「たよりない現実、この世界の在りか」@資生堂ギャラリー

「凄まじい展示をみた」という、某氏のツイートが気になり、資生堂ギャラリーで開催中の企画展「たよりない現実、この世界の在りか」を見に行く。
予備知識なし。そのお陰で、会場内に一歩足を踏み入れた瞬間、かつてない衝撃に見舞われた。

場内は一部撮影可だが、一部の専門媒体(RedBull.com>Yu Miyakoshi/宮越裕生氏の8月1日の記事)などを除き、同展をみた人達がネット上でネタばらししていない功績は大きい。それに準じて、会場の画像は今回掲載しない。

出展者:【目】は、参加者と共にアート作品のアイデアを実現する活動を行なう wah document が、アーティスト荒神明香(こうじんはるか)氏の作品を実現させるために組織した現代芸術活動チーム。ディレクターは南川憲二、制作統括は増井宏文(共に wah document 運営メンバー)が務める。
昨年2013年の瀬戸内国際芸術祭では、空き家を会場にした作品「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」を、今春には福岡の三菱地所アルティアムにおいて単独の企画展「状況の配列」を開催している。本展は【目】として初となる東京での作品披露。

中央通りから西側に入ったところにあるギャラリー入口から《東京銀座資生堂ビル》に入ると、いつものエスカレーターは使えず、ヒールを履いているなどの理由で足下に不安がなければ、「点検口」から入るように、との注意書き。「点検口? それってどこ?」と面食らっていると、無機質な丸型ケースハンドル(把手)をひねって白い鉄扉の中に消えていく、来場者と思しき人が視界に。ウソでしょ、と思いながら、先人に倣い、扉を開ける。

以下、テキストオンリーで「ネタばれ」。









驚きの展開は、開けた扉の先でも続く。工事中の現場としか思えない仮造作のような階段を降りて進む。靴底の裏では、踏み板から(ギシギシ)とあぶなっかしい音がする。



(ギシギシ)



L字に折れた階段の下、左手にみえた鉄扉を開けると、驚愕の世界が待っていた。思考と息が数秒、止まってしまうほど。



「おおお」



ドアの向こうに突如として現われた「ホテルの館内通路」にしか見えない空間のつくりこみの凄さに、暫し呆然自失。



「うわーーー」



福岡で発表した作品でのギャラリートーク(3月15日)で、南川氏が「ギャラリーに入ったにも関わらず『ここはギャラリーではない』と感じるアプローチを考えていた」と語っているが(三菱地所アルティタム4月6日の「ニュース&レポート」より)、まさにその通り。


「それにしても、ここまでやるか、という」



フカフカの赤い絨毯が敷き詰められた廊下の両側に、木の扉と灯された間接照明が右と左に続く。壁にさりげなく飾られた額も作品の一部。一角には消化器や、有料テレビのカード自販機までもが置かれ、リアルな情景を当たり前のように構成する。

会場の廊下は「コの字」になっていて、L字の一部空間が撮影可能。 EVホールのテーブルに、あたかもホテルの備品のように置かれている三つ折りのフライヤーがまた秀逸。本作品「TAYORINAI GENJITSU Konosekaino Arika」の説明書となっていて、「ホテルTG支配人からのあいさつ文、スタッフ・協力クレジット、中はFLOOR MAP(館内案内図)となっている。

廊下の突き当たりの「107号室」と、その手前の空間に、それぞれ異なる作品が展示されている。どちらも最初は何だかよくわからないのだが、前者は不意に衝撃的に、後者はジワジワと感覚を揺さぶってくる作品だった。

同展の反響の大きさは、荒神さんのTwitter のリツイートでも窺い知れる。 一度でも資生堂ギャラリーを訪れたことがあれば、これまでの展示手法とは比較にならない、イッちゃった表現方法なので、受ける衝撃たるや凄まじいものがある。今年みた作品の中で、間違いなく一番の「思い出」になる。
会期は2014年8月22日まで、入場無料。




+飲食のメモ。
界隈・中央通り沿いには、とらや、銀座立田野、源吉兆庵など有名な甘味どころが並び、平日でも空席待ちの列が出来ている。暑いこの季節、あまり並ばずに銀座でかき氷を食べたければ、銀座4丁目の「松崎煎餅」2階のお茶席が意外に穴場。
客層は常連と思しき慣れた感じの中高年が目立ち、井戸端会議真っ最中のグループの隣に座らなければ、店内は雰囲気が落ち着いていて、接客も丁寧。観光客だらけの銀座の喧噪から離れ、ゆったりとくつろげる。大きめの小豆で、抹茶が濃厚な宇治金時(税込み1,080円)がおいしい。ごちそうさまでした。

大江戸菓子匠「松崎煎餅」
http://matsuzaki-senbei.com