銀座4丁目にて期間限定アートセミナー「THE MIRROR」始まる

「Hold the Mirror up to nature. いまアートの鏡が真実を映す」を掲げ、11月9日までの期間限定で始まったアートセミナー「THE MIRROR」特別内覧会へ。会場は銀座4丁目に戦前から建つ《名古屋商工会館》。

アーティスト(アイウエオ順、敬称略):
浅葉克己、アニッシュ・カプーア、内田繁、尾関幹人、枯山水サラウンディング、隈研吾、フロリアン・クラール、小松宏誠、さわひらき、神馬啓佑、タムラサトル、土屋公雄、堂本右美、トラフ建築設計事務所、中西夏之、流麻二果、名和晃平、ニコラ・ビュフ、西野達、畠山直哉、藤森照信、フランシス真悟、ベー・ビヨンウ、松岡正剛、宮田彩加、三好賢聖、森万里子、山上渡、李禹煥、ローランド・ハーゲンバーグ、渡辺元佳

入場は1日400名限定、完全前売りの予約入替制(13-17時または17-21時から選択)
会場での当日券販売は対応していない。当日は空きがある場合、Peatixまたはビームス各店舗にて当日券購入可能。また中央区民は会期中1回だけ火曜日に-100円で割引入場/当日受付で払い戻しあり(詳細は「THE MIRROR」公式サイト>チケット予約参照)


フライヤーによれば、同ビルは1930年(昭和5)竣工。現地の標識(建築計画のお知らせ)の施工業者覧は未定ながら、解体されることが決まっている。
取り壊し前の建物を使ったアートイベントといえば、南麻布のフランス大使館を建て替える前に行なわれた「No Man’s Land」(2009-2010)を思い出す。
ビル裏の抜け道(私道)からの《名古屋商工会館》の見上げ。非常口まわりがシブい。建物の中も、例えば郵便受けとかあちこち"昭和"が匂うので、こちらもお見逃しなく。

以降のテキストは、主に内覧会時に配布された資料(「THE MIRROR」総合ディレクター:清水敏男氏による作品解説)と、会場内の作品キャプションを元とする。
さて、初日17時のスタートから1F受付および内覧会場は大盛況。黄色で統一された受付まわりのデザインは、出展者のひとり内田繁氏が手掛けた。
なお、1Fでは特別展示「博物館明治村開村50周年記念『デザインの黎明』」も同時開催(こちらは入場無料)
ひとつめの作品:小松宏誠+三好賢聖「プワンツ・アクアリウム」と「プワンツ・バブルリング」(共に2014)が並んで置かれたエントランスロビーから、階段で階上の会場へ。ビルは6階建て=会場も6フロア。後ほど3階フロアマップを表示するが、ビルの形状はほぼ正方形で、中心部の昇降EV(原則として使用不可)を囲むようにして階段がコの字にまわっている。
いかめしいフロア表示の先、踊り場のコーナーに吊り下っているのは、枯山水サラウンディングによる作品の一部。此処とワンフロア上の階段で収集した音を再構築して、2階の展示室「201」の天井から据え付けたスピーカーから流している。
2階フロア。部屋番号が頭上にふられたドアの先が展示室。先ずは番号通りに201へ。
前述・音の作品が流れるこちらの一室は、アーティストトークやワークショップなど各種開催されるセミナーの会場を兼ねる。ぐるりと壁を囲む作品は、フランシス真吾「Bound for Eternalty(red)」(2008)。
かつての共有部分(水場)も通路として開放されていた。先を進むと、204:トラフ建築設計事務所デザイン、小池一子キュレーションによる「THE MIRROR COLLECTION box」のドアの前に出る。
こちらはミュージアムショップでもあるので、通番が振られた箱什器の中の"作品"は購入できる(上の画像は内覧会時のもの。この日既に売約済みあり)。No.10の中西夏之氏による未発表作品は、用意された踏み台に乗らないと見られない。
トラフのお二人(鈴野浩一+禿真哉)のショップブースは、同事務所デザインによる「コロロデスク」と「コロロスツール」が什器として使われていた。
202:内田繁氏による茶室。内田氏は前述・ミュージアムショップでガラス花器なども販売。

枯山水サラウンディングが設置した集音マイクを再び通り過ぎ、3階へ。
映像作品の展示室内は暗いので、ドアに貼られたサインは反転して白文字になっていた。

3階フロアマップ。一部の壁を除き、2階はほぼ同じレイアウトである。
上のマップで示すと、下がエントランスがあった道路側(東側)。階数が書かれている真ん中の四角い空間はEVシャフト。

