TOLOT/heuristic SHINONOME(トロット/ヒューリスティック東雲で開催中の「竹尾 PAPER SHOW 2014」へ。 1966年より続く紙の展示会は震災で一度延期となり、2年振りの開催。第47回めとなるテーマは「SUBTLEーーサトル|かすかな、ほんのわずかの」。
企画・構成は、原研哉+株式会社日本デザインセンター原デザイン研究所。展覧会図録に寄せた原氏の序文から引くと、SUBTLEとは「紙によって導かれ、精緻に研ぎすまされた人間の感覚の様相を言う」とのこと。
会場入口(上の画の左奥)を入ってすぐのところに置かれた最初の作品、三澤遥「紙の花」。
要約すると、グラデーションを竹尾の紙「ビオトープGA-FS」に刷って、芯に巻いて鉛筆状にし、鉛筆削りで削ったもの。直径約1.5~4センチ。削る時の力加減によって同じ花は二度と咲かない。
要約すると、グラデーションを竹尾の紙「ビオトープGA-FS」に刷って、芯に巻いて鉛筆状にし、鉛筆削りで削ったもの。直径約1.5~4センチ。削る時の力加減によって同じ花は二度と咲かない。
クリエイション会場の壁面には、本展にあわせて写真家の上田義彦氏が撮りおろした「紙の肖像」シリーズが続く。
上の画像左:「ヴァンヌーボV」、右:「ルミナホワイト」
仕事でよく目にする紙も、上田氏の写真でみると色気があって美しい。そういえば、原氏は会場入口に掲げたテキストの中で、「紙が白いということは、決して普通のことではない」と、紙の「神々しく屹立する白」について指摘していた。
上の画像左:「ヴァンヌーボV」、右:「ルミナホワイト」
仕事でよく目にする紙も、上田氏の写真でみると色気があって美しい。そういえば、原氏は会場入口に掲げたテキストの中で、「紙が白いということは、決して普通のことではない」と、紙の「神々しく屹立する白」について指摘していた。
トラフ建築設計事務所「ひとつながりの糸」
手漉きの越前和紙に漉き込まれた金色の糸が、台ごと切削された展示板の突起に巻き付けられている。左右で事なる表情を出した作品。
手漉きの越前和紙に漉き込まれた金色の糸が、台ごと切削された展示板の突起に巻き付けられている。左右で事なる表情を出した作品。
各作品を直に載せた台は、セラミック系人工木材製で、作品ごとの成型が可能。四隅に直径0.9ミリのステンレス棒を配し、伸縮性ある極細の糸を張り、結界とした。切削台の下のキャプションボードはヴァンヌーボを貼った3ミリのアルポリック板と、厚さ12ミリのアルミ・はにかむ構造の強化ボードを、それぞれ2本のワイヤーで補強された極細の4本の脚で支える。移動と再現が容易で、巡回展を前提としたデザインとなっている。
”結界”を越えなければ撮影可とあって、ケータイまたはスマホによる各種シャッター音が鳴り響く場内。撮影に夢中になった来場者の手荷物や身体が展示台に触れると、作品ごとゆさゆさと揺れてしまう(その度に、監視スタッフや気付いた来場者が台を押さえて静止させる、の繰り返し)。見る側にある種の緊張感を強いる展示手法で、よくぞ倒壊せずに最終日まで展示が保ったものである。
石上純也「スプリング」
展示台の解説図を見ないと(仮に見ても)、植物を模した極小”葉っぱ”で埋め尽くされていると、肉眼では容易に判別できない超微細な作品。
石上純也「スプリング」
展示台の解説図を見ないと(仮に見ても)、植物を模した極小”葉っぱ”で埋め尽くされていると、肉眼では容易に判別できない超微細な作品。
「スプリング」遠景。
図録に拠ると、抜き加工で作成された”葉っぱ”は25種類、任意とルールに即して、ランダムに見えるように配置されている(テキストを読んでも理解できず、気が遠のいた)。
奥に見えている作品は、中村竜治氏による「コントロール」。この位置からは「黄色」に見えていたのだが・・・。
図録に拠ると、抜き加工で作成された”葉っぱ”は25種類、任意とルールに即して、ランダムに見えるように配置されている(テキストを読んでも理解できず、気が遠のいた)。
奥に見えている作品は、中村竜治氏による「コントロール」。この位置からは「黄色」に見えていたのだが・・・。
