国際見本市「Interior Lifestyle Tokyo」6/10-12

10日から13日までの3日間、東京ビッグサイト西ホールで開催される、国際見本市「インテリア ライフスタイル(Interior Lifestyle Tokyo)」へ。 今年で25周年を迎える今年の見本市には、内外から769社が出展。
毎年恒例のアトリウムでの特別展示の今年のテーマは「Curation store(キュレーションストア)」。会場構成を設計事務所imaの小林恭+マナの両氏が担当。
「つなぎ合わせる+プラス」をデザインコンセプトに、十字に区切った4つの区画に計41の「キュレーションストアギャラリー」をたてこみ、1本の通路には24の「Jewely テーブルブース」を配した。残るもう1本の"ストリート"には、グレーの什器を起伏させながら連続させ、十字路ではその存在を一瞬、消している。平素から45度回転させた動線も、上から見るとわかりやすい。

注記.場内撮影禁止。以下に掲載する写真の撮影およびブログ掲載は、予め出展者の許諾を得た。または画像提供をいただいている。
カラーリングは明るく爽やかなイエローをメインに、グレーに白をあわせた初夏らしい配色。
黄色の"ストリート"の端と、カフェの前には休憩スペースが設けられている。テーブルとベンチはグレーで統一。元よりグレーに塗装されたコンクリート型枠用合板(コンパネ)で造作したもの。コンクリートと接する平滑な面を表面にしている。RC造の現場にでも足を運ばない限り、一般的に目にすることはまずない建材だ。
会場到着早々に、imaの小林さんに教わった、アトリウムに特別出店中のカフェ「CAFE Ryusenkei」。飲食メモにて後述。
これまでのアトリウム特別展では、天井の大空間に大きなバルーンを吊るしたり、デコレーションで覆われたりしたが、本展のグラフィックを担当したTAKAIYAMA inc.によるバナーのみ。地上も上空もスッキリとした抜け感があり、クロスのラインも強調される。出展者それぞれが推す商品の画を掲出したリコメンドウォール含めて、設計事務所imaが構成を担当した。

以下の出展者名は公式ガイドブック表記に準ずる。出展者番号のリンクは登録ページにリンクを設定。
アトリウム A-01:(株)クォーターリポート(QUARTER REPORT CO., LTD)
ファブリックメーカーの同社と、鈴木マサル氏のブランドOTTAIPNU(オッタイピイヌ)とで共同開発した新作をリリース。サイズは150×230cm、鈴木さんのブログ「テキスタイル獣道」では「デカプリント」との通称。先月24日に盛況のうち終了した「鈴木マサルのテキスタイル 傘とラグとタオルと」に続くイベント出展。今回は西ホール1-015:吉井タオルにも出展中。

なお、こちらのA-01、02、03ブースの展示構成は、設計事務所imaが手掛けている。

アトリウム A-02:(株)ビオトープ / LAPUAN KANKURIT(biotope corp. / LAPUAN KANKURIT)
「LAPUAN KANKURIT(ラプアンカンクリ)」は、フィンランドの北西部、人口15,000人ほどの小さな町・ラプリで誕生した。ブランド名は"ラプアの織り手たち"を意味する。
通路に面して何本も吊られている大判の生地の素材は麻で、100%のウォッシュドリネン。使い方は、バスタオルでもいいし、寒い日に羽織ってもいい。大きなテーブルの上に広げても使える。柔らかな風合のある生地を手にとって感じて欲しいと、あえてフリーでラフな展示に。
フェルト生地のカバーとセットにした湯たんぽと一緒なら、どんな寒い夜でも乗り切れそう。

対面は、doinel/biotopeと陶芸作家の鹿児島睦氏によるプロダクトブランド「ZUAN & ZOKEI」のブース。
アトリウム A-03:(株)ビオトープ / カゴシママコトノズアントゾウケイ(doinel/biotope corp. / Makoto Kagoshima ZUAN & ZOKEI)
今年3月に新宿伊勢丹で先行販売されていた、"壁の鳥"のやきものオブジェ「Linnut」が本格リリース(参考:当時のショーウィンドー
鹿児島さんに新作のハンカチを広げて見せていただく。見た目はほのぼのする絵柄だが、シロクマとアザラシという、捕食する側とされる側の2頭の配置。
シンプルな什器や、"鳥"を吊ったモービルなど、商品の見せ方は設計事務所imaが担当したが、テーブルに敷かれていた「方眼紙」は、前田景氏によるアートディレクションによるオリジナル。左隅の文字に目をこらすと「ZUAN & ZUKEI by Makoto Kagoshima」と記されていた。

