宿泊体験:《9h 京都》

京都寺町にあるカプセルホテル「9hours(ナインアワーズ)京都」に泊まる。
9 hours 京都》は2009年12月開業、クリエイティブディレクションおよびプロダクトデザインを柴田文江氏(Design Studio S)、サインおよびグラフィックデザインを廣村正彰氏(廣村デザイン事務所)、インテリアデザインを中村隆秋氏(ナカムラデザイン事務所)が手掛けた。スタイリッシュな館内、シャワー:1時間+睡眠:7時間+身支度:1時間=滞在9時間(9h)というシンプルなコンセプトに基づくネーミングなどが話題を集めた。

同ホテルは日本商環境設計家協会(JCD・現名称は一般社団法人日本商環境デザイン協会)主催「JCDデザインアワード2010」大賞受賞作品。公開で行なわれた最終審査会を五反田で聴講したが、7名の審査委員の圧倒的支持を得て選出されたのを覚えている。

オープン前も、ファッション系媒体での報道、関係者によるトークイベント、アメニティを披露した展示会(「ナインアワーズ展 都市における新しい宿泊のカタチ」@六本木 アクシスギャラリー、会期:2009年8月19日-21日)を開催するなど、従来の”カプセルホテル”の概念をひっくり返すような革新的デザインを次々に提示した。

昨年秋に運営会社が変わったので、館内ウエアなど開業時の設定から若干の変更があるかもしれないが、24時間チェックイン/アウトが可能になっている。利用規定など詳細は公式サイト参照のこと。

上:1Fエントランスまわり
下:1Fラウンジ

1Fのフロア図。
左側がエントランスと受付カウンター、中央はラウンジ、右の奥にエレベーター(EV)が2基ある。敷地は奥に長く、いわゆる”うなぎの寝床”。

男女別に利用階が設定されている。使うEVも別々。扉には明快な大きなサインが。

シャワー室の脱衣所まわり。貴重品以外の手荷物はこちらに置く。
アメニティは大小のタオルが各1、やわらか素材の浴衣が1着、歯ブラシセット。使い終わったタオルと浴衣の返却場所もサインで明快。館内で見かけた海外ツーリストの利用客にも解りやすい。

“歯ブラシ”のサインが床に表示された洗面所。
シャワーブースは計6室。使用しなかったが、共有のバスタブが1つあるようだ。

シャワーブースの水栓金具はたしかグローエ製。ハンドソープ、シャンプー、リンスの共用ボトルは”9h”のロゴがシールで貼られていた。
共用トイレ(TOTO製)、ウォシュレット付き。

さて、 シャワーを済ませ、寝泊まりする”ポッド”のフロアへと移動する。
ドアを開け、迎えられた空間は、それまでの白を基調とした公共スペースの雰囲気とは別世界。SF映画に登場する宇宙船の中のよう。

チェックイン時に割り当てられた”ポッド”で就寝。
上の段の”ポッド”には、3段の階段に足をかけて、バーを握って昇降する。
外部との仕切りは出入り口に付いたロールスクリーンのみ。枕やマットレスの感触は思っていたよりも快適で、とても清潔だった。
個人的な難点が2点。
ひとつは遮音性の低さ。 他の”ポッド”の利用者がうつ寝返りの音まで筒抜けに聞こえる。内部の無臭を保つ為には仕方ないのだが、各個に付けられた換気扇の音もとても気になった(安眠対策としては耳栓要)。
もうひとつは”ポッド”内がかなり乾燥していること。内部にフックが1つでもあれば、濡れたタオルでも引っ掛けられるのだが。

目覚まし時計は”ポッド”内の照明が段階的に明るくなって、自然に覚醒を促すという仕組み。試したところ、設定時間の10分後に目が醒めた。この天井照明は2〜3段階の切替が可能だったように思う。

カプセルホテルというところに宿泊したのは今回が初めてなので、他所との比較が出来ないのだが、魅力を上から3つ挙げると、最安1,800円から高くとも4,800円で泊まれる宿泊料金の安さ、全館通して保たれた清潔感、アクセスの良さ。

JCDデザインアワード2010受賞記念講演会の席上、登壇者の一人が「京都で経験値を積み上げて、同様の宿泊システムを全国展開したいと展望を述べていたと記憶しているが、その後どうなったのだろう?

追記:2014年7月20日に2店舗めとなる《9h 成田空港店》がオープン。



京都での飲食メモ。
《9h》館内には飲食施設はないので、朝夕共に周辺の飲食店にて。
烏丸三条「伊右衛門サロン京都」へ。

京都の老舗茶舗福寿園とサントリーが提案するカフェラウンジで、日本のお茶の文化をベースに新しい食生活やライフスタイルを提案するというコンセプト。運営は南青山の246cafeなどを手掛けるカフェ・カンパニー(株)が参画している。
オープンは2008年6月だが、いま京都で最も予約がとりにくい店のひとつと聞いた、8時から11時までの朝食も、曜日と時間帯によってはかなり待つことに。

「IYEMONの朝ごはん」(1000円)はプラス200円で、薩摩玉子+海苔+特製醤油のセットが付く。ごちそうさまでした。

「伊右衛門サロン京都」
http://iyemonsalon.jp




2月に開店したばかりの「前田珈琲 京都文化博物館別館内 旧日本銀行京都支店金庫室 文博店」という、正式に書くと長くなる店名の喫茶店にも、アート鑑賞がてら行ってみる。

京都府京都文化博物館別館》は1906年(明治36年)竣工、辰野金吾と弟子の長野宇平治が設計した赤煉瓦の建物。かつての日本銀行京都出張所。国の重要文化財に指定されている。

京都府京都文化博物館は、三条通り(上の写真、左側)と姉小路側(同、右側)に1988年に本館が建てられ、2011年にリニューアルオープン。別館は三条通を中心とする「界わい景観整備地区」における景観重要建築物のひとつとして無料公開されている。
旧営業室(京都文化博物館別館ホール)では、アートイベントなども開催されている(訪問時は「京都府美術工芸新鋭展」を開催中。大迫力のヤノベケンジ作品「Sun Sister」が鎮座していた。

参考リンク:「京都文化博物館」サイト>建築小噺
http://www.bunpaku.or.jp/info_bankkenchiku.html




前田珈琲のカフェがあるのは、以前は金庫室だったところ。
ウィンナコーヒー(600円)。おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

前田珈琲は本店の店構えも好きだが、小学校だった建物をコンバージョンした「京都芸術センター」内の明倫店も雰囲気があり、居心地も良い。

参考リンク:前田珈琲 文博店
http://www.maedacoffee.com/?page_id=647