「都市型コンパクトライフのススメ展」@西新宿OZONE

西新宿のリビングデザインセンターOZONE 3FOZONEプラザにて、企画展「都市型コンパクトライフのススメ展」が17日より開催されている。"ふたり暮らしの50平m2 GOOD OVER 50's"をテーマに、現在40代の世代が、これから迎える50代をどのように暮らしていくか、ハードとライフスタイルなどの面から多角的に考察し、角分野の専門家と共に提案するもの。
設計提案:末光弘和+末光陽子SUEP.
インテリア提案:荒井詩万(インテリアコーディネーター)
主催:リビングデザインセンターOZONE、公益財団法人インテリア産業協会

本展はOZONE担当者が近年温めてきた企画。10年後の社会ーー周辺技術や社会環境、人と地域とのつながりなど設定した上で、えてしてマイナスに捉えがちなシニア世代の暮らしがより豊かなものになると、多角的かつ具体的に提案している。
3Fのイベントスペースをめいっぱい使い、50平米の住戸が1/1のリアルサイズで出現。設計を担当したのはSUEP.のお二人、末光弘和氏と陽子氏。昨秋プリズミックギャラリーでの展示「自然循環系の一部としての建築」において、閉鎖的な住宅・建築思想に疑問を呈し、外の社会に対してより開いた建築の未来を提唱していた。
本展の導入部では、展示パネルおよびS=1/500,100,50の模型で、今回の「地域に開かれたネットワーク住宅」のコンセプトーーある程度の広さを確保した土地に90戸の集合住宅を1棟建てるのではなく、地域の空いている土地に3棟×各30戸を分散して建てるプラン、それぞれのメリット/デメリット、分散させる1棟の各階フロアレイアウトなどを説明。
住戸プランA-Dのひとつを1/1で具現化したのが、今回のモデルハウスである。玄関はなく、四方にめぐらせたデッキから出入りするという設定。 
「大人世代のコンパクトライフに向けたライフ提案」
一人娘が独立し、夫婦で住むには広くなり、駅からも遠い住宅から、病院や商店街にも近い都心のマンションに住み替えた、50代のKさん夫妻の場合。
本展では、モデル夫妻の年齢、年収、貯蓄、今後の資産計画まで、ファイナンシャル・プランナーによる監修を踏まえているのが特徴のひとつ。"品川区の私鉄駅から徒歩5分、1Fの56平米/1lDKマンション"を購入後の返済プランも決してムリがない。
かつ、関連24社からの協賛を得て、荒井詩万氏がしつらえた室内は、単なるハコモノ提案に留まらない、潤いあるものに仕上がっている。テーマは「プレミアムミックス」。
ダイニングキッチン。
珈琲が趣味の夫妻は、1Fにあるこちらの1室を地域のカフェスペースとして開放する、という設定に基づき、ステンレスとオーク材によるカジュアルモダンなコーディネートに。
テーブルウェアは館内に入っているザ・コンランショップ新宿本店のもの。 ペンダントライト(ルイスポールセン製)は、初日のオープニングの際に関係者が「完璧です」と頷いていた、理想的な高さできちんと吊られている。
カフェ/ダイニングキッチン脇の階段は、夫妻のプライベートゾーンへと続く。靴は脱いで階段下に並べて置く。