アトリウム A-05:縞縞 小倉クリエーション
江戸期の豊前小倉藩時代に隆盛した小倉織(こくらおり)の伝統を継承しつつ、バッグや名刺入れなど、現代のプロダクツにアレンジした「縞縞 SHIMA SHIMA」。
小倉織とは、良質の木綿糸を用いた先染め平織物で、生地は地厚で光沢がある。昔は帯や袴、明治期以降は男子学生服の生地としても重宝されたという。だが、先の大戦で需要が激減し、現在に至る。
座と背に「縞縞」を張ったハンスウェグナーの「サークルチェアー」は本展が初お目見え。昨春の「メゾン・エ・オブジェ」出展がきっかけとなり、実現したリミテッド仕様。

アトリウム A-15:トラフ建築設計事務所×かみの工作所
手前の小口が波形のテーブル什器もトラフ建築設計事務所がデザイン(なお、同事務所は同じアトリウムA-06に出展中の山田繊維(株)のブランド「むす美」のブースも手掛けている。今春に同ブランド直営店のリニューアルを手掛けたばかり)
今回は「空気の器 メッセージカード」の新作が中心。髙谷廉、太公良、平山昌尚、 三星安澄、Mogu Takahashiの各氏がデザインした15アイテムのお披露目。この「空気の器で伝える気持ち 5人がデザインするメッセージカード」開催を告げる、福永紙工(株)が出した案内状にも使われている。
引っ張れば"器"になるよう、細かーーいカッティングが入っているが、文字=メッセージは潰れることなくきれいに読み取れる。
同案内状のデザインは、参加クリエイターのひとりである平山昌尚氏が描いた絵をベースに、高い山(TAKAIYAMA inc.)がデザイン。ほかの4人も加えてメッセージを寄せ書きした。
2010年に発表されて以来、バリエーションを加えながらロングセラーを続ける「空気の器」。発売以来、カタチは変わらないが、紙についてはさまざまな試行錯誤を繰り返してきたとのこと。

アトリウム A-19:tempo / mothertool inc.は昨年に続く出展。
同コンテンポラリーモビールブランドのディレクションを手掛け、デザイナーとしても参画しているDRILL DESIDN(ドリルデザイン)が、新作のスタンドモビールを発表(発売予定は今年7月)
色はケヤキとウォルナットの2種。
上の画・奥はmother toolによる真鍮製スタンドモビール。タイトル未定で、スタッフ間での取り敢えずの呼び名は「つ」。
DRILL DESIGNさんの「place to be(プレイストゥビー)」は4つのパーツにヒョイヒョイっと分解できる。まるでウソみたいな繊細さで、微妙なバランスをとりつつ、揺れる。

アトリウム A-20:(株)ウェルカム / Piet Hein Eek ブースに置かれていたフリー配布物「WALLPAPER WORLD」NLXL EDITION の中央見開き部分。同ブースで展示中の「SCRAPWOOD(スクラップウッド)」のシリーズをデザインしたPiet Hein Eek(ピート・ヘイン・イーク)の来日インタビューを収録。

アトリウム A-24:(株)E&Y
ブースの壁に掛けられた、一見して何だかわからないこのプロダクツはラジオ
「TUBE MAP RADIO」。会場では実際に受信して音楽が流されていた。デザインしたスズキユウリ氏は明和電気の出身。

アトリウム A-24:INSTANT JEWEL
工業部品の一部を成していたプラスチックの成型技術をいかした新しいアクセサリーブランド(デザイン、クリエイティブディレクション:株式会社パノラマ
ハンドメイドならぬ"マシンメイド"で成型されたパーツを、プラモデルを組み立てるようにして、使う人がその手でつくりあげるINSTANT JEWEL。白衣を纏ったスタッフが、実際に「PLAMO」や「CHAIN-CHAIN」で作ったインスタントジュエルを身につけていた。
会場でも流れているプロモーション動画が超カッコイイ。

