「森と木の国あきた展2015 ”私が見せる、秋田”」@新宿パークタワー

新宿パークタワー1階のアトリウムを会場に「森と木の国あきた展2015 ”私が見せる、秋田”」が 10月7日に始まり、9日まで3日間の会期で開催されている。
吹き抜けの大空間の下、約400平米の広さに、4tトラック3台で搬入された秋田県の角材を格子状に組み上げたブースが8個並び、壮観。これほど大掛かりな展示は開館以来初めてとのこと。会場構成は納谷建築設計事務所

参加企業は秋田県で製材、合板、集成材の加工や、木工品、家具、建具などの製作をしている、秋田の木材産業を支える17社。

秋田県、秋田県木材産業協同組合連合会主催によるPR展示は、昨年はサブタイトルを「曲げわっぱから住宅まで」として同じアナトリウムで開催。今回は首都圏のハウスメーカーやデザイナーがセレクトおよびアレンジを施し、建築家やデザイナーの来場をさらに意識した展示となっている。
ブースは大小8つ、南北に縦に並ぶ。ブースを構成する角材は秋田県で加工され、4tトラック3台に積んで会場まで輸送された。
意外なことに、納谷建築設計事務所が展示会の会場構成を手掛けるのは本展が初。とはいえ、同事務所の所長、副所長を務める納谷学氏、新氏のご兄弟は、秋田県能代市の出身。最髙の人選といえる。白地に文字だけという、雪国をイメージしたフライヤービジュアルづくりから同事務所が参画し、デザインした。
平日の夕方にも関わらず、補助席も追加されて満場となった「森と木の国あきた展2015 情報発信セミナー」の第一部には納谷学、新の両氏が登壇。今回の本展のみどころ、地元の材を要所に配した《トヨタカローラ秋田 秋田南店》(スライド表示中の写真、2011年グッドデザイン賞受賞)、《センティール・ラ・セゾン千秋公園》についてレクチャー。進行中の「秋田トヨペット 角館店」では天井面を秋田杉の突き板で、同能代店では秋田の木材を構造として使うプランが進行中とのこと。
「会場では秋田の木材の魅力をどう伝えるか。木による仮設パビリオンという造形的な面白さではなく、来場者の五感に訴えられるような展示にしたかった」(セミナーにて、納谷両氏談)。成る程、外から館内に入ると、木の香りがした。「ホール全体に秋田杉の香りが漂わせたかったので、表面積ができるだけ大きくなるように角材を組んだ」とのこと。
固定方法はシンプル。建設資材足場で用いる単管パイプ四隅にたて、角材の端に丸孔を開けて、上から落として交互に組んでいる。構造計算は千葉工業大学 多田脩二研究室が担当し、事前にモックアップも組んで納谷事務所と恊働で検証。強度の安全性だけでなく、規定の時間内に設営および撤収が終わるか、鳶職を含めて何人必要かなどを事前に算出している。「今回の会場構成では、料理でいうところの"仕込み"に時間をかけ、結果的に説得力のある建築になった」と納谷両氏がその出来映えを語っていたが、周到な準備のかいあって、設営は約1日で済み、予定の3時間前に終えている。
大理石の床にベニヤ板を敷き、四隅に足場の座を設置してから、高所を除いて人力での施工。2mの高さまでは学生が手伝い、それ以上は専門の鳶職人が担当した。メインタイトルを掲示した中央のブースが高さも最大で、総重量は約3.1tある。
こうして完成した箱型のブースに8社、壁側のパネルブースに9社が出展。納谷さんに会場で教わるまで、遠目には気付かなかったが、角材は同じではなく、無垢材や集成材、また秋田杉のほか県下の広葉樹も使われている。
ブースの角にあらわれている面を見ると、違いがわかりやすい。
集成材にもさまざまな製材方法がある。上の画はフィンガージョイント。ノコギリの歯が合わさったような接続部分が判るだろうか。
上の画、左右にわたされているのが並行合板、直角に交わっているのは無垢材。
上の画、社名がシートの切り文字で入っている材は広葉樹。
本展が終了し、解体した後、孔を開けた端の部分を切り落とせば、廃棄せずに角材として再び利用できるのも、納谷事務所が考えた重要な展示コンセプトのひとつ。
「8つのブース全ての香りを変えるのはさすがにできないまでも、秋田の木材に関するさまざまな資料やサンプルも置いてあるので、ブースの中も自由に回遊して、木がもっている魅力を五感で味わってもらえたら」(納谷兄弟談)

「森と木の国あきた展2015 ”私が見せる、秋田”」は新宿パークタワー1階アトリウムにて、入場無料。最終日の9日は17時に閉場。

秋田県公式サイト「美の国あきたネット」リリース
www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1438606468224/index.html




+飲食予定のメモ。
セミナー開催日に会場で来場者アンケートに答えたら、先着順で「あきたこまち」の新米をいただいた。
このブランド米の名前の由来が、平安期の歌人・小野小町であることは容易に推察できるが、小野小町生誕の地が秋田であるとの仮設は初めて知った(パッケージ裏面記載の情報より)。 おいしく炊いて、いただきます。