反対側から見ると青く見える、中村竜治氏の作品「コントロール」。こちらも超微細。
直径12ミリ・輪の幅0.5ミリ(紙厚0.3ミリのインバーコート)のリングは、表:黄色+裏:白のリングと、表:青+裏:ピンクの輪が2個ずつ、 4つで1ユニット(抜き加工で繋がっているとF社のY氏に後日教わる)。 見る角度によって色が現われたり消えたり。
軟かさと硬さを併せ持ち、ラフで曖昧な特徴をもつ紙のディテールを、出来る限り”コントロール”することで、新しい風景を誕生させたという、中村氏らしい作品。
和田敦「かたつもりのさとる」
和田敦「かたつもりのさとる」
カワウソによって剥き身にされたカタツムリ(けっこうデカい)を主人公とした動画と、それを連続して描いたドローイングの対比。
色部義昭「I HATE U/I LOVE U」
格子状に開いた紙の表面と、格子の下に透けて見える、相反する2つのメッセージが読み取れる。
色部義昭「I HATE U/I LOVE U」
格子状に開いた紙の表面と、格子の下に透けて見える、相反する2つのメッセージが読み取れる。
作品を横から見る。1辺を残して完全に抜かれていない格子の四角が”脚”となって、作品を支えている。「I HATE U」と描かれた表面が白、裏面はピンクとグリーン(補色対比)の蛍光色で、鏡文字で「I LOVE U」と描かれている。下の白い展示台に蛍光2色が落ちて反射し、裏面の文字が浮かび上がる。「あいまいさ」をテーマとした作品。
宮田裕美詠「わずかな接点でつながっているネックレスのようなもの」
円形カッターで1枚ずつ切り抜かれたピンクの玉。その数40、紙もそれぞれ異なり40銘柄を使用。
寄藤文平「紙・人・紙」
寄藤文平「紙・人・紙」
僅かな設置面を残してレーザーで切り抜かれた人型が、幅40ミリ、深さ8ミリの溝(スリット)の中で、微妙にカタチ(腕の振り)を変えながら徐々に立ち上がり、また元の平坦な紙に戻っていく。
人型の身長は最大で8ミリ!
服部一成「コンピュータドローイング」
冨井大裕「角」
作品の中央部分、一カ所だけ三角の垂直の折り目”CORN”がつけられている(なんのこっちゃか上の画像ではさっぱりワカランと思いますが)。
三澤遥は前述「紙の花」と「紙の飛行隊」の2作品を出展。
実際に空中を落下していく様を撮影した映像がとても美しかった。
同氏は1982年生まれ、ムサビの工業工芸デザイン学科を出た後、nendoを経て、2009年より日本デザインセンター原デザイン研究所所属。
皆川明氏の出展作品「Pe!」の部分。
同氏は1982年生まれ、ムサビの工業工芸デザイン学科を出た後、nendoを経て、2009年より日本デザインセンター原デザイン研究所所属。
皆川明氏の出展作品「Pe!」の部分。
15ミリの展示台の中に紙束を収める空間を設け、細いスリットから上部が僅かに表情をのぞかせる。前後のストーリーを想起させる。
ハム・ジナ「タグやラベルを描く」
ハム・ジナ「タグやラベルを描く」
台の上に並ぶ作品は全て0.03ミリの極細ペン(コピック)による手描き。トレースではなく、実物を並べて見ながら描いている。
田中義久「保存ケース」
田中義久「保存ケース」
資料保存を目的とした保存ケース。経年変化を肯定、日焼けしやすい紙を敢えて採用し、紫外線を3分、8分、15分、45分とそれぞれ照射、表面に時間を刻印した。顔を近づけてよく見ると、左上にニスによる文字も刻まれている。
葛西薫「紙を貫こうとする石、あるいはそうさせまいとする紙」。
葛西薫「紙を貫こうとする石、あるいはそうさせまいとする紙」。
それぞれの紙の中央に小さく顔を出しているのは、アメジスト、サンゴなどの宝石。ピュアマットの表面にシルクの柔らか紙を合わせ、中の石よりも小さな穴を開けて、絶妙なバランス位置まで石を押し出している。つい、かさぶたを連想してしまった。
原研哉「紙の帽子」
半透明のクラシコトレーシング紙をレーザーでカッティング。原氏は例えば極上のチョコレートに被せることをイメージしている。
白い展示台に落ちた黒い影も含めて作品を成しているように思う。帽子というよりも「王冠」の風格。
