「TANGE BY TANGE 1949-1959/丹下健三が見た丹下健三」@ギャラ間

乃木坂のTOTOギャラリー・間で始まった「TANGE BY TANGE 1949-1959/丹下健三が見た丹下健三」を見学。
「没後10年となる丹下建三の企画展」という漠然としたアタマで見に行ったので、会場に足を踏み入れた際、軽く衝撃を受けた。模型や図面などで構成される、いわゆる"建築展"とは趣を異にしていたので。

本展では、亡き丹下氏が1950年代に撮影した写真のコンタクトシート約70点が、台紙に貼られた状態で展示されている。場内を回遊するうちに、自作品《香川県庁舎 高層棟》を前にした丹下氏の姿を上下に配したポスターおよびフライヤーの意図も遅ればせながら理解できた。
デジタル全盛の今とは異なり、当時の撮影はモノクロの35mmフィルム、雑誌掲載などに使う写真の指定やトリミング指示は、"ベタ焼き"と呼ばれた出力見本(フィルムを印画紙に密着させて原寸で焼いたもの)に赤鉛筆などで書き込んで伝達された。会場には拡大鏡も用意され、丹下氏による丸印や朱入れの跡などが確認できる。

3F会場の展示の章立てと撮影された作品・処は下記の通り(カッコ内は竣工年)。
I 都市のコアと建築のコア|広島平和会館原爆記念陳列館(1952)
II 大空間への挑戦|広島子供の家(1953)、愛媛県民会館(1952)、図書印刷原町工場(1954)
III 伝統との対峙|桂(京都旅行)、住居/自邸(1953)


I「広島」には、終戦の4年後に工事が始まった現場、正面に原爆ドームを望む原爆死没者慰霊碑なども映っていた。周囲には高い建物もなく、荒涼としたもの。竣工時もかなりの存在感だったに違いない。本展を観る前に、NHKが昨年放送した特集「シリーズNIPPONの巨人 丹下健三 いにしえから天へ地平へ」を改めて視聴しておいたのが、本展を見る上でも役に立ったが、建設地の中州にかつて墓地があったとは知らなかった。
IIIは1960年に刊行された写真集『KATSURA』に繋がる旅行写真か。シートの隅には「1952.桂、清水寺 イサムさんと」との鉛筆書きが残る。
このほか、一部の写真のスライドショーの上映と、本展該当作品の設計・施工、撮影時期に、国内外の動き、建築界の動向、東京大学丹下研の諸活動を併記した1948-1957年の年表が壁に展示されている。

中庭には、大判のモノクロ写真展示。
左側の壁から時計まわりに、広島平和会館原爆記念陳列館(撮影:1955)、自邸(竣工:1953、撮影:1954)、桂離宮(撮影:1955)、倉吉市庁舎(竣工・撮影:1957)、香川県庁舎(竣工1958、撮影:1957)。撮影者クレジットは全て丹下健三氏。
床置きの航空写真、奥:東京都庁舎(竣工:1957、空撮:1956)、手前:自邸(空撮:1956)
この2作品は会場にコンタクトシートも展示されており、グリッドが特徴的な旧《東京都庁舎》では、斜めに捉えたアングルが目立つ。《自邸》はこの空撮のほか、1954年と55年にも地上から撮影したシートが残っている。
1950年代当時、ヘリコプターによる空撮は珍しいものだったという。この2点の航空写真展示は、階段を上がって4Fに続く回廊から見下ろした際、撮影当時の光景ーー丹下氏の視点を再現したもの。

4Fの展示も3Fと同様の構成。
IV RC表現の模索|倉吉市庁舎(1957)、墨会館(1957)、今治市庁舎・公会堂(1958)
V 外部との交流 グランドツアーと舞台美術
VI 50年代を統合する建築から60年代へのプロローグ|香川県庁舎
丹下氏の著作や寄稿文、旅行先から家族に宛てた絵葉書からワードを集めた映像「丹下健三の言葉」(約5分)の上映も。原研哉+中村晋平装丁による、252ページの豪華本『TANGE BY TANGE 1949-1959/丹下健三が見た丹下健三(TOTO出版、消費税込16,200円、2015)も閲覧できる。壁の年表は1955-60年を表示。

Vの展示台では、1951に開催された第8回CIAM出席、1957年のサンパウロ・ビエンナーレに立ち寄った前後に撮り・撮られた写真が並ぶ。丹下氏は劇団民藝の芝居「法隆寺(1958)の舞台"装置"まで手掛けていたとは知らなかった。
VI《香川県庁舎》はかつて低層棟(東館)と高層棟(旧本館、現東館)に分かれ、8階建ての本館は当時の"高層ビル"。前述・NHKの特集番組に拠れば、高松港を目指すフネからも見えたらしい。さぞかし目立ったであろう、全館の照明を灯した夜間の外観写真もあり(下の画、左側のシート)
会場受付に置いてあったフリー冊子「話題の本棚」特別号には、本展監修を務める岸和郎氏と豊川斎赫氏の対談が収録されている。それに拠ると、豊川氏が丹下研に関する論文をまとめたのが縁で、丹下氏の遺族の知遇を得、その際に台紙にして88枚のコンタクトシートの整理を頼まれたのだという。2013年に瀬戸内国際芸術祭の一環として開催された「丹下健三生誕100周年プロジェクト」関連展示で一部が披露されたが、シートの全容が明らかになるのは今回が初めてとのこと。
参考:WEB SITE「10+1」〜豊川氏寄稿文(2013.9 文中リンク先の「丹下健三生誕100周年PJ」公式サイトが正しく表示されず、アーカイブデータも見当たらないので注意)

TOTOギャラリー・間「TANGE BY TANGE 194901959|丹下健三が見た丹下健三」は3月28日まで(休館日:日月曜・祝日/3月22日を除く)。開館は11-18時、入場無料。
会期終盤の3月22日には、建築会館ホールにてシンポジウム「丹下健三没10年『今、何故、丹下なのか』を問う」が開催される(聴講は申込、抽選)。また本展会場でも2月21日と3月7日の14時からギャラリートークを開催予定(先着順・定員30名)

TOTOギャラリー・間
www.toto.co.jp/gallerma/
参考:TOTOニュースリリース(2014.11.25)

なお、一部の写真はギャラ間 本展公式ページ上にもスライドショーとして公開されている。

備考:当ビル・TOTO乃木坂ビル1Fセラトレーディング東京ショールームにて、「アルネ・ヤコブセンの世界 吉村行雄 写真展」も開催(会期延長、終了日未定)




+飲食のメモ。
近隣の飲食ログをリンクにて(会場から近い順に列記)
・ペルー料理「ナスカ
・カフェ「サロン・ド・テ ロンド」@国立新美術館2F
・カフェ「カフェ コキーユ」@国立新美術館1F
・アメリカンダイナー「Baker Bounce」@東京ミッドタウン(2015年12月閉店)
・イタリアン「KNOCK CUCINA BUONA ITALIANA 東京ミッドタウン店
・かき氷「KAKIGORI CAFE&BAR yelo」@芋洗い坂下ル
・モロコバー@六本木ヒルズ パンケーキ食事パンケーキ
・カフェ「IMA CONCEPT STORE」@AXISビル
・イタリアン「KNOCK CUCINA BUONA ITALIANA」@西麻布