「建築の皮膚と体温 -イタリアモダンデザインの父、ジオ・ポンティの世界」の巡回展が、東京・京橋3丁目のLIXILギャラリー/ギャラリー1で始まった。常滑、大阪会場に引き続き、展示デザインはトラフ建築設計事務所が担当。
ジオ・ポンティ(1891-1979)はイタリア・ミラノ出身。デザイナー、建築家、画家、編集者といったさまざまな"顔"をもっていたことが、本展を見るとよく解る。
第一次大戦に工兵大尉として従軍・退役後、1921年にミラノ工科大学建築学科を卒業、建築家ミノ・フィオッキ・エミリオ・ランチャと事務所を開設している。リチャード・ジノリ製陶会社のアートディレクター迎えられるのは1923年のこと。住宅やヴィラの設計も手掛け、1928年に建築専門誌『domus(ドムス)』を創刊(1941年に編集者を辞職)、というのが30代後半までの主だった経歴(会場の年表より)。
会場奥にある年表では、ポンティの主な作品を4つのカテゴリーに色分けして出しているので、そこから展示を見るのも良いかもしれない(私のように「今さら他人に訊くに訊けないジオ・ポンティ」という人には)。
《ホテル・パルコ・デイ・プリンチピ(Hotel Parco dei Principi a Sorrento)》のレセプション(1960-62、イタリア・ソレント)を再現した本展の玄関口。青と白の小石形タイルがびっしりと張られている(現地の実際の写真は、上記でリンク設定したホテル公式サイト、または本展プレスリリース/PDFのメインビジュアルにも使われている)。
その裏側では、ヴェネズエラ・カラカスに建てられた《ヴィラ・プランチャート(Villa Planchart)》(1953-60)の資料映像を上映(約10分)。
その裏側では、ヴェネズエラ・カラカスに建てられた《ヴィラ・プランチャート(Villa Planchart)》(1953-60)の資料映像を上映(約10分)。
パネルを内壁・外壁として立て込み、開口=窓を開けて、街か迷路を模したような会場。要所には、ポンティが遺した言葉が散りばめられ、会場を回遊しながら、20世紀を代表するモダンデザインの巨匠の作品世界を感じとる構成。
右奥:前述《ホテル・パルコ・デイ・プリンチピ》関連展示ほか。
「床とはテオラマ(法則)だ」という言葉を遺したジオ・ポンティ。同ホテルでは床のタイルだけで約30種類もの幾何学模様をデザインした。本展では、このうち5つの幾何学模様をモチーフにしたオリジナルのコマ撮りアニメーションを制作、上映している(上映時間:5分、製作:kobito inc. 音楽:三浦正幸)。
左側:壁の四角錐タイルは、ポンティが設計した《サン・フランチェスコ教会》(イタリア・ミラノ)の外装タイルの復原品。見る角度によって聖フランチェスコのシンボル「タウ十字」も表現されている。会場には1964年竣工当時のタイルもあり。
「床とはテオラマ(法則)だ」という言葉を遺したジオ・ポンティ。同ホテルでは床のタイルだけで約30種類もの幾何学模様をデザインした。本展では、このうち5つの幾何学模様をモチーフにしたオリジナルのコマ撮りアニメーションを制作、上映している(上映時間:5分、製作:kobito inc. 音楽:三浦正幸)。
左側:壁の四角錐タイルは、ポンティが設計した《サン・フランチェスコ教会》(イタリア・ミラノ)の外装タイルの復原品。見る角度によって聖フランチェスコのシンボル「タウ十字」も表現されている。会場には1964年竣工当時のタイルもあり。
同教会および2008年の修復工事については、復原に協力したINAX(当時)発行の企業広報誌「INAX REPORT」No.178,P.54-57(PDFアーカイブ、11MB)が詳しい。容量を圧縮したweb版アーカイブ「INAX ARCHI Letter」PT0903にも同等の記述あり。
左側手前のケース:《ホテル・パルコ・デイ・プリンチピ》の床用にデザインされたタイルの再現品と、その特製ミニチュアタイル(制作:LIXIL ものづくり工房)。
その奥:イタリアのガッビアネッリ社のためにデザインされた床タイル。本展では、6シリーズ・11のデザインを再現しているが、この黄色い床タイルにおいては、釉薬と絵具の手掛けにより"ゆらぎ面"も表現している。
その奥:イタリアのガッビアネッリ社のためにデザインされた床タイル。本展では、6シリーズ・11のデザインを再現しているが、この黄色い床タイルにおいては、釉薬と絵具の手掛けにより"ゆらぎ面"も表現している。
ポンティの代表作のひとつ、「スーパーレジェーラ(SUPERLEGGERA)」(1957)。
