一夜限りの 「六本木アートナイト2015」

六本木アートナイト2015」が開幕。2009年に始まったアートイベントで、今年で開催6回めを数える(2011年は東日本大震災により中止)

3年連続でアーティスティックディレクターを務めるのは日比野克彦氏、今年新設されたメディアアートディレクターは齋藤精一氏ライゾマティクス代表取締役)。『ハルはアケボノ ひかルつながルさんかすル』をテーマに、六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、国立新美術館など六本木の各所で、一夜限りのアート作品やパフォーマンスを観ることができる。


左の画は、六本木交差点「アマンド」のガラス壁に掲示されていたデジタルポスター。これら宣伝美術のデザインはファンタジスタ歌磨呂/KOTOBUKISUN が担当。 


ファンタジスタ歌磨呂による作品は、六本木ヒルズ アリーナにも展示されていた。漫画『特攻の拓』に登場するバイクをリスペクト+オマージュしたもので、作家の代表作である「mangacamo」とフュージョンさせた新作「The Legends of pop culture install series / 01」。

約80もの参加プログラムのうち、早いものは4月25日の10時から見られるが、コアタイムは日没から日の出までの時間帯。関係者が出席する「コアタイムキックセレモニー」が六本木ヒルズ アリーナで18時に始まり、そのまま、ライゾマティクス/Rhizomatiksによるメインプログラム「アートトラックプロジェクト ハル号 アケボノ号」へ。巨大なミラーボール3つを搭載した「アケボノ号」をメインステージに、HIFANA/DJ吉沢Dynaminte.jp による光と音のライブパフォーマンスで会場は一気にヒートアップ。
アートトラック2車両および光のジャングルジムの技術協力はカラーキネティクス・ジャパン
上の画の右端、音楽にあわせてLEDが点灯するジャングルジムに組み込まれた(上の画では緑色に光っている)コーンは、街なかインスタレーションのひとつ、おかだゆか&川名宏和による《KAWAT Tower》。今回から始まった参加プログラムを公募する「オープン・コール・プロジェクト」で選ばれた作品。
アリーナ/A21では、みんなの心にあかりを灯す配送集団「ひかりうんそう」による、ストローとゼムクリップを使ったワークショップ:街なかミーティング「ストローでつくろう! コテトラ(Cotetra)ワークショップ」も、翌26日午後から開催された模様。
コテトラ(Cotetra)の「コ(Co)」はコミュニケーション、コラボレーションの「コ」の意とのこと。
teamLab(チームラボ)による「Crystal Fireworks of Wishes / 願いのクリスタル花火」。毛利公園の池に据えられた光のクリスタル作品に、スマホを使ってメッセージを送ると、画面上で選んだ好きな花火と共に願いが打ち上げられる。
池の淵はスマホを向ける来場者で鈴なり状態(なかなか下の動画のような情緒ある間合いはとれず)。その様子を芝の上から遠巻きに眺める人々でも会場はいっぱい。
TEAMLABNET 公開動画(再生時間:1分09秒)

街なかインスタレーションのひとつ、「リライトプロジェクト」キックオフ!! @六本木ヒルズけやき坂。「六本木ヒルズ」がオープンした2003年当初からある、宮島達男によるパブリックアート《Counter Void(カウンター・ヴォイド)》は、2011年の震災発生後に作家自らの手で点灯を中止、現在に至る。3.11の記憶の風化をとどめ、社会に問いかけ続ける装置として再点灯させることを目指す「光の蘇生」プロジェクトである。会場では「3.11を〜ている。」と黒い四角で伏せられた箇所に入れる文言を、PJボランティアが道往く人々にその場で考えてもらい、収集していた。
同時開催プログラムのひとつ、横浜美術館で先月28日より企画展「BILLOWING LIGHT:ISHIDA TAKASHI」を開催中の石田尚志によるドローイング・アニメーション。「絵巻」シリーズからの出展《色の波の絵巻》。立体駐車場の壁面をスクリーンとした映像作品。

通りを歩いていると、少なからずの人だかりと共にどこぞにカメラを向ける姿を見かける。それらを頼りに適当にブラつくもよし、パンフレットのマップを開くもよし、 google map付きの公式サイトを使うもよし。
Tim van Cromvoirt《Lungplant》@六本木ロアビル。呼吸するかのように収縮し、白い光が点滅する作品。その様子は作品名で検索すると動画がヒットするので参照を。
通りがかった時間帯、統一地方選挙の投票を控え、ロアビル前に陣取った立候補者が自身の名前の連呼に忙しく、そんな喧噪と無関係に収縮、静かに明滅する海外アーティストによる作品とのギャップが何とも妙で、アートを蹂躙する空間のようでもあった。
アクシスギャラリーで開催中、8回めを数える写真企画展「ゼラチンシルバーセッション2015 / The 8th Gelatin Silver Session 2015 – Save The FilmGSS」は、「六本木アートナイト」の期間中に限り、会場内に「Photo bar」を開く。5月9日までの同展会期中は入場料300円のところ、bar開店時はアルコールを含む1ドリンク付きで500円。出展した写真家も多数来場中。

