「マテリアライジング展2」@藝大陳列館

東京藝術大学陳列館にて開催中の「マテリアライジング展2|情報と物質のそのあいだ」を見に行く。今年は協賛企業が増えたか。

2011年に丸ビルでの「東京2050//12の都市のヴィジョン展」で発表された作品の発展系「東京2050+」。出展したは東京2050team、東京大学 羽藤英二研究室(都市領域)とそのメンバー。西暦1550年から2050年の間の、日本各都市における人工動態を視覚化したもの。
京都・大阪の関西圏ボリュームはあまり変動ないが、江戸→東京の人工爆発は気持ち悪いくらいに凄まじい。 にしても、この黒い球体は何を表しているのだろう?
東洋大学/藤村龍至研究室による「google chair」。
パッと見は、名作椅子の再現。藤村氏の facebook (:7月12日掲載の説明)に拠れば、「世界上位9カ国語(中国語、英語、スペイン語からポルトガル語、日本語まで)のグーグルの画像検索結果をもとに、それぞれの言語の椅子のイメージを構成要素に注目しつつ類型化し、最後に全体を統合してグローバルな椅子のイメージを再構成するという試み。「世論の物質化」というコンセプト」とのこと。

以下の4点は、metaPhorest(早稲田大学生命美学プラットフォーム)としての出展作品。
吊られた物体3個が小刻みにウィンウィン動いていた「3RD Nature 」。BCL(福原志保+Georg Tremmel+吉岡裕記 #metaPhorest)による、スペキュラティブ・プロジェクト(デザインの分野に「Speculative」というキーワードがあると初めて知る。検索結果例:武蔵野美術大学 2012年「PROVOKE」01_report。自立した「メモリーマシーン」のプロトタイプ:#01 Moss Matrix Printer によって、3.11後の「Post-nuclear Landscape」を描き出していく予定。
#metaPhorest 石塚千晃「Form」Synthesis : 1type/carrot
四角いグリッド状の人参を形状生成しようとしたらしい。
#metaPhorest 齋藤帆奈、吉岡裕記「Time Poiesis」
粘菌、蟻、金魚、藍藻の動きと生長を定点で捉えた映像から、時間軸を高さに変換したデータを3D出力したもの。右端はシアノバクテリアのデータを元に生成されたもの。
AKI INOMATA「やどかりに『やど』をわたしてみる」から3点。
実際にヤドカリに背負わせたビジュアルは、作家である AKI INOMATA 公式サイト〜TOPページで見られる。2009-10年に解体前のフランス大使館で開催された「No-Man’s Land」参加作家とのこと。

奥の扉から、屋外展示へ。

小沢剛研究室による「レーザーカッター茶屋再現」の監視役は、第五代校長正木直彦(1862-1940)の陶造壽像もとい、学生スタッフ。日陰とはいえ冷房のきかぬ場所にて、ご苦労なことである。
100年後に結成される委員会が、2014年に実在した茶屋の再現に取り組む、藝大らしいシャレのきいたコンセプト。小沢氏のTwitterによれば、2011年に発表した「油絵茶屋再現」の続編にあたる作品。
シューズの作品は、世界観を併設された簡易に折り畳まれたペーパーブックで読ませる。アートな感じ。
実際に商品化されそうなビーサン。


ここまで見ての個人的感想。
昨年も感じたのだが、オープニングの解説を聴くか、アーティストトークに参加しないと、作品を見てもあまりワクワクしてこないというか、制作意図や過程やスゴさが解りにくい作品が殆どで、解説板のテキストを読んでみても、作品背景がすんなり読み取れる場合もあれば、建築界にありがちな”ポエム”に陥っているものもあり、頭も心も消化不良に。その辺りを公式サイトはカバーしておらず、検索中にたまたまいきあたった、RedBull.comのカルチャーコンテンツのレポート(執筆:Yu Miyakoshi/宮越裕生氏)や、CBCNETの7月29日のブログのテキストや、同展公式Twitterがリツイートしている幅の広い賛否半々の感想を読んで、自分なりに解釈するしかない。 もしくは公式本『マテリアライジング・デコーディング 情報と物質とそのあいだ』(2014、millegraph)を買ってくれということか。