年表に拠ると、ポンティは1952年にカッシーナ社のために最初の「レジェーラ」をデザインしている。「世界一軽い(子供が片手で持ち上げられる)」と謳った「スーパーレジェーラ」の誕生はその5年後。
会場ではこの「スーパーレジェーラ」を実際に(片手で)持ち上げてみたり、座り心地も体験できる。
年表に拠ると、ポンティは1952年にカッシーナ社のために最初の「レジェーラ」をデザインしている。「世界一軽い(子供が片手で持ち上げられる)」と謳った「スーパーレジェーラ」の誕生はその5年後。
会場ではこの「スーパーレジェーラ」を実際に(片手で)持ち上げてみたり、座り心地も体験できる。
下の画像、右側:「オーガナイズド・ウィンドウ」模型写真。窓の桟と室内インテリアとのバランスで、空間にリズムを生み出そうとしたスタディの記録。フィリップ・ジョンソンの「グラスハウス(Glass House)」(1949)、P.モンドリアンの影響がうかがえる。
上の画像、左側の緑色のタイル:オランダ・アイントホーフェンに1968年に建てられた《ビエンコルフ・ショッピングセンター(De Bijenkolf)》のファサードに用いられた外装タイルの再現。同センターの外観モノクロ写真の向こう側は、テキスタイル作品の展示(下の画像)。
イタリアのヴィットリオ・フェラーリー社のためにデザインしたテキスタイル「窓辺の恋人たち」(1933)。
現行品「I Morosi alla Finestra by Gio Ponti,1930」は米国Maharam社が生産している。
陶の花器(リチャード ジノリ社)、猫のシルバーオブジェ(サバッティーニ社)、ドアハンドル(オリヴァーリ社)、サラダサーバー(クリストフル社)など、インダストリー製品の展示も(貴重な個人蔵を含む)。製品化前のスケッチやドローイングも多数(協力:ジオ・ポンティアーカイヴス)。
ジオ・ポンティが手掛けた作品は実に幅広い。前述《サン・フランチェスコ教会》では、洗礼盤、家具、照明器具などもデザインしている。
チェアやチェストなどの家具作品では、2012年のミラノ・サローネで、イタリアのモルテーニ 社がポンティの名作椅子を「GIO PONTI Collection」として復刻、話題となった(国内販売:arflex)。
ミラノに現存する《ピレッリ・ビル(Torre Pirelli)》(1955-58)もポンティの設計。イタリアでは初となる、地上124mの近代高層ビルだった。
チェアやチェストなどの家具作品では、2012年のミラノ・サローネで、イタリアのモルテーニ 社がポンティの名作椅子を「GIO PONTI Collection」として復刻、話題となった(国内販売:arflex)。
ミラノに現存する《ピレッリ・ビル(Torre Pirelli)》(1955-58)もポンティの設計。イタリアでは初となる、地上124mの近代高層ビルだった。
地上124mというと、最髙部の高さで比較するなら、中央通りを挟んで会場の向かいに昨春建った《東京スクエアガーデン》と変わらない。
3つめの映像資料は、85歳のG.ポンティにインタビューした貴重なもの。イタリア国営放送RAIが1976年に放送した「ポンティとの1時間」の一部(約17分)を訳して上映。
上の画像、右側中央:彫刻作品「ロサンゼルスのカテドラル」のための模型(1967)。羽を広げた天使がモチーフ。
会場最深部にあるこの空間から、入口方向を見返すと、壁パネルに開けられた四角い"窓"を通して、会場入口付近までが一気に見通せる。
会場最深部にあるこの空間から、入口方向を見返すと、壁パネルに開けられた四角い"窓"を通して、会場入口付近までが一気に見通せる。
逆に、入口付近の開口を含めて2つの"窓"の先に、最深部にある「天使」のスタディが見える。この仕掛けは、モダニズム建築全盛期に、"構造を負わなくなった壁も残しつつ、同時に視線に抜けを持たせ、人々の目を楽しませるデザインを考案した"(会場解説文より)とされる、G.ポンティへのリスペクト(rispetto)だろう。
本展タイトルに込められた意味、再現タイルの制作過程については、「LIXIL Archiscape(リクシル アーキスケープ)」の特集(vol.04)が詳しい。トラフ建築設計事務所 代表の鈴野浩一氏と禿真哉氏へのインタビューも掲載。
http://archiscape.lixil.co.jp/feature/vol04/
