「ジブリの立体建造物展」@ 江戸東京たてもの園 再訪

小金井市の江戸東京たてもの園にて好評開催中、会期が来春まで延長された「ジブリの立体建造物展(以下、ジブリ展)を再訪。

スタジオジブリ(以下、ジブリ)制作のアニメーション作品に登場する建造物にスポットを当てた異色の展覧会(左の画はフライヤーの裏面)。昨日より、資料数点(「ホーホケキョ となりの山田くん」(1997)、「On Your Mark」(1995)、「おもひでぽろぽろ」(1991)、「平成狸合戦ぽんぽこ」(1994)など)が展示に追加され、音声ガイドも新たに用意された(有料300円)

音声ガイドは「千と千尋の神隠し」(2001)で主役の声をあてた柊瑠美氏と、本展監修者とである藤森照信氏によるもの。エピローグアナウンスと、17作品に関する藤森氏の"たてもの講座"が収録されている。


音声ガイドを何度も聞きながら、2つに分かれた展示をじっくり腰を据えてみると、2時間ほどかかった。図録では判読できない資料の書き込みも、会場の展示で改めて確認できたりする。

「ジブリ展」の締めくくりは、1984年の二馬力作品「風の谷のナウシカ」の資料。会場を出た左側に、宮崎駿氏描き下ろしによる「養老さんと話して、ぼくが思ったこと」と題した原画22点が展示されている。これは、宮崎氏が監督時代、1997、98、2001年と計3回にわたって行なわれた養老孟司氏との対談に端を発したもので、2002年にジブリ事業部から発表された後、改めて新潮文庫から刊行された対談集『虫眼とアニ眼(2008)の巻頭に収録されている。

カラーイラストの内容を要約すると、現代の子供や親の意識、養育環境、この国の将来にも強い危機感を感じている宮崎氏が、養老氏が今でも持っている"虫眼"などの身体能力や感覚を取り戻すべく、氏が理想とする保育園の提示に始まり、"畏友"荒川修作氏のアイデアも反映された住宅「となりの住い」(下の画、P8-9見開き)、さらには自動車の乗り入れを極力排した町、住民同士のコミュニティ形成まで考えたタウン構想にまで拡がっている。
藤森氏が展示解説で効果があると指摘していた、保育園と高齢者デイケアサービス施設が同じ敷地内に建つホスピスは、2008年「崖の上のポニョ」の中にほぼそのままのかたちで登場する。また、「ジブリ展」図録の巻末に収録された藤森氏との対談の中に、ジブリのスタッフ向けに保育園をつくったとある。実際の建物に、これらのアイデアが反映されていると思われる。
原画の最終ページに記された日付は「02.5.31」。今から12年前に描かれた、宮崎版"コンパクトシティ"である。

「ジブリの立体建造物展」会期は2015年3月15日まで(休園日:12月28日-翌年1月1日、毎週月曜日/但し祝日は開園して翌日火曜が休み=2015年1月13日)。入場は基本有料だが、例えば来年1月2日と3日は「正月特別開園」として無料になることも。購入日当日に限り、チケット提示で入退場可。詳細は下記公式サイトを参照。

江戸東京たてもの園
http://tatemonoen.jp/



+飲食のメモ、その1。
快晴ながら日中の最髙気温が9度というこの日、昼食は後述《ラデンデ邸》カフェの未食メニュー「ピリ辛ジャーマンライス」と迷ったが、やっぱり今日はうどんだ!と心に定め、東ゾーンにあるたべもの処「蔵」を目指す。

こちらの店蔵型休憩棟は、1Fが無料の休憩所、2Fがうどん屋となっている。2Fの入口で食券を買うオーダーシステム。
 
一番安い食事メニュー「武蔵野うどん(温)」は消費税込みで630円ナリ。
かじかんだ指先から暖まり、五臓六腑に染みわたる甘めの出汁、美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

ほか、きつね・たぬき・月見・山菜など各種うどん、数量限定のかき揚げうどんのほか、日替わりの松花堂弁当やカレーライス(共に720円)、コーヒー・紅茶、アイスクリームや甘味、なんとおつまみ付きで日本酒・ビールまである。都の施設だからか、値段も安い。但し、蕎麦だけはナイ。

店内では地元・小金井市の大堀ファームがつくった、原材料が極めてシンプルな、無添加・無着色のジャム数種類(150g、¥500)とはちみつ(小サイズ120g、¥700)も販売。ジャムはペクチン不使用で、滅多にお目にかかれないので迷わず購入。
なお、こちらの店舗にはトトロがまっくろくろすけを連れて来店したようである。



先月22-24日に開催された夜間特別開園「紅葉とたてもののライトアップ」は観に来なかったが、日没時間が早いこの時期、閉園間際になると、たてものの軒先や室内の照明がいっそう映えて、また一興。
見学者が入れない上階も、昼間からちゃんと灯されているのが良い。下の画は、台東区池之端の不忍通に建っていた、1928年(昭和3年)竣工の小間物屋《村上精華堂》。
前回(11/15)見学時は、快晴かつ割引設定がある第3土曜日ということもあり、企画展および屋外展示共に混雑していたが、シルバーデーの第3水曜日であっても、やはり平日は空いている。「ジブリ展」会場でも、図録未収録の藤森解説のメモとりが気兼ねなく出来た。
見学者の出入りでわさわさしていた《前川國男邸》でも、傾き始めた陽が差し込む居間/サロンにて、まるで我が家の如く寛ぐ、という贅を味わう。
園内見学中、ボランティアさん談として小耳に挟んだ話によると、平日の午前中はお年寄りの来園が目立ち、午後は小学校など団体見学の時間帯に。急激に冷え込んでくる冬季の夕方は、園内は一気に人が少なくなるらしい。前回はジブリグッズ購入希望者が長蛇の列をつくって大混雑だった売店も、この日は隅から隅まで陳列商品を吟味することができた。



飲食のメモ、その2。
西ゾーンに建つ、前回は○分待ちだった《ラデンデ邸》に併設されたカフェも、この日の15時過ぎはゆったりと空いていた。
1910年(明治43)頃竣工の洋館の1Fは、雰囲気抜群の「武蔵野茶房」となっている。
玄関ホールから、旧食堂を利用したカフェの眺め。テラス席を除く屋内の席数数は約30。
前回は見学者や空席待ちの人々でいっぱいだった2間続きの旧居間も、この日はぶち抜きで貸し切り状態。
ラランデ邸ゆかりのメニュー、冬季限定「ホットカルピス」(消費税込み¥518)は、いったい何年振りで飲んだやら。ほっこりとあたたまる。
じんわり懐かしくも美味しゅうございました。ごちそうさまでした。