「金沢の町家 −活きている家作職人の技−」@LIXILギャラリー1

これまで大きな戦災や震災などに遭わなかった金沢は、加賀百万石の城下町たる屋敷群や、うなぎの寝床式の町家が連なる町並を市内の一部に残している。本展では、金沢の伝統的町家建築をつくり、まもっている職人たちと、その見事な手技の一部を紹介。

会場は大きく分けて7つ。左官、大工、石工、建具、表具、畳、瓦の伝統技術と職人を紹介。職人たちへのインタビュー映像もあり。
「左官」のコーナー。
左の展示は、竹で編んだ「小舞」に始まる土壁制作の工程見本。振動や衝撃の力を分散させる「ひげ巻き」という金沢独自に培われてきた仕様がみられる。ほか、職人がふだん使っている道具類も展示。種類の多さに圧倒される。鏝の鋼が美しいが、ケースに収めたばかりのスタート時には今よりもっと輝いていたそうだ。
「大工」のコーナー。
テーブルに置かれた「継手・仕口模型」を作ったのは、パネルの中に人物。先に完了した金沢城復元整備事業のうち、「五十五間長屋」、「橋爪門続櫓」、「鶴丸土塀」を手掛け、続く「河北門」と、134年ぶりに復元された「橋爪門」では棟梁を務めた安田正太郎氏。
「石工」コーナーの石垣模型。金沢城石垣は「打ち込みハギ」や「切り込みハギ」など、約400年前のものとは思えない、実に大胆で多彩な石積みで知られる。昔の城の石積みや民家の土台は、現代の法規からは外れるものの、よほど優れた免震構造になっているものもあるという。
この「石垣模型」は、職人の技を受け継ぐ人材育成を主な目的に、1996年(平成8)に開校した金沢職人大学校で教材として使われているもの(開校当時の入学視覚は35才以上50才未満の技能経験者で、前述・安田氏は第一期生)。展示品のなかには同校のコレクションもあるが、殆どが職人たちがそれぞれ所有しているもの。この「石垣模型」の隣のケースには(過日に旧《千代田生命本社ビル》見学ツアーで施工例を目にした)ビシャン叩きで使う槌や、石をはつる工具類もあった。
「建具」に展示されていた、6種類の「桟」の模型は、会場でどれだけ目を凝らしても、違いがわからないくらい微細な仕上げ。松葉菱の組み子見本も見事だった。その横には「板摺り」を施した板のサンプル。このように、会場は現代の住宅では滅多にお目にかかれない技のオンパレード。上の画・右端のパネルは、障子の一部にアクセントで色ガラスを入れた事例写真。建具が歪まないよう、縦桟に緩やかなカーブが施されている。
襖や屏風、掛け軸などが属する「表具」。おもてぐ、というから勘違いしがちだが、職人さんいわく、「襖の格は表ではなく、中身で決まる」という。仕上がって納品されれば、その技は次に修復の時を迎えるまで目に触れることはない。
思わず、"漫画『ドカベン』の主人公のお祖父ちゃんの職業"を連想してしまった畳屋さんも、今はすっかり目にしなくなってしまった。我が町にも1軒残っているかどうか。
下は「瓦」のコーナー。原寸図や鎚など。近年に三州瓦に席巻される以前、雪深い金沢では独自に発展した瓦の歴史がある(図録BOOKLET『金沢の町家 活きている家作職人の技』に収録。ほか本展に協力した職人たちの下積み時代から現在至る修練の日々や、「伝統技術をいかに継承するか」と題した安藤邦廣氏の論考、7年前に金沢の町家のリノベーションを手掛けたアトリエ・ワン/塚本由晴氏の談話など)
どんな市場でも、需要がなければ作り手は育たない。特殊な道具類をつくる職人達や、質が保証された原材料の確保できなくなる。既存の建物も、手を入れ続けなければ確実に傷み、やがては伝統の技術ともども失われる。 金沢市内には町家や城、寺社などの歴史的建造物が他所に比べて数多く遺され、これらの修復や復元などの実際の現場を通して、技術をが伝承され、職人が育成されつつあるという。 これを、幸いというべきか。

会期は8月22日まで(水曜、8月12日-16日休館)。開廊は10-18時、入場無料。

LIXILギャラリー
http://www1.lixil.co.jp/gallery/




+飲食のメモ。
首都高速を挟んでLIXIL:GINZAの南側にある、「コージーコーナー銀座1丁目本店」にて、夏限定・宮古島原産の塩を使った"雪塩スイーツ"「夏の生クリームシュー」をテイクアウト(1個 消費税込み135円)。2階から上にカフェもあり、11時から21時まで営業(L.O.20時)
おいしゅうございました。ごちそうさまでした。
これはこれでおいしかったが、コージーといえは時々、定番の"ふにゃっふにゃ"のジャンボシュークリーム(註.けなしてないです)を口いっぱいに頬張りたくなる。

銀座コージーコーナー
www.cozycorner.co.jp/