アートイベント「House de Art」@立川 旧"米軍ハウス"

東京・立川市高松町の"X-AREA"で開催されたアートイベント「House de Art」を見に行く。
通称"X-AREA(エックスエリア)"には、第二次世界大戦後、旧日本陸軍の航空施設が米軍に接収されていた時代、立川基地周辺に建てられた米軍関係者専用住宅(いわゆる「米軍ハウス」)が10軒ほど残っている。昔も今も住民は芸術従事者が多く、年に1度、GWのこの時期に、作品などを庭先に展示するアートイベントを2009年から開催している。今年で7回めを数える。

最寄り駅は多摩モノレール「高松駅」。黒い柵越しに"立飛企業株式会社発祥之地"なる石碑と、インパクト大なシルエットの白い塔(下の画)が建っている敷地を横目に、モノレールの高架下を北へ進み、1本めを右折、のどかな住宅街の先へと進む。
なにやら年代を感じさせる門柱より先は私道につき、イベント開催時以外はノコノコと入れない(撮影した住まい内部のブログ掲載については居住者の許諾を得ている)
10軒のうち7軒はアトリエや貸しギャラリー、リフォーム会社など。
道には造形作品やが並び、庭先のテント下には住民らによる飲食の屋台も出て、カレーやパン、ドリンク類も良心的価格で販売されている。
40年ほど前から住んでいるという銅板造形作家の赤川政由さんは、立川駅周辺に複数点在するパブリックアートの作り手の一人。
開催は5月9、10日の土曜日曜/11-17時頃(雨天でも決行)。例年けっこうな集客だそうだが、今日はヨソでもイベントがあるのかちょっと少ないね、との住民の談。
9日付の「朝日新聞」東京欄によれば、"X-AREA"は1957年頃の建設。若手の芸術家らが住み始めたのは、ベトナム戦争(1960-75)後、1977年に米空軍立川基地司令部が閉鎖された前後のタイミングと思われる(参考:陸上自衛隊立川駐屯地公式サイト〜駐屯地の歴史
玄関とテラス前に緑の庭があり、平屋建ての家の外観に大差ないが、屋根が瓦(セメント瓦と思われ)だったり平板葺きだったり、ガレージの軒や柱が木造だったり鉄骨だったりとまちまち。各所に修繕の変遷が垣間見えた。
「House de Art」案内チラシの問合せ先「アトリエその子」を主宰する、造形作家のさとうそのこさんの玄関先。内部も見せていただけた。
お邪魔した時、よく似た住まいに足を踏み入れたことがあるようなデ・ジャブを覚える。もしかすると、都営住宅に住んでいた小学校の恩師宅かもしれぬ。但し、間取りは全く異なるが。
テラスの隅に部屋番号のペイントが薄らと読み取れる。表記の位置や表札掲示はそれぞれ。
こちらのIさん宅も自宅を開放。ガレージを子ども向けのワークショップに貸し出すだけでなく、来場者のためにトイレを提供。このトイレ・バスルームがシブかった(お願いして撮らせていただく)
露光ミスして形状わからんが、逆さにした桃にギザギザが入ったような照明。壁には薄いピンク色のタイルが水撥ねする腰までの高さやシャワーヘッド付近に貼られている。
白とブルーのモザイクタイル。部屋との境のドア下・立ち上がりは異なるタイルの仕上げ。
洗面台上の照明。鏡の嵌った収納棚の扉は木枠で、壁に埋め込まれていた。この後、ご厚意で年季の入ったキッチンも見せていただいたが、コーナーの収納棚も同様の木製で、周りの壁がやはりモザイクタイル仕上げだった。
洗面器に入っていた焼き印。舶来物かと思って目を近づけると、"INA SEITO CO.,LTD"とハッキリ読み取れた。旧INAX、その前は伊奈製陶と称した衛生陶器メーカーの製品である。
まるで"世界の平和組織的ショッカー"みたいなロゴについて、その筋の関係者に後日確認したところ、1924年から(戦時中のカナ表記を挟んで)1969年に旧「ina」ロゴとなる前に流通していたブランドマークであった。下の「IS」は1985年にCIでブランド統合するまで社章として使われていたとのこと。
室内より、庭先と通りの眺め。
壁や床の仕様は、代々の住民が塗り直したりしているので、今となっては竣工当時の仕様のほどは不明。だが、白いフェンスに囲われた専有庭はいかにも「米国仕様」。1軒家としてはかなりこじんまりに感じたが、天井は若干高い。
家と家の間に広いガレージがあるというのも、いかにもアメリカン。
キッチン裏のダイレクトな給水配管。ドア下を通すとは。
上の画は2軒先のガレージ。室内をリノベーションしてギャラリーとして使用している「RISE」のもの(外観・下の画)
こちらはX-AREAのはす向かいにあるマツナガ建設(株)が手掛けたもので、昨年8月から「TACHIKAWA House Gallery RISE」としてオープンしている。
同ギャラリー、玄関からアプローチの見返り。元から庭にあった石を移動してつくった。内部もかなり手を入れている。
壁ぶち抜きの1室空間。画面右側にオープンキッチンがあるが、居住はしていないので、下の画のトイレバスルームはあくまでインテリアコーディネート例として。
便器は最新のタンクレス。
マツナガ建設は家相にも詳しいそうで、風水や氣学に基づいたリノベーションを行なったとのこと。ガレージ側の壁3カ所に角孔をとり、色ガラスを嵌めたのも同様。
「House de Art」はX-AREAに住む住民たちの有志開催であり、公式サイトはない。それでも、7年連続開催とは頭が下がる。「米軍ハウス」の軒先が並んだ外観は、住民同士の強い連帯感の連なりにも見えた。




+屋台の飲食メモ。
国立から出店していたパン教室の手作り「チーズバゲット」と、その隣で微糖アイスコーヒー(¥200)を購入。斜め向かいでフランクフルト(¥100円)をはさんで、パラソルの下をお借りしていただいた本日のブランチ。
おいしゅうございました。ごちそうさまでした。