「Any Tokyo 2014」@増上寺 光摂殿

プロダクト、ファッション、インテリア、建築、ロボティクスなど、暮らしにイノベーションを起こす様々なモノやコトをつくる人々とつながりあえるデザインイベント「Any Tokyo」。昨年、青山にて第1回が開催され、話題を集めた。
2回めとなる今回の会場はなんと増上寺の敷地内、光摂殿。

主催:エニートーキョー2014実行委員会
プロデュース:田中雅人

増上寺は浄土宗大本山、開山は1393年(明徳4年)、現在の地に移転したのは1598年(慶長3年)とその歴史は古く、6人の徳川家将軍と皇女和宮らが眠る境内は広い。
会場は増上寺の左側、道場として建てられた光摂殿の1F。「Any Tokyo 2014」シンボルカラーである蛍光グリーンが、日比谷通りに面した大黒門と会場の間にある広い駐車場からマーキングされている。その突き当たり、1Fの講堂が今回の会場である。
今年のテーマは「NEXT Field / 新たな場所」。出展作家は内外から招いた20組のデザイナーやインテリアブランド。
昨年よりひとまわり大きくなった会場の真ん中辺りから、駆け足で出展作品を見る。

Vitra & Artek
北欧を代表するインテリアブランド「アルテック」と、スイスの家具メーカー「ヴィトラ」による、国内では初となる合同展示(アルテックは昨年、ヴィトラの傘下になっている)
両ブランドを代表する家具:アアルトの「スツール60」や、ジャスパー・モリソンの「コルクファミリー」、ジャン・プルーヴェの「タブレソルベイ」を、チェスの駒に見たてて配置。

JIN KURAMOTO STUDIO/ Claesson Koivisto Rune
倉本仁氏が主宰するデザイン事務所:JIN KURAMOTO STUDIOと、スウェーデン・ストックホルムを拠点に活動するデザイン事務所:Claesson Koivisto Rune(クラーソン・コイヴィスト・ルーネ)による共同展示。
MATUSO T」は広島・府中の家具職人と共に、倉本氏が立ち上げた新しい家具ブランド。本展では、Claesson Koivisto Rune の3人がデザインしたペンタグラムのテーブルと椅子が新たに加わったコレクション「Five」を発表。
身を屈めて下から見ると、同地区が受け継いできたという舟大工の技と、現代のデザインとの融合で生まれたシリーズであることがわかる。

大手総合電機メーカーのインハウスデザイナーである松山祥樹氏による、澄みわたる空をイメージした「Sky Lighthouse.」。
純水で満たした円形のアクリル容器の中に、僅かにアクリルの微粒子を混入し、空が青く見えるレイリー散乱現象を再現した光のオブジェ。人工照明を太陽光がわりに、角度によっては中身がオレンジ色=暁・夕暮れ時のようなグラデーションに染まる。
画面右下に置かれているのは、2012年に商品化されたプロダクツ、アルミニウム製"ツボ押し"「collinette」。

髙橋良爾 田中章愛/VITRO による、世界最小のArduino互換機。
画面右端がArduinoの原型モデル。1つ挟んで置かれた指の爪先ほどのプロダクトが出展作品の「8pino」。サイズは8×25×0.8mm、重量2g。例えばウェアラブル分野など、組み合わせ次第で従来にないプロダクトや用途が可能に。

会場上方から吊られ、時計まわりにゆーっくりと回転していた大きな円形鏡、藤元明氏による作品「Physical Low (Negentropy)」。
地球の自転をイメージしたもので、1分間に1回転する。

その右後ろ、デザイナーの板坂諭氏が設立したh220430による「Bolloon Chair」。
1956年制作の仏映画「赤い風船」に着想を得たもの。実際に浮いている訳ではないが、今春にミラノ・サローネに出展した際は、コンクリート壁を背に取り付け、来場した子供たちが座れるようにし、大人気だったという。
h220430は昨年の「Unsual chair」に続く出展。どちらも日常や常識から浮遊させた作品だ。

ドイツのデザイナー、Sebastian Herkner氏の出展作品群。
左:銀メッキ加工された着色ガラスによる「Container for Pulpo」、右:「Oda for Pulpo」=光の貯蔵庫という意のランプ。球体は吹きガラス。

イスラエルの2人組によるデザインユニット:Ami Drach and Dov Ganchrow の展示。
先史時代の石器を現在に置き換えて考察するシリーズ「MAN MADE」。

Fashion Entertainments × TAKT PROJECT による腕時計「FES Watch」。
よく見ようと顔を近づけると、文字盤の表示がひとりでに変わった。電子書籍で使われている電子ペーパーを、文字盤とベルト全体に応用しているとのこと。

TAKT PROJECT はデザインオフィスnendo出身のデザイナー4人によるユニット。「FES Watch」の右隣にも作品を出展。
「3-PRING PRODUCT」は、既製品に3Dプリンターで制作したオリジナルパーツを組み合わせることで、新たな用途・デザインを加味する。

