「Timberize TOKYO 2020」@スパイラル

南青山のスパイラルガーデンで開催中の「Timberize TOKYO 2020」を見る。まだまだ知られざる、というべき木造建築の可能性を広く知らしめるもの。主催はNPO法人 team Timberize
4年前に同じ会場で開催した「ティンバライズ建築展 都市木造のフロンティア」では、もしも表参道のストリートにこんな木造建築が出来たら、という提案を行なったが、今回は仮サイトともどもさらにスケールアップ、6年後に迫った「東京オリンピック2020」の臨海部の会場をデザインしてみせた。


本展を機に、先ずは「東京オリンピック・パラリンピック(以下、大会)」で使用される会場について、公式サイト〜競技会場プランで確認してみる。臨海部(東京ベイゾーン)にはメディアセンターと選手村を含めて23施設が計画されている(以下、施設規模は大会準備局リリースに、作品については会場の解説文に準拠した)
本展が提案しているのは、晴海と有明地区と、辰巳や新木場など周辺地区。大会中のビジュアルを誰にでもわかりやすい模型で、そして"宴の後"の姿を展示パネルで提示している。

有明地区の提案(模型:S=1/200)。
手前:「有明アリーナ」(総座席数:15,000)
準備局計画:大会中/バレーボール、シッティングバレーボール会場、大会後/多目的アリーナ
大断面集成材の木版リングを積み重ねていく積層構造。屋根は大スパンに適した鉄骨造。

「BMX競技場」(総座席数:5,000)
準備局計画:大会中/BMX競技会場(参考:全日本BMX連名official site)、大会後/開発用地
競技日程は3日間のBMXレース会場の提案。仮設となるスタンドはLVL(単板積層材、Laminated Veneer Lumber)で組み、解体後の材は住宅に転用する。会場奥のアナトリウムでは実物大の仮設スタンドを展示。
「ペロドローム(自転車競技場)」(総座席数:5,000)
準備局計画:大会中/自転車競技会場(トラック)、大会後/開発用地
鉄骨より遥かに比重の軽い木の特性を生かした軽快なデザイン。外周部の鉄骨柱を支点とし、内部の26本の梁による木架構と、外部のコンクリートデッキが、互いに重層的バランスをとる、天秤のような構造。

「有明体操競技場」(総座席数:12,000)
準備局計画:大会中/体操、ゴールボール、大会後/開発用地
体操競技の軽快さをイメージした、木造ルーフの大屋根を架けたアリーナと、周辺全体の提案。仮設のルーフはイベント会場やカフェ・レストランが点在する「オリンピックパーク」敷地全体を覆う。大会終了は「高密度木質都市」に生まれ変わり、解体したルーフが再利用される。

辰巳の森公園を仮サイトとした「アクアティクスセンター」(総座席数:20,000)の提案(模型:S=1/200)。
準備局計画:大会中/水泳、飛込、シクロナイズドスイミング、大会後/水泳場(座席数:5,000)
座席数の3/4を減らす前提の施設を、いかにも"仮設然"とならないようなデザインとした。そしてロンドン五輪で使用されたザハ・ハディドが設計した「Aquatic center(現名称:London Aquatics Centre)」と似たような減築がなされる。
天井はインナー/アウトフレームの二重構造。仮スタンドと、アウトフレームとそれを支えていた周囲のbackstay、インナーフレームを吊っていたケーブルを撤去。強度・施工面での利点以外にも、日中は明るい太陽光と共に美しい影を会場内に落とす木造のカテナリーハニカムによる天井(インナーフレーム)は残し、角度可変式の支柱脚部を内側に倒して支える仕組み。

新木場・夢の島公園を仮サイトとする、木造による新スタジアム構想
極大大断面集成材に鉄骨を補完して組み合わせれば、8万人規模の屋外スタジアムも"夢"ではない。

大会中は10,000人以上が住む選手村がおかれる晴海地区。
大会後は住宅や国際交流関連施設として再利用することを前提とした計画を踏まえ、大会後の街区案を team Timberizeとして提案(模型:S=1/50)。
手前の模型:商業施設と船着き場(右端)。
奥:小学校と集合住宅。
手前:サイクルズステーション、高架のサイクリングロード(自転車専用道路)が連結する。
二重螺旋の木製チューブを鉄骨の橋脚で支えたサイクリングロード。外側はガラス張り、雨雪や強い海風から利用者を防護する。
手前:樹木状の円形ユニットによる、保育園を想定した建物。
奥:1Fには商業店舗が入ることも想定した、耐火構造である木製ハイブリッドによる集合住宅。2棟は空中回廊・屋根付きの木橋で連結している。

