講演会「浮世絵コードで江戸を読む」 聴講

集英社主催トークイベント「歌川広重 東海道五十三次~江戸百景の巻」を聴講。
講師は牧野健太郎氏(NHKプロモーションプロデューサー)
本イベントは、集英社が運営するショッピングサイト「HAPPY PLUS ART」に牧野氏が昨年末より連載中のコラム「浮世絵コードで江戸を読む」と連動したもの。ボストン美術館所蔵のスポルディング・コレクションの浮世絵を通して、世界有数の大都市だった江戸の風俗や人々の暮らしを読み解く。最新は第47回 喜多川歌麿の「高名美人見立て忠臣蔵 十二枚つづき」。

スポルディング・コレクションについて:
ボストンの大富豪、ウィリアム・スチュアートとジョン・テイラー・スポルディング兄弟が、フランク・ロイド・ライトの協力を得て、明治末期から大正にかけて収集した、広重、歌麿、葛飾北斎らの浮世絵コレクションで、その数なんと約6,500枚。牧野氏いわく「このままの状態で後世に伝えたい」という寄贈者の希望を尊重して一般公開をしていない。一枚ずつ「たとう紙」に包まれた状態で厳重に保管されている(一枚見るのに20-30分かかる)。故に保存状態が良く、"幻の浮世絵"、"浮世絵の正倉院"などと呼ばれている(会場配布物および牧野氏談)。
参考:浅草「アミューズ ミュージアム」公式サイト〜浮世絵シアター
http://amusemuseum.com/ukiyoe/index.html


牧野氏は、ボストン美術館とNHK共同で2003年に始まった、同コレクションを含む2万点をアーカイブ化する「浮世絵デジタル化プロジェクト」の責任者を務めた。浮世絵はもちろん、江戸時代の文化全般に関する知識も相当なもので、歌川広重の「東海道五十三次 日本橋 朝の景」連載第1回、「名所江戸百景 水道橋駿河台」連載第17回、「名所江戸百景 猿若町よるの景」連載第39回、「名所江戸百景・浅草田圃 酉の町詣」連載第3回、歌麿の「難波屋おきたと仁王さま」連載第30回、「高名美人六家撰 難波屋おきた」連載第25回、「歌撰恋之部 物思恋」連載第4回、「高名美人見立て忠臣蔵 十二枚つづき」、そして北斎の「神奈川沖浪裏」連載第2回など数点を投影しながら聴く話はどれもこれも面白く、知らないことばかりで、約90分の講演はアッという間に終了した。

The Great Wave off Kanagawa
葛飾北斎「神奈川沖浪裏」 [Public domain], via Wikimedia Commons

Hiroshige le pont Nihonbashi à l'aube
歌川広重「東海道五十三次 日本橋 朝の景」[Public domain], via Wikimedia Commons
注.スライドで見たボストン所蔵の浮世絵はもっと発色が綺麗でした

デジタルアーカイブの良い点は、画面上で細部まで拡大できることにある。「東海道五十三次 日本橋 朝の景」で例えると、左側手前のぼてふり(棒手売)連中が担いだ木桶の中身=売り物の野菜や魚の種類まで判別できる。展覧会の展示ではこうはいかない
同様に、「名所江戸百景 水道橋駿河台」で画面いっぱいに描かれた吹き流しの鯉のぼり(江戸時代は1匹だけ)の向こうに広がる江戸の町並みに、鍾馗が描かれた幟や小旗などが見えることから、そこが番町の武家屋敷であることが判るという(牧野氏談)

たいへん勉強になった。書庫の重しになっている『大北斎展』(東武美術館 1993)の図録他を改めてじっくり読み返さねば。

+飲食のメモ。
今回のトークイベントは和菓子とお茶付き。
おお、これは会場のご近所さん、昭和23年からこの地で創業の大丸やき茶房の「大丸やき」ではありませんか。お懐かしゅう、お久しゅうございます。
「本屋街に行くなら箱(贈答用)で買ってきて!」と、我が食い道楽師匠☆さんのお使いで何度か行きましたっけ(柏水堂のシュークリームも)。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

大丸やき茶房
http://daimaru.jpn.ch/