OZONE開館20th記念シンポジウム「住宅と暮らしの20年」最終回

西新宿のリビングデザインセンターOZONEにて、同館の20周年を記念して、1月末から3回連続で開催されたシンポジウムの最終回を聴講。
登壇者がそれぞれの仕事を簡単に説明した後、全体討議に移るという、前回と同じ進行スタイル。
上の画・左から、ファシリテーターの川島蓉子氏(ifs未来研究所 所長)、林信行氏(ITジャーナリスト/コンサルタント 公式Twitter)、佐野研二郎氏(MR_DESIGN 代表)、横川正紀氏(株式会社ウェルカム代表)。

第1回のテーマが「これからの住まいに本当に必要な機能と技術を考える」、続いて「住まいのかたちにプロは要るのか?~住宅の価値をあらためて考える~」、最終回は「暮らしと仕事とデザインのかかわり」。この20年で2度の震災をはじめとするさまざまな事象、技術革新があったことを改めて実感したそれぞれの回。
参考:第1回ファシリテーターを務めた三浦祐成氏へのインタビュー
www.ozone.co.jp/information/archives/2015/02/20_o-cubespecial_interview_dig_3.html


第2回の討議では、「一昔前と違って今の人々(消費者ではなくユーザー)は、物欲を満たすのが目的ではなく、買うことで得られる"体験"を重視している」との指摘があり、「建築や住まいと人々との中間領域において、自分で作れることを含めて選択肢を豊かにしていくことが今後は大事ではないか」という意見や、ビッグデータの利用にしても、「それら曖昧な中間領域の介在者として"プロフェッショナル"が果たすべき役割がある」という可能性が見出されていた(3Dプリンターやファブラボについては、登壇者の総意として敢えて意識的に取り上げなかった、という終了後の倉方俊輔氏の言葉が印象的)
第3回の登壇者は、"体験"を生み出させることに長けたプロ揃い。シンポジウム後半は「ブランディングに必要なものは何か」について意見が交わされる。以下は各氏発言のメモ。

「どの商品にも開発ストーリーなどのバックグラウンドがあり、ブランディングの確立に不可欠な要素でありながら、往々にして伝え方が下手である」(川島氏)
「僕の仕事は街に敢えてノイズをつくったり、新しい商品に仮想人格を与えながら、ブレない"らしさ"をつくってあげること。世の中にあるものをいかにリノベーションしていくかに近い」「これを買えば、自分にとって良い未来、ステキな未来になるんじゃないかと予想できる感じを、うまく見せている(TSUYATAや、CIBONEのような横川氏プロデュースの)店で、ついつい買い物をしてしまう」(佐野氏)
「買うチャンネルはウェブに移行しているが、ブランディングの強化には、リアル店舗の存在が不可欠。一方通行に終わらずに自社のものづくりにフィードバックができて、かつブランドの世界観をしっかりと表現する店舗を真剣につくることが成功のカギ。例えば、Apple storeのような」 「最近、ハマっているのがPinterest(ピンタレス)の画像ブクマ機能。言葉にしにくいイメージを、試行錯誤しながら整理することによって、自分の好みもわかってくる」(林氏)
「空間や建築は、人と時間の器たるべき。飲食店の主役はあくまで食。僕の店は、食へのリスペクトありきの食のミュージアム。食材が生きてこそ」「店はコミュニケーションの場。店やブランドごとに人格を設定してあげて、どんなストーリーを人々に伝えたいか、という点では佐野氏とやっていることは同じ」(横川氏)


"リアリティ"の重要性については、上記参考リンク先のインタビューで三浦氏も言及している。また、JAGDA主催第17回亀倉雄策賞を受賞した佐野氏も、銀座8丁目のクリエイションギャラリーG8で4月2日まで開催の受賞記念展「黒に白 MR_BLACK & WHITE」において、来場者が「探す」「体験する」ような会場構成にしているとのこと。

そして、今回の聴講で、青山のCIBONEや国新美のSFT、西麻布「HOUSE」や「TODAY'S SPECIAL」などを立ち上げ、ディーンアンドデルーカジャパンの代表でもある横川氏が、美大の建築学科の出身だったと、初めて知るに至る。

リビングデザインセンターOZONE
www.ozone.co.jp/




+飲食のメモ。
シンポジウム終了後の懇親会。3回とも、同館3階にある[ザ コンランショップ カフェ]のシェフによる、パーティ用のスペシャルメニュー。
この、黒ごまペーストのブレッド ↑ できることなら常に販売して欲しい。
たいへん美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

ザ コンランショップ カフェ
www.ozone.co.jp/showroom_shop/conranshop/index.html