10月30日には近くのAGC studioを会場に、本展のキュレーションを務めた田代かおる氏(デザインジャーナリスト)と、近代建築史が専門の長谷川堯氏(武蔵野美術大学名誉教授)によるトークセッション「建築の皮膚感覚 ジオ・ポンティと村野藤吾の表現を探る」が開催されるが、既に申込多数で受付を閉め切ったとのこと。
http://archiscape.lixil.co.jp/feature/vol04/
10月30日には近くのAGC studioを会場に、本展のキュレーションを務めた田代かおる氏(デザインジャーナリスト)と、近代建築史が専門の長谷川堯氏(武蔵野美術大学名誉教授)によるトークセッション「建築の皮膚感覚 ジオ・ポンティと村野藤吾の表現を探る」が開催されるが、既に申込多数で受付を閉め切ったとのこと。
巡回は東京で最後となる「建築の皮膚と体温 -イタリアモダンデザインの父、ジオ・ポンティの世界」展、
会期は11月22日(土)まで、水曜日休館。開廊は10時-18時、入場無料。
なお、LIXILギャラリーにはこのほか2つのギャラリー(ギャラリー2,3)があり、今月4日から「クリエイションの未来展」が始まっている。企画展監修者として、清水敏男、宮田亮平、伊東豊雄、隈研吾の四氏を迎え、第1回は清水敏男氏監修による「木村恒介展 -光素(エーテル)の呼吸-」。こちらの会期は11月24日(月)まで。
LIXILギャラリー
http://www1.lixil.co.jp/gallery/
LIXIL文化活動Facebook(2014年9月24日オープン)
https://www.facebook.com/LIXIL.culture
なお、LIXILギャラリーにはこのほか2つのギャラリー(ギャラリー2,3)があり、今月4日から「クリエイションの未来展」が始まっている。企画展監修者として、清水敏男、宮田亮平、伊東豊雄、隈研吾の四氏を迎え、第1回は清水敏男氏監修による「木村恒介展 -光素(エーテル)の呼吸-」。こちらの会期は11月24日(月)まで。
LIXILギャラリー
http://www1.lixil.co.jp/gallery/
LIXIL文化活動Facebook(2014年9月24日オープン)
https://www.facebook.com/LIXIL.culture
+飲食のメモ。
LIXILギャラリーが入っているビルの並びには有名な高級洋菓子店があって、奥に静かな喫茶スペースもあるのだが、洋酒がきいたケーキはたぶん好みが分かれるところ。
昭和通りを越えて、銀座1丁目に昨秋オープンした「雪ノ下」の 銀座店へ。厳選食材によるパンケーキ、かき氷などが有名。発祥の地・梅田の本店は完全予約制。銀座店はカウンター2列・14席という規模で、曜日と時間帯と天気にもよるが、長蛇の列が出来る盛況ぶり。殆どの客が頼む人気のパンケーキは700円から。焼き上がりまで約20分かかる。
LIXILギャラリーが入っているビルの並びには有名な高級洋菓子店があって、奥に静かな喫茶スペースもあるのだが、洋酒がきいたケーキはたぶん好みが分かれるところ。
昭和通りを越えて、銀座1丁目に昨秋オープンした「雪ノ下」の 銀座店へ。厳選食材によるパンケーキ、かき氷などが有名。発祥の地・梅田の本店は完全予約制。銀座店はカウンター2列・14席という規模で、曜日と時間帯と天気にもよるが、長蛇の列が出来る盛況ぶり。殆どの客が頼む人気のパンケーキは700円から。焼き上がりまで約20分かかる。
上の画は、蜜なし、自家製練乳アイスが載った「よつ葉クリームチーズとサワークリーム」のパンケーキ(税込800円)+堀口珈琲の豆でドリップされたホットコーヒー/ブレンド#7(600円、セットは200円引きで400円になる)。
「雪ノ下」のかき氷は旬の果実を使い、あわせてシーズンメニューがある。時に品切れ、あるいは入荷待ちの食材も。
上の画は、京都宇治 森半の「抹茶氷」(800円)。つぶ餡の上からかかった練乳と、中に埋まっていた練乳氷を除いて、白い部分は一切なし、上から下まで濃厚なる抹茶。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。
雪ノ下 銀座
http://yukinositatokyo.net/
上の画は、京都宇治 森半の「抹茶氷」(800円)。つぶ餡の上からかかった練乳と、中に埋まっていた練乳氷を除いて、白い部分は一切なし、上から下まで濃厚なる抹茶。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。
雪ノ下 銀座
http://yukinositatokyo.net/