カフェ運営中の出入りは、ガーデンに面した開口部より出入りできる。
ダイニングからまた雰囲気が変わり、ウォルナットの無垢床材に、クラシックとモダンをミックスした家具に、ファブリックで華やかさをプラスしたリビングルーム。
リビングから、カフェ/ダイニングの見下ろし。
フロアラインに変化をつけているので、下からはプライベート空間は見えない。
寝室(ベッドルーム)との境にあるのは輻射冷暖房設備(ピーエス製、本展の間取りにあわせた対応品)。部屋の空気だけを夏場は冷やし、冬は暖めるスグレモノ。
収納スペースは幅3メートルの壁面収納のみ。少ないようだが、シーズンオフの衣類などそのほかのものは、マンション内にあるシェアロッカーを利用する、という設定。
サニタリースペースは使いやすく寝室に直結。
乾燥機を収めた洗面カウンター、トイレ、背面にあるシャワールームを1列に配した、コンパクトなサニタリールーム。
使ったタオルを掛けられて暖房にもなる、ピーエスの電気ヒーターPSが壁に取り付けられている。冬場のヒートショックもこれで安心。
すぐ近くにある未来を先取りした本展。こちらのマンションでは燃料電池を使った建物のエネルギーを総括管理している。電気、ガス、水道、CO2の発生量のほか、"日なたぼっこ"のベストタイムまでわかる。それらのデータを住民が共有することで、環境への意識も高まる、という想定。そのほか、天気予報もリアルタイムで表示、住まい手の健康データも確認。これらのシステムは住宅設備総合メーカーを中心に開発が進んでおり、違和感がない。
展示ではシャワールームのみだが、マンション購入時にバスタブ付き仕様とどちらか選べるという設定。マンション内で共有の浴場設備、または夫妻が通うスポーツジムの大浴場を利用できることを想定している(後者の"設定"はとてもリアルだ)。本展は、住まいにフルスペックを必要としない、コンパクトな思想で貫かれている。車や動力エネルギーもシェアすればよい。
住戸を囲むレインガーデンの一部、シェアガーデン。各戸で出たゴミの一部を建物内で一括回収、コンポスト化してガーデンの肥料に。収穫した野菜やハーブは、K夫妻はカフェで提供する予定。"ひとつ屋根の下"に住む住民たちとのコミュニケーションの場としても有効。

これら全てが"絵空事"ではない。例えば、高層集合住宅が建ち、一気に新規人口が増えた東京臨海部の豊洲において、類似する試みが見られる。住戸を売った後もディベロッパーや管理会社が音頭をとり、住民同士のコミュニティの場となるよう、週末にマルシェを開催しているのが良い例だ。逆に昼間人口が少ない青山でも同様。従来の価値観では、専有面積の数字が物件のウリとなっていたが、そうではなく、個人の資産(専有部分)をカットしてでも、そこに新たな価値を見出す人々が今後は増えていくのではないか、というのが本展での提案である。
会場では、一般社団法人ケアリングデザインcaring designの活動ーー毎年行なわれているコンテストの応募作品も展示されているほか、デザイナーの小泉誠、米谷ひろし、コミュニティデザイナーの山崎亮氏ら、人々の暮らしに関わるプロフェッショナル13名による提言も、展示パネルのテキストで読むことができる。
都市型コンパクトライフのススメ展」の会期は11月11日まで(水曜休館)。オープンは10:30-19:00。
3日(月・祝)には、末光弘和氏や小泉誠氏、ソーシャルクリエイターなど各分野の有識者が登壇するシンポジウム「大人世代のコンパクトライフを考える」も開催される(有料、要申込)。詳細は下記サイト公式案内を参照。

リビングデザインセンターOZONE「都市型コンパクトライフのススメ展」
www.ozone.co.jp/event_seminar/event/detail/1736.html

セミナー情報
www.ozone.co.jp/event_seminar/seminar/seminar_c/detail/1744.html




+飲食のメモ。
会場・カフェ・ダイニングと向かい合わせにある「ザ・コンランショップ カフェ 新宿店」にて、ランチをいただく。
この日(会期初日の木曜)の入店は14:05頃、ドリンクがセットになる平日のランチメニューのうち数点が品切れ。「かぼちゃのキッシュ」をオーダー。
けっこうな大きさ、ボリューミー。食後にはセットのドリンク/ホットコーヒーをいただく。
おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

営業時間は10:30-19:00(18:30L.O.)、水曜休み。館内でイベントがある場合など貸し切りで利用できないこともある(例:上記シンポジウム開催日の11月3日は15時L.O.)

ザ・コンランショップ カフェ 新宿店
www.conran.co.jp/brand/stores?c=7