モバイル式の什器デザイは設計事務所ima。ポップアップストアとして、これまで何度か活躍(ヨソの出展ブースでも、臨時で出張出店した際などに、ブランドイメージがブレないよう、運んだ先で組み立てられるオリジナル什器を用意しているところがあった)
発表された新作「DICTIONARIES」。バネ性のある硬質な金属線を自動機械加工で立体的なアルファベットに。ゴールドとシルバーの2種(デザイン:大友学と小澤真奈 / stagio inc.)。アタッチパーツをつければ、ピアスやイヤリング、ネックレスなど、使い手の自由にできる。

アトリウム A-38:AJI PROJECT
香川県東部で産出される「庵治石」を素材としたライフスタイルブランド。
AJI PROJECT」のカタログに記載された人名は、「花崗岩のダイヤモンド」とも呼ばれ、正式名称:雲母細粒花崗閃緑岩を加工する職人の名前。
プロデューサー:(株)リアルジャパンプロジェクト 河内宏仁、ディレクター:イトウケンジ・ウミノタカヒロ MUTE

このほか、ミナ ペルホネンのブース(A-12)では建築家の中村好文氏とコラボして生まれた本棚「Bookmock」ほかの展示、(株)かまわぬのブース(A-07)で「まめぐい」などを見ているうち、アッという間に3時間が経過(アトリウム出展ブースの半分にも満たない)。ここからは撮影+掲載交渉はさておき、駆け足。



西ホール1-173:バルミューダ(株)
先ほど発売されたばかりの「BALMUDA The Toaster」をメインに展示。
スチーム×調温機能を備えた高級トースターの性能のほどを確かめたかった(=試食したかった)が、本体のボリューム感を確かめるのみ。

やや飲食のメモ:
西ホール1の隅には、食をテーマにしたゾーン「FOODIST」が新たに設けられた。11ブースとカフェが出展、素通りできず。

西ホール1 F-08:三宅商店カフェ工房
倉敷に3店舗を構える三宅商店のカフェ部門。
「Interior Lifestyle Tokyo」のフライヤーやfacobookにはジャムの画が出ていたが、店頭で試食して惹かれたのは「koji100%」の甘酒と、倉敷の黒豆饅頭が元の「ラスク」。
「FOODIST」ゾーンのカフェスペース。

下の画は、ゾーンの外、西ホール2に設けられた打合せコーナーのテーブルとチェア。
西ホール2-149に出展中の石巻工房の刻印が。昨年2月よりコントラクト事業にも進出。

西ホール2-192:Sotto
"そっと、暮らしに寄り添う"をコンセプトに据えた仏具ブランド。高岡銅器製。木製のりん棒もすべてひとつに入った仏具「Potterin(ポタリン)」は超コンパクト。意匠登録出願中。

西ホール2-205:(株)P.D.S.アーキテクツ
設計事務所の出展。スパ空間のデザインで開発した特殊な塗膜仕上げFilmy Nature:自然の皮膜の意)を、より幅広く展開しようと立ち上げられた新ブランド「nen style」。
会場に塗装見本が並んでいたが、合板パネル、ガラス、石など塗装できる対象が広いようだ。従来のスパなどでの内装仕上げに加え、プロダクトでの展開も視野に入れている(塗装技術:清岡正彦アート設計事務所。独特の色調。

西ホール2-221:丸嘉小坂漆器店
木曾漆の技術と伝統をベースに、ガラス面を漆で仕上げたプロダクツ。器の場合、内側ではなく外側から細かな模様を塗り、さらに漆を塗って定着させている。器に湯水を注いでも影響なく、絵柄が美しく透過する。ブランド名の「百式(hyakushiki)」は、万華鏡の別称である"百色眼鏡"から。職人の手技から生まれる唯一無二かつ多彩な作品世界のコンセプトを込めた。 

西ホール2-250:吉沼硝子(株)
硝子の業務用食器、花器、金魚鉢などを製造・販売してきた浅草の企業の出展。非対称な多角形による角柱グラスのシリーズを展示。クリアのほか、底面に淡い色が入ったグラスも。

