5カ年計画で整備するプロジェクト「Arts Towada」が2005年にスタート、その中核となる《十和田市現代美術館》が2008年4月に開館した。初年度の年間来館者数見込み4万5千人のところ、なんと17万人を超える人々が訪れた。
参考:[ artscape ] >フォーカス(2008年5月)
設計競技の審査委員を務めた五十嵐太郎氏のテキスト
http://www.dnp.co.jp/artscape/exhibition/focus/0805_01.html

十和田現美といえば、前脚を高々と上げたこのウマ。韓国の作家チェ・ジョンファによる「フラワー・ホース(Flower Horse)」。

作品に応じて作られた大小さまざまな箱型の展示室が敷地内に配置され、ガラス壁の通路で結ばれている。

スゥ・ドーホー(韓国) の作品「コーズ・アンド・エフェクト」の展示室外観。画像左側の屋外展示作品(赤い彫刻)は、 椿昇の作品「アッタ(aTTA)」。

Suh Do Ho さんは個人的に好きな作家。昨年、金沢の《金沢21世紀美術館》での企画展「パーフェクト・ホーム」はとても良かった。

アナ・ラウラ・アラエズ(スペイン)の作品「光の橋(Bridge of Light)」展示室外観。
十和田現美は周囲に柵がなく、外部に対して大きく開かれているのが大きな特徴。ガラスウォール越しに中の常設作品が見られるが、外から眺めるのと、中で見るのとは大違い。展示室に一歩、足を踏み入れた瞬間の感動は、外では得られない。

カラフルなビニールテープで床を埋め尽くしたジム・ランビー(イギリス)の作品「ゾボップ(Zobop)」が贅沢にも床になっている、館内エントランスホール。ここから先は撮影不可。共有通路と後述カフェは撮影可。
弧を描いた通路に置かれている”うさぎ耳のチェア”は、西沢さんと妹島和世さんの共同事務所SANAAがデザインした「Rabbit Armless Chair」(マルニ木工/ネクストマルニ)。
敷地の東の端、通路の突き当たりにはショップとカフェがあり、建物の外壁2面にはそれぞれ、奈良美智の「夜露死苦ガール 2012」と、ポール・モリソン(イギリス)の「オクリア(Ochrea)」が描かれている。前者は2012年9月から開催された特別展「奈良美智:青い森の ちいさな ちいさな おうち」にあわせて生まれた作品。
ショップとカフェの棟には別途専用の出入口が設けられており、こちらは入館料なしで利用できる。
カフェからの眺め(正面の建物はNTT東日本十和田ITサービスセンタビル)。 惜しむらくは今日の天気。晴天下、特に桜の季節は絶景であろう。
カフェの床もアート作品、台湾の作家マイケル・リンによる「無題」。

カフェの奥には、館内で開催中のSANAAの特別展にあわせて、同事務所が手掛けた作品の建築模型が置かれている。

スイス・ローザンヌに2010年に竣工した《ROLEX ラーニングセンター》の模型(撮影可)。
しゃがんで模型を見上げてみたら、上からは見えなかった楕円形の開口の跡があった。スタディの過程で塞がれたものか?

特別展示室で開催中の「SANAA」展は、条件付きで撮影可。

同展ではSANAAおよび妹島和世氏と西沢立衛氏が共同もしくは個別に手掛けた作品や、進行中のプロジェクトの模型、写真パネル、資料映像などが見られる(以下、明記なきものはSANAA作品)。会場構成は西沢立衛氏。
手前から奥に向かって、《金沢21世紀美術館》、西沢さんの《豊島美術館》、メキシコで進行中の25階建ての複合施設「ネルーダ・タワー」の模型。さらに向こうの壁には《金沢21世紀美術館》の平面図。

ノルウェー・オスロで進行中の、今後10年間で10万戸の住宅を建設するプロジェクト「One Hundred Thousand」の為のリサーチを示したパネル2点が壁に。

韓国ソウル市で進行中の「ヒュンダイカード・コンサートホール」に関する展示。
妹島和世さんの初期の住宅作品《梅林の家》(2003年)の模型。
ニューヨーク市マンハッタン南部のバワリー地区に建つ《ニューニュージアム》の模型。段ボールと金属素材の模型。
後ろの壁には、1990年代の《飯田市小笠原資料館》、《熊野古道なかへち美術館》、《国際情報科学芸術アカデミー マルチメディア工房》、妹島さんが手掛けた犬島「家プロジェクト」における3つの作品の写真パネル。

手前:2012年12月に開館した《ルーブル・ランス》の模型。
奥:イスラエルのエルサレムで進行中の国立美術学校「ベツァレル・アカデミー・オブ・アーツ・アンド・デザイン」の模型。

「ベツァレル・アカデミー」は、エルサレム旧市街を見下ろす丘の上に建設予定。

展示室はこのほかに2つ。
途中の通路にも西沢さんのドローイングが展示されている。
展示室2:《ROLEX ラーニングセンター》竣工後の動画などを上映。

展示室3:手前は《ガーデンアンドハウス》、奥は《十和田市現代美術館の模型》、共に西沢立衛建築設計事務所による。

《十和田市現代美術館》模型、西南から眺めた全体像。

以上で「SANAA展」の展示は終了だが、キム・チャンギョム(韓国)の作品「メモリー・イン・ザ・ミラー」の常設展示室にて、《ROLEX ラーニングセンター》を舞台とした ヴィム・ヴェンダース監督の映像作品《If Buildings Could Talk・・・》を上映していた。





+飲食のメモ。
ランチは美術館内のカフェにて。ミュージアムショップ併設の「アペ・ロッサ」は入館料なしで利用できる。

カルボナーラ(600円)に、illyのコーヒーを付けて1000円。
おいしゅうございました。ごちそうさまでした。




アクセス:今回は青森より、十和田観光電鉄バスを利用。
青森駅前8:46発→十和田市中央10:26着のルート(料金1,830円)。途中、降雪による交通渋滞により予定より約10分遅れてバス停到着(美術館前ではない)。同バスは途中、東京方面からの新幹線が停車する七戸十和田駅前で乗降あり。

《十和田市現代美術館》公式サイト
http://towadaartcenter.com/