中村竜治会場構成「本・ことば・デザイン」@デザインハブ

東京ミッドタウン・デザインハブ第47回企画展「本・ことば・デザイン」を見る。「ことばを血肉化する。」をテーマに掲げ、総合ディレクションを幅允孝氏(BACH代表)、会場に並ぶ本の選者を幅氏のほか、伊東豊雄氏、葛西薫氏ら10名が務める。
約300平米の展示会場に足を踏み入れた途端、目に飛び込んでくるのは、手前からフロアの奥まで渡された長尺の紙帯。会場構成を中村竜治氏(中村竜治建築設計事務所代表)、アートディレクションをSOUP DESIGNの尾原史和氏が手掛けた。


本に顕された「ことば」を、デザインの視点で読み解き表現します。各界で活躍する第一人者が選んだ本とそこに息づくことばをデザインによって解き放ち、受け止めるための試みです。それぞれの本は会場で手に取って愉しむことができます。ーー展覧会フライヤーより。

会場の奥から入口方面見返り。
10名の選者が選んだ1冊が木のスツールの座に置かれ、その本から選者が抜粋した「ことば」が傍らの「紙」に、1m角のガラスボードには選者プロフィール、来場者へのメッセージなどが記されている。
選者:森永邦彦(デザイナー)
村上春樹著『風の詩を聴け』(講談社、1979)
大人の目線より下のレベルで、フロアの一角を利用して平行に渡された紙の帯の片面に、同著からの引用「夏の香りを感じたのは〜」以降の一文が。 文章はボードでも確認できる。

これら「本」と「ことば」のワンセットは、割とすぐ近くに置かれているところもあるが、本はどこ? 誰の選書? と探す行為が付随することも。例えば、伊東豊雄氏での場合、壁に立て掛けられたガラスボードの説明を読み、周囲を見回してから、どうやらあれだなと見当をつける。選書から引かれた「ことば」が内側に書かれたサークル紙を跨いで中に入り、スツールの上に置かれた「本」を手にする、という流れ、またはその逆の動線も。
紙をくぐったり避けたりしているうちに、ウッカリすると本展の「デザイン」を見逃してしまうので要注意。
選者:伊東豊雄(建築家)
武満徹著『音、沈黙と計りあえるほどに』(講談社、1971)

フロアを縦に横断する幅20cmの長尺紙には、田村隆一『腐敗性物質』(講談社文芸文庫、1997)から引かれた詩が書かれている。選者はグラフィックデザイナーの服部一成氏。
上の画像の右に写っている"くしゃくしゃ紙"も展示の一部。ブルーノ・ムナーリ作、谷川俊太郎訳の『きりのなかのサーカス』(フレーベル館、2009)を選んだグラフィックデザイナーの渡邉良重氏の関連。
この本との出逢い、どんな時にその本を開くのか、なぜこの本に惹かれるのかなどについては十人十色(服部氏の場合は床置きのガラスに記されている)。来場者は会場のあちらこちらで本を手にとり、空いたスツールに腰を据えて読むこともできる。本と向き合い、読んだ者の血となり肉となる作業の始まり。
本展を監修した幅氏が選んだ一冊は、クリス・デヴィート編、小川公貴、金成有希共訳『ジョン・コルトレーン・インタヴューズ』(シンコーミュージック・エンタテイメント、2011)。ガラスボードに寄せられた幅氏からのメッセージの末尾にはこうある。「デザイン」という領域で、愚直に前に進みたい人にも是非。

選者:葛西薫(アートディレクター)
『北風とぬり絵』(天野祐吉作業室、2011)
葛西氏が引いたテキストは、同書の発行人である天野祐吉氏(1933-2013)が巻末に寄稿した「解説」から。会場に置かれた本の、しおりが挟まれたページを開くと、テキストと、前後の流れもあわせて確認できる。

本展で葛西氏がこの本を選んだことについて、天野祐吉作業室による8月23日の『天野祐吉の「広告かわら版」』にコメントあり。
選者:平松洋子(エッセイスト)が選んだのは2冊。装丁家で俳人でもある間村俊一氏(註:まむらの「ま」は、もんがまえに「月」が正)の句集『鶴の鬱』(角川書店、2007)と『抜辨天』(角川学芸出版、2014)。鉛筆で傍線された句は「初夏の版下あはれ書物果つ」。

10冊の本は、デザインハブのエントランスアプローチにも一列に置かれている。関係者のプロフィールも対になっている。
プロフィール紙の四隅にうたれたピンの小さいことよ。
"真っ赤"な肉がビジュアルの「本・ことば・デザイン」。会期は明日9月28日(日)まで。開廊は11-19時、入場無料。




+飲食のメモ。
東京ミッドタウン・ガレリア2Fにあるカフェ「Mercedes me(メルセデス・ミー)」で休憩。間口が広い1Fのショールームからも気軽に入れる。蹴込みが鏡張りになっている階段を昇って入店する、少しだけゴージャスな動線でも良し。
同店は今年5月オープン、12月までの期間限定営業中(開店時間:11-21時)で、ランチや軽食メニューもあるが、話題の「ギャレット ポップコーン/Garrett(R)Popcorn Shops」が手軽なボリュームでいただける。
外苑東通りに面したガラス越しの光が明るく、各テーブル間隔もゆったりとしていて落ち着ける店内。階下のレストランフロアが平日でも混んでいるのに対して(店には失礼だが)、穴場だと思う (「ギャレット ポップコーン ショップス」は現在、新宿の某百貨店催事:美味コレクションに出店中、1,240円/1缶110gが平日夕方には600点を完売するという人気ぶり)
食べきりサイズの「ギャレット ポップコーン シカゴ ミックス」300円+「アメリカーノ」460円-セット割引-50円=消費税込で710円ナリ。ほろにが甘い「キャラメルクリスプ」と、チュダーチーズ好きにはたまらぬ味つけ「チーズコーン」の2種類が入っていて、交互に食べ進む手がやがて止まらなくなる。
同店では「オリジナル シカゴ ミックス」(800円)も9月から期間限定で販売を開始。黒を基調にしたシブくてカッコいいデザイン。キケンである。

カフェ「Mercedes me(メルセデス・ミー)」
http://www.mercedes-benz-connection.com/mercedes_me/