西ホール2「TALENT」T-04:TAKT PROJECT
4つのチェアの素材はプラスチック。色は塗装ではなく、水を吸い上げるプラスチックによる、いわば"染色"によって着色されたもの。今春にミラノで開催された「VENTURA LAMBRATE 2015」にも出展。
水を吸い上げるプラスチックは、主に芳香剤の芯の部分として使われている。吸い上げはコントロールできないので、同じ仕上がりにはならない。
"Dye It Yourself"はDo it Youselfにひっかけた、文字通り、自分で染めてつくる楽しみを味わうという意。出展者のTAKT PROJECTが用意した、白いクラフト紙に染色した本展案内状のように。

西ホール3-001:(株)タカタレムノス
壁一面、アナログ針の掛時計が目をひく。参加デザイナーは角田陽太、小池和也、寺田尚樹、土橋陽子、nendo、山本章ほか多数。高岡の伝統工芸師折井宏司氏とコラボして安積伸氏がデザインした「Patina」もお目見え。澄川伸一氏がデザインしたアクリルと鏡の効果を最大限にいかした置時計「IRIS」も先月発売開始された新作。イリスとはギリシャ語で虹の意。リリースのテキストを借りれば"時を刻むオブジェ"。
帰路でアイスクリームを食べて帰ろうと心に深く刻まれるこのビジュアルがニクい。寺田尚樹氏の「15.0%」に、新たなアイスクリームスプーン No.8「chocolate parfait」 とNo.9「strawberry parfait」が加わった(と、書いているだけで禁断症状が)。
後日、寺田さんから教わったところ、「今回は女性がアイスクリームを食べるシーンを意識した。ネールをきれいに施した指先と共に美しくみえるように」とのこと。


西ホール3 NEXT N18:PULL+PUSH PRODUCTS.
注目を集めていたモルタル製のラグマット&タペストリー。

国際見本市「インテリア ライフスタイル(Interior Lifestyle Tokyo)」は2015年6月10日から12日まで。10-18時(最終日は16時半まで)。なお、BtoBの商談専門見本市につき、一般の来場は不可。当日は受付で入場登録+有料(事前登録または招待客は無料)
18時の閉場が近くなると、アトリウムの西面のガラスから陽が差し込む。フロアに長い影を落として、なにやら縁日のような雰囲気に。この演出効果も計算して、imaさんは動線を傾けたのだろうか。




+飲食のメモ。
アトリウムの一角に、ふだんは箱根界隈で営業している「CAFE Ryusenkei」が期間限定出店。米国1967年生まれのAIRSTREAMを、設計事務所imaがカフェとして改装したもの。開店は2013年11月。箱根に限らず、依頼にこたえて、あちこち旅するカフェである。
エンジンはついていないトレーラーなので、電気自動車に引っ張られてお台場まで出張ってきた。スケジュールや出張情報はfacebookTwitterでも発信。
アイスコーヒー(消費税込600円)などのコールドメニューは、車の外に出したテーブルで対応。ホットコーヒー(同500円)は社内のキッチンで淹れてくれる。期間中の豆は、世田谷区の珈琲豆専門店カフェテナンゴが提供。ブレンドは本展限定オリジナル。レモンケーキやクッキー、ビスコッティなどは、江戸川区のフードアトリエtotoskkitchen(トトスクキッチン)のもの。
店名にもなっている流線型の車の中でも飲食できる。
左側がキッチン。ヨハナ・グリクセンのファブリックが張られたシートの先、ブルーの扉の奥はトイレである(今回は使用不可)。覗いたが、トイレもさらにコンパクトな空間であった。
車体後方。店舗が紹介された『商店建築』2014年9月号に、オーナー氏とimaに取材した記事が載っているので、オープンまでの経緯や車内の仕様も確認できる。同店公式サイトも情報厚く、水辺に佇むワンショットの画も美しい。
観音山レモンケーキ(消費税込み300円)は、夕方に自家製ジンジャーエール(同600円)を飲みに行った時には売り切れ御免に。
見学行脚で疲労する身を、穴ぐらのような小空間でホッと一息。美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

CAFE Ryusenkei
http://cafe-ryusenkei.com/