「Project1000」オープンハウス「多世代で暮らすバリアフリーの家」

Project1000」によって建てられた住宅のオープンハウスを過日に見学。設計はアトリエ・天工人(代表 山下保博氏)、構造は本岡構造設計事務所、施工は小川共立建設。
山下氏が代表を務める「Project1000」は、複数の建築家と施工会社がチームを組み、満足度の高い住宅を提供しようとするプラットフォーム。"工事費1000万円台からできる家づくり"を掲げているが、今回は住宅の規模が大きく、施主のさまざまな要望を叶えたことにより、これには該当しない。

敷地面積は126.95平米(38.4坪)で、道路からやや下った先の低地に位置する。施主の希望でスロープを設けた玄関がある側が北側(上の画)。道と敷地との高低差を解消するため、また後述の理由などから、敷地全体の高さを上げている。RC造の地下1階と、木造2階建てによる混構造。延床面積は119.40平米(36.11坪)
上の画:敷地内に入り、"コの字"になっている中庭からの見上げ。外壁はリシン吹き付け。

「この住宅には多世代の家族が住みます。一日の大半を家の中で過ごす方が多いため、それぞれの領域を分け、プライベートを確保しつつも、緩やかに繋がるように中庭を介した"コの字"の建物形状にしました。」ーー内覧会案内状より。
高齢者を含めた複数の世帯が住まうこちらの住宅。玄関先は庇を付けない代わりに、建物の中に引き込んで雨風除けとした。ドアは杉の引き戸。ゆったりと広い玄関まわり、ホールの床にはタイルを張り、入って左側の和室、右側の廊下との境も段差を殆どなくしている。
和室の見上げ。壁は漆喰仕上げ。
和室側から、玄関ホールの眺め。階段の斜め向かいには、地階と1・2階を結ぶエレベーターを設置。
玄関ホールの窓から、中庭の眺め。
EV前から、長い手摺りが付いた廊下の突き当たりは。ミニキッチンが付いた家事スペース。その左側に居室がある。画面右側は水まわり空間。
IHヒーターのミニキッチンと、作業しやすいL字カウンターを取り付けた家事スペース。
1階トイレルーム。
1階バスルーム。浴槽のまたぎこみ高さが抑えられ、ベンチも付いたバリアフリー仕様。
バスルームから、洗面・脱衣室の眺め。
1階 畳敷きの客間。畳表は藺草ではなく、機械すきの和紙をつかったものダイケン畳
障子とサッシを開ければ、陽あたりの良いウッドデッキのテラスに出られる。
テラス側からの見返り。ウォークインクローゼット(左)、廊下との出入口(右)の引き戸を閉め切った状態。
畳と同様、すっきりとした建具。両側から和紙を貼った特注仕様。壁は珪藻土クロス仕上げ。

階段を降り、地下へ。エレベーターも直通している。
書斎として使われる予定の居室。奥のデスクとテレビ台用のローデスクには予め配線用の角孔を用意。
奥は5.9畳の和室。ガラス扉の中は階段下スペースで、喫煙ルームとして活用。
1階の客間以外の壁は、珪藻土クロス貼り。
地下の居室と1階を結ぶ階段、下からの見上げ。
上の画、壁に設けた横長の溝は、飾り棚としても使えるが、主な用途は手摺代わり。インテリアバーを設けずに、中庭テラスの出入口と階段まわりとのスペースをスッキリと確保した。
1階から2階へ。こちらの階段は蹴込み板無し。地下の階段に光を落とし、見通しも良い。
また、既出の写真でもわかるように、あちらこちらに手摺が設けられているが、取り外しもできるようになっている。逆に、後から追加できるよう、予め壁の中に下地が用意されている。
2階LDK(35.13平米)。日中は南を向いて開けられた天窓と窓から陽が差し込む。曇天のこの日は、伊東豊雄デザインのペンダント照明「MAYUHANA」が、板張りの天井をバックに美しく映えていた。
奥にパントリーもあるキッチン側から、リビングの眺め。台所仕事で立ち回る背面の壁に、奥行きは小さいながらも使い勝手の良さそうな棚を造作。
大きな造作テーブルと連続した、カウンターの広いキッチンも造作北沢産業。これから使う予定のまな板に合わせた小さな段差や、洗剤などを収納できるボックスを予め用意できるのがオーダーメードの良いところ。
1階の廊下、2階リビングともに、フローリングはホワイトオーク。スノコ部分は床暖房の吹き出し口。
2階トイレルーム。
2階 北東側の居室。引き戸3枚で仕切る大きめな収納スペースがある。
中庭=南側に面した窓は、サッシ+障子+木パネル。季節や天気によって開け閉めし、採光を調整。障子は桟と格子の両側から和紙を貼ったもの。既出の障子も同様で、純和風にならないように、という施主の希望にそったデザイン。
中庭を挟んで向かい側・南東側にももう1室あり(画面左奥)。その手前の壁、各種スイッチの納まりに注目。ほんの数センチのデザイン処理で、パネルが壁から出っ張らずにスッキリとみえる。
1階玄関脇の"窪み"も同様。咄嗟の時に手を置いて身体を支えられるし、インテリアスペースにもなる。
家のあちらこちらに細かな配慮が行き届いた、住まい手への優しさに溢れた住まいでした。

「Project1000」
www.project1000.co.jp/

アトリエ・天工人
www.tekuto.com/