302:藤森輝信+ローランド・ハーゲンバーグによる《鸛庵(Storkhouse)》の展示。 日本人建築家10名が参加し、現在は原広司設計「ハラハウス」が進行中の、オーストリア・ライディング村における「ライディング・プロジェクト」で建設された住まい。
会場で流れている、同作品の建設過程を撮影したドキュメンタリー(ハーゲンバーグ監督・編集、15分)によれば、同村の民家の煙突の先端で、毎夏渡ってくる鸛(コウノトリ)が巣を作り、ヒナを孵すらしい。巣立ちの後、大量に溜まったフンなどのゴミを地元の消防士が撤去してまわる光景は、当地ならではの冬の風物詩らしい。ビギナーズである藤森建築《鸛庵》にコウノトリが飛来する、まさかのシーンは必見。
303:名和晃平作品の展示室は、ドア、壁、柱、天井、梁も全て真っ白に塗装されている。上の画はその一部。
305:土屋公雄氏は、かつてこの部屋で行なわれたであろう会議を天井で"再現"。
同じく305の奥には小部屋があり、1室まるまるニコラ・ビュフ作品に(土足禁止)
4階は絵画作品が中心。
廊下に掛かっているのは畠山直哉作品。
4階フロアマップ。ドアが1カ所だけFIXされているが、ぐるりと回遊できるレイアウト。
403-404側の展示室。
フロア中央、床に据え置かれた金属の立体作品は、フライヤーやウェブサイトのメインビジュアルとして使われている、アニッシュ・カプーア「無題」。
宮田彩加氏による大きな作品はなんと刺繍。
そして単なる飾りでなければ、この部屋の暖房設備はかなりゴージャスだったと思われ。
道路側の外壁と躯躰壁に挟まれた細長い空間では、渡辺元佳「The Mine #402」(2014)のチンパンジーが天井を見上げている。

これら4階は「人間と自然の関わりをさまざまな作家の作品を通じて考えるフロア」という位置づけ。
5階まで来ました。フロアマップで隈研吾氏が出展した2カ所の位置を確認。
505:浅葉克己作品「TOKYO 屏風」と、続く小部屋が隈氏の展示。「ランケーブルの抜け殻によるモジャモジャ」=五色の雲がたなびく"瞑想の部屋"(協力:株式会社ナカダイ、辻宏商店)。靴を脱いで中にも入れる。
無線LANが主流となって以降、LANケーブルは廃棄物処理業者のナカダイに大量に持ち込まれるようになった。同社ではモノ:ファクトリーを立ち上げ、過去にはデザイナーズウィークに出展するなど、新たなリサイクル市場を開拓していることで知られる。
カラフルな"モジャモジャ"は、5階の廊下や、松岡正剛氏との「屋根裏ブックウェア」にも展開中。
ライブラリー「屋根裏ブックウェア」入口手前に貼られた"隈氏と松岡氏の会話"。
こちらの部屋は松岡氏の"屋根裏部屋"という位置づけ。氏がセレクトした約2,000冊もの書籍、赤字が入ったゲラ、氏の手によるドローイングなど、本にまつわる未公開資料が会場を埋め尽くす。
什器も隈氏がデザイン。所々に見られる斜めのつっかえ棒は、天井に張られたネットを支えるためのもの。天井は隈氏によるモジャモジャ="五色の雲"が彩る。店内のグリーン「シダシダ」=シダ盆栽は、塚田有一氏によるもの。

いよいよラスト。最上階の6階へ。
6階は西野達氏の作品展示のみ。
前述配布物の解説の結びとして清水氏が「結びの意味を考えながら帰途につくことになる」と書いていた、ジェニー・ホルツァー(Jenny Holzer, 1950年- )の格言とは、このプレートに書かれた"Use What is Dominant in a Culture to Change it Quickly"のことだろう。

THE MIRROR」の会期は11月9日まで。入場方法やイベント申込方法など、詳細は公式サイトを参照。
また他の日時の観覧チケットが手元にあり、別の日に開催されるセミナーに当日空席がある場合に限り、追加差額分(+500円ほか)を払えば聴講可能。

THE MIRROR | Hold the Mirror up to nature
http://the-mirror-ginza.com

公式Facebook
https://www.facebook.com/the.mirror.ginza

また、並びの「デミルクス ビームス 銀座」では会期中、ベー・ビヨンウ、山上渡の2氏が写真作品を出展。サテライト展示は銀座8丁目の《銀座グランドホテル》でも。






その《銀座グランドホテル》で開催初日の夜、盛大にオープニングパーティが開催された。
旧名称は「ホテルコムズ銀座」。内田繁氏/内田デザイン研究所がインテリアを一新、今年5月にリニューアル・オープンしている。
1Fロビー。
内田氏が手掛けた《THE GATE HOTEL 雷門》でも見られた照明「cloud」と、光と水が揺らめく「Dancing Water」のGINZA-G.Hバージョン。階段脇の緑色の立体は、サテライト展示の山上渡作品。赤いソファが置かれた向かいに、扉が黄色の昇降EVが2基あったが、奥の階段からパーティ会場「NORTHERN TERRACE DINER TOKYO」へ下りる。
挨拶する松岡正剛氏ら関係者。店内は移動もままならぬ大盛況(参考:内田事務所サイトの事例集にアップしている内装画像
+飲食のメモ。
白金台の名店「OZAWA」のシェフ監修によるお料理は、どれも素晴らしく美味しかった。肉なんかもうトロットロで。
ちなみに通常のディナーは、プリティクス形式で税・サ込5,600円と、銀座としてはかなりおトク。
名古屋商工会議所の本会場と、此処パーティ受付では、heso(ヘソ)がデザインしたシルバー箔入りユニフォームを着たスタッフが働いていたが、さらに前身ミラーの「ミラーマン」も登場。とってもおとなしいミラー犬(しずお)ともども、夜の銀座をキラキラと彩っておりました。ご苦労様。