「ミナカケル」@スパイラル

南青山のスパイラルガーデンにて開催中のミナ ペルホネン展覧会「ミナカケル」へ。5月20日から始まっている展覧会もいよいよ6月7日まで。
平日の夕方でも来場者多数。青山通りに面したエスプラナードのガラス面にもミナ ペルホネン(minä perhonen)のテキスタイルがみられる。

デザイナーの皆川 明氏がファッションブランド「ミナ」を立ち上げたのは1995年。「ミナ ペルホネン」に改称した2003年を経て、この20年間に発表されたテキスタイル、服、家具メーカーとのコラボレーション作品などが一同に介した展覧会。フラッグやフライヤーに掲げられた「ミナカケル」のマークは、"ひとつの要素が無数に掛け合わさる無限乗"の意(会場「ごあいさつ」より)であり、同ブランドを代表する蝶々(ちょうちょう)も掛けられている。
主催:株式会社ミナ
会場構成:DGT.(Dorell.Ghotmeh.Tane/Architects
マネキン協力:株式会社七彩
スパイラルのFacebookによれば、同会場を舞台としたミナ ペルホネンの展覧会は、2002年の「粒子」、2010年の「進行中」、今回の「ミナカケル」で3回目。ミナ ペルホネンの20周年であると当時に、スパイラルの30周年でもある。1Fの館内エントランス付近と通りに面した[show case]では、本展特製バッグやミナのテキスタイルを使ったホームプロダクトも並び、2Fのスパイラルマーケットでも関連商品を多数販売。
奥のアトリウム空間に続く回廊(ギャラリー)には、1995年から2015年までに発表された服のミックスコーディネートを、七彩のマネキン40体がまとう。
なんといっても圧巻は、高さ12.9mの吹き抜け空間をつかった展示。会場構成のコンセプトが会場配布物に簡単に掲載されており、記載によれば「forest」というキーワードがあてられている。
"新しい一歩のために、カオスな状態になるときがあります。空間構成をお願いしたDGT.からの提案で実現した、メリーゴーランドのようでもあり、嵐のようなモビール"(同配布物より)
"嵐のような"とは言い得て妙。かなりの重量があるフリッツ・ハンセンのエッグチェアも吊られている。

多くの人は呆れるであろうことを吐露するが、皆川氏の作品を初めて目にしたのは、ギャラリー ル・ベインでのやきもの作家 安藤雅信氏とのコラボ展「はねの器 ハナの器」が最初(手ぬぐいを3柄買った)。次いでトラフ建築設計事務所がデザインした「ココロスツール」、アルフレックスやマルニ木工とコラボした家具類であった。本展をみて、皆川さんはテキスタイル出身のデザイナーであると実感する一方で、会場を回遊した後半ーーある1枚のパネルに掲げられた文章(後述)を読んで、そのように一括りするのはとんでもなく乱暴なことかもしれないとも思った。
2Fのスパイラルガーデンに繋がるスロープの手前に、皆川さん直筆と思われるテキストが。一枚いちまい熱心に撮影する来場者多数。
中央のカラフルな嵐もしくはメリーゴーランドに対し、スロープの壁面に色彩はない。
本展ではアトリウムとカフェの境は布幕で仕切られている。マルニ木工とコラボした「ふしとカケラ」で発表された、深澤直人氏がデザインしたアームチェア「HIROSHIMA」、バッグ、傘などさまざまなシルエットがその上に落ちる。
これらミナ ペルホネンのものづくりを支える人々の様子を、会場中央のギャラリー空間の壁にループ上映された3つの映像で垣間見ることができる。真ん中に工場の様子を撮影した映像を据え、左右にショップとアトリエを従えて、3カ所それぞれの朝から晩までの様子を淡々と、丁寧に追った作品。朝は各所の掃除に始まり、作業、昼休憩、午後の作業、後片付け、最後の一人が部屋の灯りを消して、その日が終わる(映像制作:藤井光)
"私たちの想像は、工場の人の技術で形に変換される。情熱のリレーによって"。
青山通りに面したエスプラナード、続く階段空間も余すことなく使っている今回の展示。上の画・向かって左側の壁が「1×1×1...」、右側が「ima imagine imaginary」とカテゴライズされた展示。
展示とは別の柄での作業工程が映像資料に映っていた、シルクスクリーンの版と、一気に引き下ろす同じ巾のスキージも。そのほか、アイデアの走り書きや、試作品の数々、皆川氏の思い出の写真や手紙類など多数。配布物にも記されている通り、さながら"ミナ ペルホネンのアトリエのよう"な壁面。
「1×1×1...」の一角に、若かりし頃の皆川氏が北極圏の南ロバニエで出会った1枚のコートがあった。"僕にとって未来の種だったのだと思える"とのコメントが付いている。
人に使いこまれてすり減り、グレーの地に白いペルホネン=蝶々が舞う座の下から、その下の黄色いテキスタイルが顔をみせたスツール。「スツール60」の座に用いた際の、経年変化のスタディと思われる。

上の画の右奥・白い石ころのような、繭のようにもみえる物体が置かれている。その上に、会場入口でみたものとは別に、皆川氏からのメッセージが掲げられている。"私の将来の夢は簡素で心地の良い宿を運営することです。"に始まるこのテキストは、教会空間のような静謐と真摯を湛えてかつ力強く、強烈だった。
「ima imagine imaginary」の展示では、ミナ ペルホネンのテキスタイルにみられる"空想から生まれたストーリー性"を辿る。それぞれの展示品に下げられたグレーのタグにテキストが記されている。
前述・青山通りに面した展示空間「promenade」。多彩なミナ柄がまるで滝のよう。
ガラス面にも多数のミナ柄、twins、mingling、run run run などが貼られている。
bobbin、sound、tambourine、hana no mi、tarteなど。
スパイラルガーデンでの企画展「ミナカケル」は6月7日まで。オープンは11-20時、入場無料。

minä perhonen
www.mina-perhonen.jp/

追記:会期終了後の8月13日にアップデートされた、スパイラル小林館長による皆川氏へのインタビュー動画(再生:8分35秒,jpSPIRAL




+飲食のメモ。
スパイラルカフェでは1日限定30食の展覧会限定メニューも提供中だったが、今回は会場を辞す。渋谷方面へ足を向けてすぐ、目に入ったこちらの看板。"自家製レモネード、ジンジャーエール"の文字しか脳に伝達していなかったのだが、焼き菓子の専門店であった。店名は「A.R.I(エー・アール・アイ)」、店主の森岡梨(もりおか あり)さんの名にちなんでいると思われる。

甘いのと甘くない食事向けマフィンのほか、クッキー、ビスケットとドリンクメニューなどがあり、青山通りに面したカウンターもしくは小さなテーブル席でいただける。
この時期は向かいの《AOビル》に西日が隠れた16:30以降の方が過ごしやすいかも。

こちらのマフィンが、素晴らしく美味しかった。
Mrs.Elizabeth Muffin が都内から店舗を撤退して以来、おりにふれて好みのマフィンを求めていたが、ついに巡り会った。神サマ、アリガトウ。

その日指定の数種類のマフィンとドリンクがセットで900円(自家製ジンジャーエールの場合は+100円)に消費税がつく。
マフィンは温めてから出してくれるので、外側さっくり、中身しっとり。今が旬の無花果(イチジク)が半分ゴロンと入って、食べ応えあり。

とっても美味しゅうございました。ごちそうさまでした。