ここまで精密になってくると、作品本体=紙の存在がわからなくなってくる。監視スタッフが指先でヒョイとつまんで動かしてくれた際に本体を確認、周囲からも思わず歓声があがる。
ガラス繊維が入ったセラミック系人造木材ならではの展示。それぞれの”帽子”にあわせて微妙な凹みをつけている。
これらクリエイション各作品の制作に際し、展示台の切削ボードの厚み15ミリ以下という共通ルールがある。
以降はコレクション会場。身の回りのさまざまなところに「紙」が在るのだと再発見。
これらクリエイション各作品の制作に際し、展示台の切削ボードの厚み15ミリ以下という共通ルールがある。
以降はコレクション会場。身の回りのさまざまなところに「紙」が在るのだと再発見。
「かたどる」と題した展示。プレス成型「モールド」で制作された、高級パティスリー「ピエール・エルメ・パリ」のマカロンをおさめる為にデザインされた3種類のパッケージ。
「いつくしむ」。本の背の綴じはこんなにも種類がある。
「張る」の展示台。二本の丸亀団扇(中央)と韓国の団扇(右)。
国によって角砂糖(2個セット)のパッケージも様々。「包む」。
紙あっての美しいカリグラフィ、「したためる」。
「目を凝らす」豆本の世界。
エングレービングという凸版印刷による美しい名刺カードで「もったいをつける」。のせられたインクが盛り上がっている。
「封印する」レター封筒。シーム(貼り合わせ)とフラップ(舌)の形状によって格式が決まる。
昭和な佇まいの洒落た洋菓子店や喫茶店に行くと、おすまし顔したペーパーレースがケーキの下に敷かれていてたものだ。
上記以外にもコレクション展作品は多数(設定キーワードは20)。
会場終盤の竹尾の新銘柄3点を披露したコーナーでは、紙の特色を活かしつつ、それぞれの世界観を、建築デザイン事務所 noiz が表現している。
アルゴリズムで導き出されたグラデーションで、色数が多彩なNTラシャのイメージを表現した作品「TONE OF GRAVITY」。
自然を意識した紙「ビオトープGA-FS」を綴じた冊子の束の内側をコの字状にくり抜いた「舌本」。まさしくベロのよう。
風光による「紙礁」。会場には「詳細は図録を参照」とあり、P272を開いてみると、紙(風光)の表面にレーザーカッターで細かな切り込みを入れ、伸縮によって立体感を出している。
関連書販売コーナーでは、その図録『SUBTLE』(編・発行:竹尾、税別3,600円)が飛ぶように売れていた。公式ツイッターによれば、閉場を待たずに完売した模様。
最終日の13時からは、コレクション会場に「源氏物語 II 」より「花散里」と「椎本」を出展している書家の石川九楊氏をゲストに迎えたトークセッション。ホストは会期中、多数の対談をこなした原研哉氏。
午後になるにつれて会場は混みあい、各所でスマホのシャッター音が激しさを増していった。
竹尾ペーパーショウ 2014 特設サイト
http://www.takeopapershow.com
公式twitter(会場画像掲載あり)
https://twitter.com/takeopapershow
(株)竹尾
http://www.takeo.co.jp
竹尾ペーパーショウ 2014 特設サイト
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(株)竹尾
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+飲食のメモ。
会場周辺にはカフェの類いは見当たらず、JR東雲駅から徒歩7分ほどのシーフードレストラン「ネプチューン東雲店」を目指し、遅い昼食を求めて移動。
会場周辺にはカフェの類いは見当たらず、JR東雲駅から徒歩7分ほどのシーフードレストラン「ネプチューン東雲店」を目指し、遅い昼食を求めて移動。
和洋の海鮮がいただけるこちらのお店。本日の定食のうち、1700円の値がついた「うに丼」は品切れ。海鮮たっぷりの「ネプチューン丼」1660円に「青のりの味噌汁」220円をつける。大満足。
おいしゅうございました。ごちそうさまでした。
おいしゅうございました。ごちそうさまでした。