番組視聴:驚き!ニッポンの底力「巨大建築物語」

4月26日(土)NHK オンエア
日本が世界に誇る土木・建築技術の一端を、国内外の建設実例をもとに、当時の担当者の証言を交えて伝えるNHK制作番組。 出演は石原良純含む芸能人5名、ケンプラッツ編集長の高津尚悟氏、「ぶらタモリ」でもお馴染みの久保田アナ。
上:番組が収録された「日本橋ダイヤビルディング(旧江戸橋倉庫ビル)」の解体・保存工事中の様子(2010年撮影)

下:取り壊される前の建物外観をプリントした工事のためのホロ。
工事看板には「戦前は眼下の神田川に停めたフネからクレーンで荷揚げしていた云々」という説明があったと記憶している。 今回の工事では、1930年(昭和5)竣工の建物の外側は残して、くり抜いた内側に地上18階のビルを建てる。

今年8月末の竣工を目指す現場では、保存・修復・復元を掲げて工事が進められている。旧社長室の重厚な大理石カウンター、今では出来ないアメリカ製の左官壁ラフコートなどは壊さずに残される。また旧ビルの屋上にあった船橋を模したコンクリ塔屋は復元されるが、隣接する新しいビルの梁で30トンもの重みを支える。
三菱倉庫ニュースリリース(2010年1月29日)
www.mitsubishi-logistics.co.jp/news/2010/100129.html

以下、主な取材先と内容(順不同)
番組中では社名は明らかにされないが、最後に流れたテロップ、画面に映り込んだ企業ロゴ、ネット上に公示されているリリース情報などから推測した。
・東京ドーム(1988年)
日本初の空気膜構造のドーム天井を建設した竹中工務店の当時の担当者の回想や映像が流れる。台風、雷、降雪など日本の気候条件に則って検討した結果、訪米の同規模のドーム球場より10本多い28本の天井のワイヤーが必要で、その分だけ天井が重くなった。かつ敷地の北側に広がる小石川後楽園の緑への日射を確保する為に、園側が低い傾斜形状となっている(そういえばそうだ)
当時のテント膜は、フッ素樹脂がコーティングされたガラス繊維製で、厚さ0.8ミリ、1センチ角あたり120キログラムもの荷重に耐える(メーカーは太陽工業、同社 実績集より)。225枚から成る天井膜に空気を一気に送り込んで膨らませる、竣工前年の6月28日に実施された「インフレート工事」が最大のヤマ場であった。
太陽工業はその後、リチャード・ロジャースが設計したイギリスの「ミレニアムドーム(The02)」、サウジアラビアの「預言者モスク」、アメリカ「デンバー国際空港」、中国「上海国際サーキット場」など世界各地の大型施設におけるテント膜も手掛けている(同社サイト~実績集~海外INDEX
最新の膜材は、光触媒により、太陽光で自然と汚れが落ちる優れもの。今年6月にブラジルで行なわれるサッカーWCのメインスタジアム「ブラジル国立競技場」にも、この酸化チタン光触媒膜材が採用されている。これら日本のテント膜材は、世界シェアの7割を占めている。
太陽工業サイト~光触媒テント製品ページ、実績集
www.taiyokogyo.co.jp/titan/index.html
日本建築美術工芸協会~会員企業訪問(2000年6月掲載)
www.aacajp.com/Corporate_visit/taiyokogyo/taiyokogyo.html

・虎ノ門ヒルズ(2014年6月開業予定)
地上52階の高層ビルを建てながら、計画から68年を経てこのほど開通した俗称「マッカーサー道路」を地下に通す計画。

下:1年前の建設中のもの、東側/新橋方面からの眺め。
ビルを支える柱は200本以上。上の画の列柱は、前述・環状2号線の中央分離帯に位置する。
森ビル プロジェクト実例集
www.mori.co.jp/projects/toranomonhills/

・JR「東北縦貫線計画( 神田駅周辺ほかで進行中)
JR上野駅止まりの高崎、宇都宮、常磐の3線の東京駅乗り入れを目指し、架線の増設工事が進行中。神田駅周辺では、既存の東北新幹線の高架の上部に線路が新設された。終電後に3時間しか行なえない敷設工事では、幅4メートルの送電線の間を、幅3.1メートルに分割した橋脚を通過させ、架橋していった。br /> JR東日本ニュースリリース(2008年3月18日)
https://www.jreast.co.jp/press/2007_2/20080318.pdf

・千住関屋ポンプ所建設その3工事
東京都下水道局が行なっている大規模治水工事。テニスコート20面分の敷地内の地下50メートルに、15階建のビルがすっぽり入る巨大貯水槽を「ニューマチックケーソン工法」により埋設する。施工は大林組・大木建設JV。
大林組サイト~プロジェクト最前線vol.24
www.obayashi.co.jp/projects/project25

