「ディン・Q・レ展」と「MAMコレクション002展 ソ・ドホ+ポー・ポー」@森美術館

六本木ヒルズ 森美術館で今日から始まった「ディン・Q・レ展 明日への記憶」をみる。
ディン・Q・レ(Dinh Q.Lê)氏は1968年ベトナム生まれ。10才の時にベトナム戦争時(1960-75)の戦火を逃れ、隣国タイを経由して難民として渡米し、美術を学ぶ。今日では世界で最も知られたベトナム人アーティストの一人として活動、日本では初となる個展開催であり、森美術館としても東南アジア出身のアーティストによる大規模展は初。

Q・レ氏が生み出す平面、立体、映像、写真の諸作品には、戦争の影が色濃く顕れる。
"紡がれた記憶"と題したコーナーでは先ず、Q.レ氏が国際的に注目されるきっかけとなった「フォト・ヴィービング」シリーズをみることができる。
Dinh Q.Lê《消えない記憶#10》2000-2001、《消えない記憶#14》2000-2001、共にCプリント,リネンテープ

1枚の平面の中に複数のモチーフが浮かび上がる。「フォト・ヴィービング」シリーズとは、会場の解説によると、Q.レ氏が幼い頃、ベトナム人の叔母から教わった、ゴザを編む手法に着想を得て、細かく裁断した数種類の写真プリントを縦横に組んで製作されたもの。
Dinh Q.Lê《無題(#14)》1998、《無題(二重の女)》2003

「巻物」シリーズ
報道史に名を残す写真を引き延ばして50mの印画紙に出力した作品。
左:ナパーム弾の爆撃から裸で逃げる姿を写し、1972年に「戦争の恐怖」として報道された1枚、右:1963年当時の政権への抗議行動として座しながら焼身自殺したベトナム人僧侶の姿をとらえた1枚

"ヘリコプターをめぐる物語"
農民たちへのインタビューを含む3面の映像と、実物大の手作りヘリがセットになった作品《農民とヘリコプター》。
2006年に制作され、2008年のシンガポール・ビエンナーレでも発表された。
ベトナム人にとってヘリコプターとは、戦争体験世代にとっては忌むべき兵器であり、戦後世代には、救命時や農作に利用できる機械の道具、という両極端な二面性をもつ。これに近いヘリコプターを自前でつくりあげたという若者のインタビューや、ヘリから銃撃を受けて九死に一生を得た元兵士、ハリウッド映画の名作とされる「地獄の黙示録」のシーンなどが、ひとつの映像作品の中に流れる。
米国の大学で学んでいた1989年、学生の間で人気を集めていた授業を受講した際、あまりに偏った内容に怒りを覚えて制作、校内に貼ったという《ベトナム戦争のポスター》のコラージュ作品が展示室の壁を覆い尽くす。
オーストラリアで起こったボートピープルの事件を題材とした作品。
2011年に発表された《抹消》の展示室の床には、戦火を逃れて貧相なボートで国を脱した、名も無い人々の顔、思い出の写真が敷き詰められている。来場者はそのうち1枚を選んで、場内指定の箱に入れておくと、後日インターネット上でその写真が公開される。地上から抹殺されようとした人間が、時を経て、第三者の行動によって再びよみがる。
Dinh Q.Lê《原付き修理します》2009 デジタルプリント
ベトナムのハノイ市内などでよくみられるというこの"サイン"は、「原付きバイクを修理します」という意味。この作品は、Q.レ氏から故国に送る"ラブレター"らしい。
ほか、新作の映像作品「人生とは演じること」など作品多数(出展作品:会場配布物.pdf



2003年4月の《六本木ヒルズ》開業と同時にオープンした森美術館(MAM)。森タワーの52,53階は今年4月25日にリニューアルし、森美術館が収集してきた作品が常設展示室で見られるようになった(参考:[FASHION HEADLINE] 3月24日記事、森美術館3月24日ニュースリリース.PDF
常設展示室は、受付から半時計まわりに進む企画展会場の次に位置する(反対側から回っても良い。入場は有料)。大きなガラス張りの1室がその部屋。本日より作品が入れ替わり、10月12日まで「MAMコレクション002:存在と空間 ソ・ドホ+ポー・ポー」を開催。
上の画:ソ・ドホ(Do Ho Suh)《因果関係》(2003)
ドホ氏は1962年生まれの現代アーティスト。国内ではほかに《十和田市美術館》に作品「Cause and Effect」が常設展示されている。

2012年に《広島現代美術館》にて「ス・ドホ in between」、2013年には《金沢21世紀美術館》で特別展「パーフェクト・ホーム」が開催されている。
広島現代美術館での展覧会の様子「DO HO SUH in between - Hiroshima MOCA」

金沢21世紀美術館での展覧会の様子

コレクション展の初日、たまたま来日して東京に居る予定があったソ・ドホ氏を招いて、19時からアーティストトークが開催された。兵士の首に下げられるドッグ・タグ(軍の個人認識票)による作品、《KALMA》シリーズ、金沢での展示、光州ビエンナーレ2013で展開された《In-between Hotel》、クリスチャン・ディオールとコラボしてアヴェニュー モンテーニュ30番地の館を斜幕で覆った《Seoul EXHIBITION》(参考:Dior TV インタビュー動画など、数々の「空間のオートクチュール」作品をスライドを交えてレクチャー。
森美術館のコレクション:ソ・ドホ《因果関係》の部分拡大。
作品にはもちろん触れられないが、臓器を内臓した精巧なる樹脂製人型を間近で見ることができる。
十和田美術館》では天井から吊られていた立体作品「Cause and Effect」を昨年2月に見上げた時、1個1個のパーツが"人型"だったとはウカツにも気付かなかった。

森美術館での「ディン・Q・レ展 明日への記憶」および「MAMコレクション002」は共に10月12日まで、会期中。開館10-22時(火曜は17時まで、但し9月22日のみ22時。入館は閉館30分前まで)

森美術館
www.mori.art.museum/




+飲食のメモ。
森タワー52階に、カジュアルなミュージアムカフェ[THE SUN]が新しくオープンし、なにやら「機動戦士ガンダム展 THE ORIGIN」とのコラボメニューもあるようだが(1,500円前後とけっこうお高い)、フードは21時、ドリンクのラストオーダーも21時半と、22時の閉館まで美術館を利用すると利用できないので注意。

しからばここは事前に、六本木ヒルズの夏季限定イベント「かき氷コレクション」へ、前回に続いて2度めのチャレンジ。土曜日の18時過ぎ、どれにしようか迷っている間に食券は買えたが、5店舗が並ぶ注文カウンター前には店によって長蛇の列ができていた(波はあるが、混み具合を確認したうえで食券を買うのがベター)

鎌倉から出店している「たい焼き なみへい」の「濃厚!マンゴーミルク」をいただく。消費税込み700円ナリ。
氷のかき方はたいへんよろしく、練乳が適度にかかったかき氷も美味しかった。ごちそうさまでした。

ダイハツ ウェイク presents「かき氷コレクション」
www.tv-asahi.co.jp/summerstation/area/shave-ice/