河野有悟 建築展「きめ方がつくるかたち」@プリズミックギャラリー

南青山プリズミックギャラリーで開催中の企画展:河野有悟 建築展「きめ方がつくるかたち」を見学。
出展者は1969年生まれ、早川邦彦建築研究室勤務、武蔵野美術大学建築学科助手を経て、2002年に独立し、河野有悟建築計画室代表を務める。
※追記:本展は2月終了予定のところ、3月20日まで会期延長となった。

来場者を迎える大判写真。繋ぎ目なく1枚で出力が可能で、下地に左右されないテント生地に出力されている。手前から、2007年《東京松屋UNITY》、2010年《SKY FORTRESS》。
前者は12階建て。1-4Fに江戸からかみの東京松屋ショールーム・ショップ、中層階に空中庭園と5つの光風路を内包し、外部とも接続したビル。 後者は輪島功一氏をはじめ世界チャンピオンを輩出した名門・三迫ボクシングジムが施主で、2011年にグッドデザイン賞を受賞している(同ジム公式サイト〜galleryページで建物内外観の写真を公開中)
テーブルを使った展示。黒バックのものが竣工した作品で、白バックのものが進行中のプロジェクト。計10作品が交互に続く。
手前のテーブル上:右端から、「三橋の集合住宅」、《つくばの住宅》、「奥沢の集合住宅」、2013年《OUTER CASE》の作品概要。
奥:「三橋の集合住宅」の展示。縮尺1/100模型が載った台は、同作品の館内共有部・廊下と、各戸玄関の納まり:アルコーブ部分を表したもの。
一直線の廊下に各戸の玄関ドアを並べるのではなく、下の画のように45度ふって内側に引き込み、対面の廊下の壁も同じように外側に出っ張らせる。アルコーブを設けることにより、廊下を通行する住民同士が容易にすれ違えるスペースを確保した。
自転車を廊下から搬入して戸内にしまう動線も考慮されているこの外壁の形状は、白と黒のストライプを成し、換気口や開口部を収納し、外壁の汚れも目立たなくさせる効果もある。
場内・腰壁付きカウンターも、テント生地に出力した図版などで覆われている。
左から、2005年《“ロ”ハウス》、2008年《FLAP HOUSE》、2006年《BRACKET HOUSE #1》。
《CRANKS》の部分、縮尺1/2模型
同作品は駅前繁華街に近く、交通量も多い立地。それらの騒々しい賑わいから住まいとして静かな空間を守るため、また地盤の関係から、外側の壁だけをRC外部構造とし、内側はフレシキブルな木造インフィルとした。
上の画は、会場内の壁に掛けられた《CRANKS》の大判写真、室内からの眺め。外壁はリブ付きで、内外共に軽快なリズム感を生み出している。
手前:《奥沢の集合住宅》縮尺1/75模型。
進行中の作品「CON-FLEX」縮尺1/40模型。
進行中の「赤堤の住宅」縮尺1/40模型。
正面からの外観は上の画のように"1枚のファサード"に見えるが、

側面にまわると、下の画のように細かいセットバックが入っているとわかる。
前述《CON-FLEX》の模型を除き、これらのアクリル模型は本展のために新たに制作された。
手前:「赤堤の住宅」、左奥:「南雪谷の住宅」縮尺1/50模型。

河野氏に確認したところ、「展示台は、コンセプトモデルの一部として、模型と連続したデザインになっています。台の形状がそれぞれで異なるのはそのためです。「赤堤の住宅」など実際の作品では、2枚の壁をラーメン構造で繫ぎ、梁同士を数種類のスチールトラスで補強しています(これにより、耐力壁が不要に)。これと同じ考え方で台をデザインしました。展示台にも左右に2枚の"壁"を設け、間を梁やスラブで繋げた形状に。模型と台を比較して見ると、模型の外壁が下の台と連続していることがわかると思います」とのこと。
なお、本展のDMなどに使われているイメージビジュアルには、《CRANKS》の外観写真をバックに、様々な図形や線が散りばめられている。本展を見終わって、それらの図形は出展作品それぞれの特徴を象徴したものと知るに至る。
「きめ方がつくるかたち」河野有悟 建築展は会期延長し、3月20日まで開催。開廊は10-18時、日曜休廊。入場無料。

プリズミックギャラリー(PRISMIC GALLERY)
http://www.prismic.co.jp/gallery/works/?p=27




+飲食のメモ。
プリズミックギャラリーを見学する前後は、徒歩5-6分ほどのところにある"微熱山丘"こと《SunnyHills(サニーヒルズ)》に立ち寄るのがお決まりのコースとなりつつある。
設計は隈研吾建築都市設計事務所、2013年8月竣工。
日が暮れてから店を訪れるのは初めて。2Fのカフェスペースを含め、19時まで営業している。
千鳥格子から陽が差し込む日中とは、外観・内観共に表情がガラリと変わる(参考:昼間の様子)
下の画:1Fと2Fを結ぶ階段踊り場から、階下見下ろし。
上の画:洗面室のある3Fと、2Fカフェスペースを結ぶ階段踊り場から、階下の見下ろし。
呈されるお茶も、国内ではここでしか味わず、時おり禁断症状が出てしまうパイナップルクッキーも、たいへん美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

SunnyHills(サニーヒルズ)
www.sunnyhills.co.jp/