レーザーカッターによる、精巧な模型の数々。もちろんこれらは未だ採用以前のデザインである。だが、建築基準法的・技術的に不可能な提案ではない。現代の技術力をもってすれば、こんなにも大きな構造物が木でも可能なのだ。いや、木だからこその可能性が示されている。

アナトリウム展示では、前述「BMX競技場」の仮設スタンドを実物展示。
スタンドに腰掛けた正面のモニターでは、team Timberizeからのメッセージ、前回の展示「ティンバライズ建築展 都市木造のフロンティア」で提案された作品CG、エンジニアードウッドなど最新木材に関する資料映像を流している。
会場の床は、前回の展示で使われた構造用合板を再利用。仮設スタンドの下はきっちり補強されているとのこと。

このほか、日本全国スギダラケ倶楽部による「杉の休憩スペース」や、2000年以降に建てられた「100の木造建築」の模型 (シーラカンスK&H 工藤和美,掘場弘《山鹿市立山鹿小学校》、中村拓志/NAP建築設計事務所 狭山《森の礼拝堂》ほか)も見られる。
左奥から、KUS 内海彩,小杉栄次郎《下馬の集合住宅》と《赤羽の集合住宅》、スタジオ・クハラ・ヤギ 久原裕+八木敦司《Stepふくしま》の模型。

入場時に受付で渡されるヨコA3資料の裏面に、「100の木造建築」インデックス、設計者名、設計者が100字以内にまとめた作品解説が付く。但し、1から79まで。team Timberizeが出展を募ったところ、100以上集まってしまい、展示スペースも足りずに、やむなく出展をお断わりした模型も多数あるとか。
《下馬の集合住宅》、《大阪木造仲買会館》、《エムビル》の作品解説パネルと、木質パネル:WOOD.ALC(Attain Low Caobon Societyの略)とCLT(Cross Laminated Timber)、集成材、LVLの実物展示。

耐火、耐震基準を法的に満たしていることを、前展に引き続いて説明。

6年後に使われる大会施設は、神宮外苑のメインスタジアムを含めて、数も規模もこれ以上。予算やら景観問題やら前途多難な様相を呈しているが、本展をみて、久々に明るく前向きな期待感を抱いた。どこの国で開催しているのかわからないようなものを(税金で)つくるより、日本の文化・伝統と最新技術とがハイブリッドされた、ビジターや、遺される子らに対して誇れる施設であるべきだろう。

会期中は計3回のトークセッションも会場内で開催される。明日最終日は14時から(テーマ:木造とこれからのまち)。

会期:2014年9月5日(金)〜9月15日(月・祝)
開館:11〜20時
会場:東京都港区南青山 スパイラルガーデン(スパイラル1F)
入場無料

詳細:NPO法人 team Timberize 公式サイト
www.timberize.com/




+飲食のメモ。
会場に隣接した「スパイラルカフェ」で、改めて展示を眺めるのも良いが、会場周辺はカフェ多数。 歩いて5分ほどのところに、片山正通氏が手掛けた《INTERSECT BY LEXUS》がある。
ガラスウォールの内側は、レクサスのスピンドルグリルを組み合わせた模様がフィルターとなって内外を緩やかに仕切る。木製かと思ったが、レクサスのステアリングハンドルで使われるバンブーを表面に貼っているとのこと。
参照元:「INTERSECT BY LEXUS」公式サイト〜片山正通インタビュー動画 再生時間:6分6秒(YouTube掲出中の動画「Masamichi Katayama interview: The Design Concepts of INTERSECT BY LEXUS - TOKYO(complete version)」は限定公開)

1FにFUGLENとコラボレーションしたカフェが入っている。が、今回こちらでいただいたのは、夏季限定のかき氷。その名も「カスタマイズかき氷」。英語表記で敢えてもう一度、「CUSTOMIZED SHAVED ICE」だ。
ソースは元から5種類が付く。キウイーフルーツ、甘夏とイチゴのソース、ハニーレモン、エスプレッソ、ミルク(練乳)、これにジャージーミルクアイスクリームが付いて、消費税込み850円。
「自由に組み合わせてさまざまな味を楽しめる」のだが、一考してから、上記の順で食べ進む。
先ずはキウイーフルーツをかけるの画。
ソースがどれも素晴らしくおいしい。しかも、ソースをかけるごとに無粋なブツ撮りを敢行したというのに、5種類全部味わい終えるまで、氷が全く溶けないんである。器は錫(すず)か? 見た時は「デカっ」と思った山盛り氷も、ソースの分量に対してちょうど良い。今夏ベストワンのかき氷。

予定では9月いっぱいだが、涼しくなってきたので、早めに終了するかもしれないとのこと。
たいへん美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

INTERSECT BY LEXUS
www.lexus-int.com/jp/intersect/tokyo/