今年6月に開催された「interiorifestyle TOKYO 2014」の「TALENT」会場でも注目されていた、プロダクトデザイナーの村越淳氏も出展。
100点限定の製造という「bloom」は、富山の若手ガラス作家による手吹きガラスと、幾何学模様を描いてピンと張られた糸が織りなす美しい器。

その後ろ、吊られた「bloom」を透かして見えるステージ上の映像作品は。コンピューテイショナル・デザイナーの脇田玲氏による「Furnished Fluid」。

福嶋賢ニ氏の「Mirror table」は、天板表面に特殊な銅鏡塗装を施すことで、鏡面仕上げの銅板の下に木目が見えるという、不思議なテクスチャーを出現させたプロダクト。画面右奥のスツールに置かれたは照明「HOOP」。
上の画の左奥、ステージ上は、アムステルダムを拠点とするデザインスタジオ:DE INTUÏTIEFABRIEK の作品群。
DE INTUÏTIEFABRIEK(ディー・イントゥイティファブリック)は今回が日本初出展。

岐阜に本社を置くDAQが立ち上げたブランド・プロジェクトSQUAIRの展示ブース。並んでいるのは、デザインも着脱もシンプルな高級ガジェット。
左から順に、「The Slit」、「The Dimple」、「The Edge」。既に発売になっている商品で、税抜き価格はそれぞれ5万円、15万円、2万5,000円。収めるiPhoneより高い、とつい思ったが、航空機でも使われている超々ジュラルミン/A7075で、職人による削り出し、メードインジャパンにこだわったと聞けば何だか納得。ロッドが必要な金型製法では不可能なプロダクトを可能に。

会場入口付近に置かれた作品。高須学氏による「PROP WORK TABLE」。
黒い脚にガラスの天板、白い脚に木の天板。2つのフレームと貫となる2本の棒で支える構造はどちらも同じで、異なる素材を用いたテーブル。

こちらの展示台は、モノに触れてみて驚いた。思いもかけず、音楽を奏でるのだ。
スズキユウリ氏とMark McKEague氏によるデザイン/インベンション・スタジオ:Dentaku による作品「Ototo」。

台湾出身の2人組によるデザインスタジオ:POETIC LABの出展作品「Ripple」。
吹きガラス独特の微妙な凹凸を有する球体(ドーム)を通して、光と影が美しい模様を浮かび上がらせる。

会場入口から入ってすぐ右側に「Ripple」が、左側には何やら黒いハコが置かれている。こちらのブースのドアは、脇に描かれた掌サインに触れても開かない。ベンチャー企業の16Labが、ディレクターに田子學氏を迎えて開発した、指輪型ウェアラブル コンピューティングデバイス「OZONE」をキーにして初めて、未来への扉が開かれる。
このセキュリティ/Keyと合わせ、「OZONE」は4つの機能を持つ。使い手のジェスチャーに反応するコントローラー、端末への着信合図、決裁機能。例えば、子供を抱っこしていたり、両手に荷物を抱えている時でも、スムーズかつスマートに玄関を解錠できるし、会計の際にカバンの奥底から財布を探してまごつかずに済む。
指に嵌めて使用する為、使い手に合わせた完全予約制のオーダーメイドとなる。故に、安全面には細心の注意を払った(万が一にバッテリーから発火でもしたら一大事である)
今年の末から来年にかけて、先ずは開発者用のキットとして予約発売を開始する予定。詳細は16Labにて随時配信される。

会場に流れるサウンドは、Yosi Horikawa氏によるもの。昨年の「Any Tokyo 2013」で発表された、エマニュエル・ムホー氏によるインスタレーション「Emmanuelle Moureaux × Coca-Cola Heritage Glass」のオリジナル曲を制作したのに続いての参加。
職人技術×現代デザイン×最新コンピューティング×ワクワクな未来=「Any Tokyo 2014」。会期は11月3日まで。開場時間は11-20時、入場無料。

Any Tokyo 2014
http://anytokyo.com/2014/




+飲食のメモ。
増上寺境内には「おばんざい定食」や甘味を出す茶屋「芝緑(しえん)」があるが、閉店が16時と早い(火曜日定休)
黒門または大きな三解脱門を出て、日比谷通りを左へ進むと、《東京プリンスホテル》のエントランスの手前に、高級ブーランジェリー「Le Pain Quotidien」の芝公園店が在る。
上の画は、ランチ終了後の入店客オーダー例。持ち込み可の店頭購入品:クロワッサン(¥270)とひよこ豆のフォカッチャ(¥324)+オーガニックコーヒー(¥594)+2-3人分はあるポーチドエッグのサラダ単品(¥1,501)
このように、食欲に任せてオーダーすると一気にエンゲル係数がハネ上がる。セットメニューがある朝食かランチ(15時L.O.)に利用したい。複数人数で数種類あるタルティーヌのシェアもおススメ。合わせて10種類ほどあるジャムとスプレッドは付け放題だが、手元に引き寄せずに小皿に取り分けていただくのがマナー。
ごちそうさまでした。

Le Pain Quotidien(ル・パン・コティディアン)
www.lepainquotidien.jp

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