同じくAXISビルの4Fにある「IMA CONCEPT STORE」では、六本木アートナイト関連企画として、一夜限りの"食べれる"フードインスタレーション「Taste of Photography」も開催
(註.""で囲った記載はフライヤー原文ママ)
前売り、または当日入場料2,400円を受付で支払えば、フードアーティストの諏訪綾子が設えたテーブルの上のフードインスタレーションを1ドリンク付きで味わえる。
ペルシャ絨毯専門店「六本木PARS」のウィンドーを使った街なかインスタレーション展示のひとつ、山岡潤一《Morphing Cube》。同作品は昨秋の「TDW2014」のヤングクリエイター会場にも出展されていた。
前述作品《KAWAT Tower》はエリアの数カ所に展示されている。上の画は、東京ミッドタウンと国立新美術館を結ぶ星条旗通りにて。タイミング次第ではスイッチ総研による街なかパフォーマンス《六本木アートナイトスイッチ》も見ることができる(上の画、右端の人物が演者)
東恩納裕一《キャンディ》。銀色の包み紙の"アメちゃん"がゆっくりと回転を続ける作品。ガイドでは、会場は政策研究大学院大学と記されていたが、国立新美術館の正門付近から眺められる。
Tim van Cromvoirt + Marleen Maathuis による《Bloom》。開いたり閉じたりする機械彫刻作品@国立新美術館敷地内、正門から西口に出るスロープの途中にて。
菅野 創+やんツー《SENSELESS DRAWING BOT》@東京ミッドタウン キャノピー・スクエア。独自に改造された電子スケートボードが、25日の日没18:22から翌日の日の出時間4:56まで絵を描き続ける。
ライゾマティクス/Rhizomatiksによるメインプログラム「アートトラックプロジェクト ハル号 アケボノ号」のうち、「ハル号」は東京ミッドタウン キャノピー・スクエアに常駐する。トレーラーの左片側にびっしり並んだ提灯アレイディスプレイには、特設サイトから参加者が投稿したメッセージが右から左に次々と流される。参加型イベントにつき、会場に掲示されたコードの入力が必要となる。
「ハル号」の右サイドでは、MAHARO(GROUNDRIDDIM)とMON(DOPPEL/#BCTION)によるライブペインティングも。予定では翌日17時まで。

下の画は、ミッドタウン・ガーデンの芝生の上に「六本木アートナイト2015」のロゴを浮かび上がらせる《ギネス世界記録®に挑戦! ~ LEDライトでひかルつながルさんかすル~》会場の俯瞰。
このほか、エリア内にある21_21 DESIGN SIGHTサントリー美術館やギャラリーでは開館時間を延長したり、スペシャルトーク「都市×アート×テクノロジー:東京の未来を考える」や、「六本木ダークナイト」、「六本木夜楽会」など、多彩な登壇者による関連トークイベントが夜通し開催される。WEB Magazine「六本木未来会議」はクリエイターインタビュー50回記念(註.最新No.53はファンタジスタ彦摩呂氏、No.50はライゾマティクス代表/齋藤精一氏、No.45は宮島達男氏)として制作した「六本木未来カルタ」による「かるた大会」も開催、ミッドタウン・ガレリア内の会場で限定配布も行なった。
盛りだくさんのこの日のために体力を蓄え、各所をハシゴして1晩どっぷりアートに浸るのも悪くない。会場・六本木と、渋谷、新宿、品川、吉祥寺、立川など各所を結ぶ無料シャトルバスも運行される。

「六本木アートナイト2015」
会期:2015年4月25日(土)10:00〜26日(土)18:00、コアタイム:18:22-4:56(但し、参加時間は各会場で異なる)
www.roppongiartnight.com/2015/





+飲食のメモ。
六本木アートナイト」には、六本木ヒルズ内に(辿り着けなかったが)コンセプトカフェ「ハルはアケボノカフェ」が特設され、アリーナにも飲食専門車両が数台出ているが、エリア内にあるショップや飲食店も多数参加していた。会期中に限り、会計時にガイドブックを提示すると、来店特典を受けられる店も。

左の画は、東京ミッドタウン「浅野屋」にて。通常21時までのところ翌朝5時まで営業時間延長。コーヒーとドーナッツのオーダーにラスクが付いた♪

疲労した脳と五臓六腑に染み渡る程よい糖分、温かいコーヒー、美味しゅうございました。ごちそうさまでした。