プロフェッショナルその1:鉄筋工と結束工
直径3センチ、長さ4メートルの鉄筋を持ち上げ、配筋図通りに組み上げる様子、手作業と思えぬ早ワザで次々と結束していく。
プロフェッショナルその2:潜函工
減圧しながら地下を行き来し、2.5気圧・湿度100%の現場で作業に従事。
プロフェッショナルその3:コンクリートミキサー車手配担当者
建設現場に打設されるコンクリートは鮮度が命。前日の作業進捗度から現場担当者が翌日に使う量を産出、作業当日の朝にメーカーに発注される。番組では、八州コンクリートが電話注文を受けてから「千住関屋ポンプ所」で使われるまでを追った。生コンは、JIS規格により製造から90分以内に打設し、いったん流し込んだら中断は許されない。メーカーの手配担当者は、受注量からミキサー車の台数を割り出し、当日の道路混雑状況から、工程や出荷のタイミングまで1分単位で見計らう。
参考:「生コンパーク」(全国生コン青年部協議会作成 子供向け解説ページ)
http://www.zennama.or.jp/park/

・大阪 あべのハルカス(2014年3月オープン)
横浜ランドマークタワーを4メートル超えて日本一の高さを誇る(施工は竹中工務店)。周辺に資材置き場(ヤード)が確保できず、先ず1階フロアをヤードとし、搬入車も分刻みで管理した。建設が進むにつれ、セットバックしている2棟の屋上をヤードに利用した。
なお、あべのハルカスのURLは、ビルの高さ=300メートルにちなんだドメインとなっている。
「あべのハルカス」公式サイト
www.abenoharukas-300.jp
竹中工務店プロジェクトサイト
www.abeno.project-takenaka.com

・旧赤坂プリンスホテル(丹下健三設計、1955年)解体工事
赤坂の一等地、31階建の屋上に重機を入れて崩していく「ミンチ解体」では騒音や大量の粉塵が巻き起こるなどの問題から、工事を請け負った大成建設は知恵を絞り、屋上を残して直下の2フロアを解体、作業が終わるごとに1分間に3.5センチかけてジャッキダウンさせ、地上まで到達させる「テコレップシステム」を生み出した(参考:鹿島建設が2007年に本社ビルを解体したのは、1階部分から削っていく「カットアンドダウン(だるま落とし工法)」)
解体するビル全体ではなく該当フロアだけが囲いで覆われたので、徐々にビルが縮んでいく様は往来からも丸見え。SNS上でも話題となった。
大成建設ニュースリリース(2010年2月23日)
www.taisei.co.jp/about_us/release/2010/1266478984208.html

・ボスポラス海峡横断鉄道トンネル@イスタンブール(2013年)
ヨーロッパ側とアジア側を結ぶ海底トンネルの絵図面は、オスマン=トルコ時代の1860年まで遡る。だが同海峡は、潮の流れが速いうえに黒海とマルマラ海で塩分濃度が異なる為、上下に2つの潮流が存在する。大成建設は、過去の現場で培った沈埋(ちんまい)工法で臨むに際し、1年がかりでデータを収集、独自の潮流予測システムを開発した。予め地上で用意した鉄鋼の箱を吊り上げ、海底に沈め、順番に20センチ間隔で計11個を敷設、連結してトンネルを開通させた。
大成建設ニュースリリース(2011年2月28日)
www.taisei.co.jp/about_us/release/2011/1294369103285.html
日本産業技術大賞総理大臣賞受賞(2014年4月8日)
www.taisei.co.jp/about_us/release/2014/1353300877470.html

・トルコ イズミット湾横断橋(進行中)
2016年に完成すれば、世界で4番目に長い吊り橋に。受注したのは(株)IHIインフラシステム(グループ親会社は株式会社IHI、2007年に旧石川島播磨重工業株式会社より社名変更)だが、上記ボスポラス海峡の現場を経験したトルコ人スタッフも数多く参加している。
同現場を含め、これら高所の現場で作業する鳶職の映像も断続的に流れた。現役の橋梁鳶のOさんの言葉:「何もないところに1本のケーブルをかけることを使命としている。パソコンでは橋は架からない」。
IHIグループサイト~PJ担当者インタビュー
www.ihi.co.jp/brand/our_challenge/cat2/vol1.html
IHIニュースリリース(2011年9月9日)
www.ihi.co.jp/ihi/press/2011/2011-9-09/

番組冒頭の高津氏(日経BP社 ケンプラッツ)によれば、2020年開催予定の東京オリンピックを見越して、今後2~3年のうちに、延べ床面積1万平米以上の現場が300以上控えているという(同社調べ)

NHK-BS ザ・プレミアム
www.nhk.or.jp/bs/thepremium/