塚本研×窓研究所「窓学 “WINDOWSCAPE”展」

展覧会タイトルになっている「窓学」とは、YKK-APが2007年から取り組んでいる調査研究で、東京工業大学塚本研究室も参画している。


塚本氏が学生らと共に世界28カ国で採取した”窓のふるまい”は、2010年に同大学塚本研編『WindowScape 窓のふるまい学』(フィルムアート社、2010年)としてまとめられている。写真集として眺めても楽しめる一冊だ。

「窓を歴史的、文化的に位置づけると同時に、その意味や役割を見極め、窓の新たな魅力や可能性を提示することで、よりよい建築、都市、社会の構築に貢献することを目指して活動」した共同研究成果の披露は国内で初めて。主催は2013年に立ち上げられた窓研究所(詳細はリンク先参照)
本展では、塚本研が訪れた世界100都市のうち、56都市で採取された窓の写真やスケッチ、実測に基づいて書きおこされた図面など膨大な資料群を、フィールドワークのプロセスや調査エピソードとあわせて公開。

メキシコ市《ルイス・バラガン邸》のコーナーでは、階段上で建築家と同じポーズをきめる塚本氏の姿も。ほかルイス・カーン、ジェフリー・バウなどの建築家が手掛けた住まい、アアルトが設計した役場、スタジオ・ムンバイの事務所、デッサウの世界遺産《旧バウハウス校舎》なども訪れている。
国内では、高田、金沢、奈良井(上の画像)、飛騨古川、郡上八幡、伊根、倉敷をリサーチ。現地で入手した地図や絵はがき、パンフレット、さらに土産物からは、現地の雰囲気が醸し出されている。
現地で「採取」された窓の写真群の一部

光と風:「たまりの窓」「にじみの窓」・・・、人とともに:「はたらく窓」「通り抜けの窓」といった柔らかなキーワードで分類、展示されている。例えば、コルビュジエの《ロンシャンの礼拝堂》は「彫刻する窓」にカテゴライズされている。分類は、前述の書籍『WindowScape 窓のふるまい学』に準じたものだが、境目はわりと緩やか(どっちつかず)。

なお”WindowScape”(ウィンドウスケープ)とは、「窓景」をあらわす造語である。


先にTOTOギャラリー・間で見た、乾久美子さんと藝大研究室の企画展の手法や展示と似ているのは興味深い。どちらもデジタルカメラとパソコンを必須アイテムとして、膨大な画像データをアーカイブして活用する、21世紀スタイルの考現学だ。3Dやらデジタル全盛期の今こそ、 手と足を動して、 野に出よ、という方向性を大学研究室では学生に提示しているのだろうか。

前述書籍のためのドローイング原画

「野帳(註:field books)に記した窓の実測スケッチをもとにアイソメを作成、トレーシングペーパーの上からペンできれいにドローイングしたもの」とのこと。
7年間におよぶ「窓学」の調査研究は今春のミラノ・サローネで「 WINDOWSCAPE展」として披露され、本展は帰国展を兼ねる。

参考:
YKK-APニュースリリース(2014.4.24)
http://www.ykkap.co.jp/company/japanese/news/2014/20140424.asp

AXIS Magazine「jiku」ミラノサローネレポートvol.1(2014.4.15)
http://www.axisjiku.com/jp/2014/04/15/vol-1%E3%80%80ykk-ap-アトリエ・ワン「windowscape」展/


サローネでの展示は、ミラノ大学中庭の会場にて行なわれた。回廊のコーナー部分に出現させたトンネル空間「Kaleido-wondow」は、「万華鏡(Kaleidoscope)をメタファーにした窓の集合。S=1:20模型や写真パネル(撮影:ナカサ&パートナーズ、太田拓実)、会期中に撮影した現地の映像で会場を再現。
ミラノでは、前述書籍の表紙にもなっている、イタリアで採取した物見の窓:「Hotel Le Sirenuse」のビジュアルをポスターサイズに引き延ばし、来場者に無料配布した(本展も同様だが、持ち帰っている来場者はあまり見かけず)
ポスター群は、デザインハブ入口から展示会場までのアプローチの壁にも貼られていた。



上の画像、左端から 彫刻する窓:《ルイス・バラガン自邸》のゲストルーム、窓の中の窓:メキシコシティ郊外の住宅鉄格子付き窓と、同:インド・ジャイプールの有名な「風の宮殿(ハワ・マハル)」の塔状階段室で採取した窓。


ポスター以外にも、 来場者に対して本展受付で立派な資料がワンセットで渡される。

一言に「窓」といっても、地域や文化、気候や風土によってさまざま。例えば、イスラム圏の女性は人目にふれないよう、住まいに穿たれた小さな窓または細い格子の隙間から外の世界を密かに眺めていた。今回採取された窓は、主催側が「窓のコーストライン」と名付けたユーラシア大陸南側、および欧州にて主に採取された。今後はアフリカやユーラシア内陸における窓も見たいもの。

会期は6月15日(日)まで、入場無料。




+飲食のメモ。
昼夜を問わず、東京ミッドタウンに行くとかなりの確率で食べのが、店構えも味もアメリカンな「Baker Bounce(追記.2015年12月閉店)

肉汁たっぷりの牛肉ハンバーガーにがっつりと噛りつきたい時の盛り上がりを裏切ったことなし。
おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

Baker Bounce