番組視聴:NHK「世界一服にお金をかける男たち」

NHK総合「地球イチバン」オンエア。「世界一服にお金をかける男たち」と題して、アフリカのコンゴ民主共和国で「サプール/Sapeurs」と呼ばれる人々を紹介。
下に張ったリンクイメージは、彼等を起用したGuinnessEurope による2014年のCM動画


ふだんはタクシー運転手や整備工、消防士などの職に就いている市井の人々が、休日になると、高級スーツに身をかため、土埃舞うストリートを闊歩する。特筆したいのは、彼等の素晴らしい生き様、人生観だ。

彼等はスーツの上下だけでなく、シャツ、ネクタイ、ポケットチーフ、帽子、ソックス、革靴、腕時計にいたるまで高級品で揃え、色と素材を選び抜いて全身をコーディネートする。番組で彼等にアンケートをとったところ、収入の約40%を衣装代に費やす(国民平均値では、1位はロシアの9%、2位はイタリア、日本は28位で3.45%/2012 OECD National Accounts 調べ)。国民の平均月収は2万5,000円、未だ貧しい経済状況にある同国において、例え首都の市民であっても、これは容易なふるまいではない筈だ。

Sapeur(サプール)とは、1960年まで宗主国だったフランス語で「Société des ambianceurs et des personnes élégantes」の略。「おシャレで優雅な紳士たち」なる意味。昨今の流行現象ではなく、かれこれ90年の歴史がある。
彼等には独特の所作があり、その歩き方やステップは人目を惹く。時に街角で立ち止まり、宙空を仰ぎ見てのポージングは奇異な姿に映らなくもないが、決して地域社会から"浮いた"存在ではない。昔からサプールをよく知る人々は、彼等を街の誇りとし、街を往く週末を楽しみに待つ。子供たちにとってはヒーローだ。映画館などの娯楽施設が未だない街中において、彼等は一級のエンターテナーでもある。8月15日の独立記念日には大統領の前でパレードも。隣国でプレイするプロサッカー選手や現役大臣もサプールである。

彼等には信条がある。それは非戦・非暴力、平和的な人間として生きること。ナイフや銃は決して持たず、衣装で競い合う。上品な装いが、心を美しく着飾り、堂々とした所作が人々に喜びを与え、世の中を平和にすると考えている。個人のライフスタイルを超過したアート、文化にまで昇華した「Sapeur」には、誰しもがなれる訳でなく、先輩サプールや地域社会から認められなければならない。以前は色恋沙汰で暴力をふるうこともあった青年が、師と仰ぐサプールの後見を得て「デビュー」した日、街を練り歩く姿に人々が喝采をおくる光景は感動的だ。

番組では、現在は月収3万円でサプール歴15年というシングルファーザーの32才の男性や、14才でデビューしたが内戦で一張羅全てを失った59才の男性も紹介(上記「GUINNESS」動画にも登場)。彼等は語る、「サプールは暗闇を照らす光である」と。
現地での取材は、お笑い芸人ダイノジの大地洋輔氏。とても好感がもてる案内人を務めた。
 

地球イチバン」同回の再放送は、12月11日(木)午前2:15~3:05。