1Fの1室では、作品を増殖させるべく、野老朝雄さんが公開で鋭意作品制作中。
野老作品「 [PIECING PIECES PROLIFERATION] 組合わさっていく部分の増殖」を見ながら階上へ。
円形のタペストリーは、江渡浩一郎氏が8月1日付けのTwitterで絶賛されていた作品。野老さんのTwitterでリツイートされていた、作品制作者「川原」さんの7月19日のつぶやき:Rotondaというグラフィック作品を布に起こし、パッチワークキルトにしてます、とのこと。

この「川原」さんに限らず、野老作品の解説板には制作協力者および企業名が「6/15現在」とクレジットされている。会期中に協力者も増え続ける、ということらしい(6日に来場した竹内昌義氏が制作に参加した画が、野老さんのTwitterに同日アップされている)
野老朝雄「般若心経」壁面写経

画面左:「BigDate Materialization」
気象庁が公開している気温、湿度、気圧、風速・風向きなどの1日の気象データを、 それぞれ直径、樹脂の厚み、高さ、形状を決定する数値として1時間ごとに変換、熱融解積層法という世界最大級のデルタ型3Dプリンタで出力中の壷。別の台では、来場者の誕生日の気象情報から、手のひらサイズの壷として 生成・出力も。

フロア中央に設置された暗室では、思いがけずクワクボリョウタ作品にめぐりあう。「針穴をあけた紙を通したRGB光源による網点プロジェクション」。 昔のTVのブラウン管と同じ原理で、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が浮かび上がる。
暗室内には瀬川晃氏と連名で「情報科学芸術大学院大学[IAMAS] 車輪の再発明プロジェクト」としての作品も出展。
奥: ご近所ものづくり同盟(出展者3名のうち、菅野創氏は菅野芸術学院の高校1年生!)

手前:慶應義塾大学 池田靖史研究室殻状多胞質様態
多面体空間(ボロノイ・セル)の集合体を、「情報空間」上から「実空間」に実体化するためのシステムと、それによって生成される物体、とのこと。

今春設立されたばかりの藝大/中山英之研究室が初参加。
実際のサイズの10倍に拡大した「大きなヒートカッター」を使って、発砲スチロールブロックをくりぬいた作品(7月28日に実演カット)


以下は個人的感想2。
モヤモヤ感の原因は、此処での展示で「美しい」と思えるような作品が少なかったことにあると思われる。自分が制作趣旨を理解できないことへの苛立ちを差し引いても、ソースやツールが最先端の割には、DIY感があって、作品まわりの片付けも上手とは云い難い。青木淳建築計画事務所を独立したばかりの酒井真樹氏による会場構成は細部に凝っているらしいのだが、その気付きよりも先に、どうにも「雑然」に目がいってしまう。未熟な展示手法を、一線のプロの作品と同じ空間に並べてしまうのは、仮に教育的指導を狙ったにしろ、いささか荒っぽいような。公式サイトの情報量や動線もあまり親切ではない。会場が国内美術教育の最高峰たる学び舎の陳列館だという、こちらの色眼鏡の所為かもしれないが。
同展に関する数々のツイートのうち、美術系ライター/編集者のTaisuke Shimanuki さんのTwitterでの指摘(:展示最終日の8月8日付)を読んで、モヤモヤが晴れた。

マテリアライジング展2|情報と物質のそのあいだ」会期は7月19日-8月8日、開館時間は10時-19時(最終日は20時まで延長)。入場無料。

別会場にて、「類推する形態 マテリアライジング展II関連展示/東京藝術大学情報センターCAD図法演習I成果展」も開催。谷中3丁目《岡倉天心記念公園》前にある「HASISO」にて、会期は8月2日から10日まで。昨年の「マテリアライジング展」の中心人物のひとり、金田充弘氏の藝大研究室が展示協力。




+飲食のメモ。
藝大まで来たら、永山祐子氏がリノベーションした「カヤバ珈琲」まで足をのばしたい。関東では珍しい、あったかタマゴサンドが食べたくなる。
画像は11時までやっているお得なモーニング(700円)、900円のランチセットは11:30から。

雰囲気も良く、食事も甘味も美味しいので、平日でも谷根千散歩の中高年や藝大生と思しき若い客に人気が高い。此処まで歩いてきて満席の憂き目に遭うとちょっとヘコむ。

カヤバ珈琲復活再生のSTORY
http://kayaba-coffee.com/story00.html