「つみきのひろば」@ Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015

東京ミッドタウンで16日から開催される「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015」プレス向け内覧会を見学。「デザインを五感で楽しむ」を基本コンセプトに、今年のテーマとして掲げられたのは「つながるデザイン」。

恒例となっている芝生広場での展示は、隈研吾氏監修による「つみきのひろば」。会場を構成しているのは、"都市と森をつなぐ"をキーワードに活動している森林保全団体more trees(一般社団法人モア・トゥリーズ)の理念に共感した隈研吾氏隈研吾建築都市設計事務所代表)が、共同で開発した「つみき(TSUMIKI)」の1ピースのかたち。

メインビジュアルは、田中良治氏が代表を務めるデザイン集団セミトラが開発したオリジナルフォント「eyeFont」で描かれたもの。表紙を飾るフライヤーには、田中氏と隈氏の対談も収録されている。

「つながる」をテーマとする今回、デザインタッチ初の試みとして、芝生広場に加え、ガレリア館内にもサテライト会場が2カ所ある。2カ所のディスプレイは空間デザイナーの松村和典氏が担当(同氏は昨秋、カンディハウス東京ショールームでのインスタレーション「komorebi」で話題を集めた)

地下1階での展示が左の画。東京ミッドタウン館内の各ショップの取り扱う、「つながる」をテーマにした内外のアイテムが並ぶ。

A字に似た木の"看板"も、隈氏がデザインした「つみき」を10倍にしたもの。展示ケースの中も「つみき」をベースとしたディスプレイとなっている。
展示例:"空間とつながる"ドイツ製のガラスランタン、"音楽とつながる"ワイヤレスヘッドホン。
この「つみき」は7、13、22ピースでのセット販売が予定されており、パッケージも隈事務所と more trees がデザインしたもの。デザインタッチ会期中、ガレリア3階の[TIME & STYLE MIDTOWN] にて先行販売中。売り上げの一部は森林保全のために寄与される。
素材はFSC認証のとれた杉。more trees が全国11カ所+海外1カ所で展開中の森づくりプロジェクトのひとつ、宮崎県諸塚村産。健全な森に育てる途上で出る間伐材などを使っている。「つみき」1ピースのサイズは縦11cm×横12cm×奥行き4cm。上の写真のようなスタッキングができ、下の写真のようなブリッジもつくれる。
上の画、商品の「つみき」を4倍の大きさにしたのが右側、展示概要の説明板となっているピースで、後述する芝生広場会場の中央に据えられた"ピラミッド"の構成ピースでもある。
ガレリア3階での展示「つみきのまち」。
照明が組み込まれた四角い展示台を除き、タワーは全て隈氏の「つみき」で構成されている。その数、約1,000個。松村氏によると、一番高いタワーでも芯材は入れず、全て接着剤によるもの。但し、1.1mを越えるものは2本以上を連結して安定させている。中央部は4本のタワーを連結。
ステージまわり、ガラスケースの台座を囲むスギ材は、隈氏の「つみき」の奥行き4cmにあわせ、見た目の統一感を出している。
杉は比重が軽い。「つみき」の1ピースも驚くほど軽量だ。巷によくあるブロック形状の積み木とは異なるこの軽快さが、隈氏がデザインした「つみき」の最大の特長。最初はスティック状で考えていたそうだが、子どもが遊ぶには難しいと、構造としても安定した三角形に。建築をひとつ設計するのと同じくらいの時間と労力をかけたそうだ。
苦心のひとつに、玩具として保証されるべき強度の確保があった。2辺が合わさる三角形の頂点、中央部分は「カンザシ」というさし木の手法で補強されている。

「3才の頃から積み木で遊ぶのが大好きだった」という隈氏は、前述の対談のなかで「造る快感と同時に壊す快感もあった」と語っている。「かんたんに壊せるものでなければ子どもは面白さを感じない」という隈氏の考えが、この「つみき」には反映されている(その言が正しかったことは後に証明される)。小さなパーツから大きなものを手でつくりあげられると同時に、瞬時に手で崩してリセットもできるという、表裏一体のデザインとなっている。

子どもでも大人でも誰でも、自由に使える、隈氏いわく「民主的な積み木」。基本となるパーツは小さいが、バリエーション次第で家具となり、庭となり、建築にもなる(隈事務所では今後、建築の構造材として使うことも視野に入れている)。ボーダーレスな"民主主義的建築"が展開しているのが今年の芝生広場。こういう積み方、遊び方ができるという提案展示でもある。
会場のディレクションも担当した隈氏は、緩やかな勾配がある広場にあわせ、手前に大人でも楽々くぐれる"つみき"を据え、カーブを描いて徐々に小さくなっていくインスタレーションを発表。子どもたちが駆け回れるよう、芝生面を意識して広くとった。
芝生広場に設けられた「つみき」のゲート。
会場のサイン計画は、永森志希乃+高岡友美のユニットによる「風景と食設計室 HOO」が担当。
隈氏のインスタレーションの「つみき」の下にはひとつひとつ照明器具が設置されており、日没後に点灯する。夜間の写真は後ほど。
前述「つみき」パーツを4倍にしたサイズで組み上げられたピラミッド。その数、125個。
真横からの眺め。
夕闇迫る17時には隈研吾氏が来場、プレスのフォトセッションや質疑に応じた。
積み木少年だったという隈氏は「いつかは積み木をデザインしたいと思っていた」。国産材および杉の合板の新たな活用、新たな表現を求めていたmore treesから持ちかけられた今回のプロジェクトはまさに渡りに船。1本の木から森を育て、社会の中で無駄なく木材を循環させるシステムを構築しようとするmore treesのサステナビリティな理念に共感したこともあるが、隈氏にとって特別な想いがある高知県檮原町で、more treesの最初の森づくりが始まったことにも縁を感じたとのこと。
「木を使うことは、森を減らすのではなく育てることに繋がる。建築家が木を使うことで、森をとりまくコミュニティを守り、さらには社会をも再生できると考えている」と隈氏。more treesとのプロジェクト始動後、「つながる」をテーマにした今回の「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015」への参加も決まった。

下の画はオープン後のヒトコマ。積み上げたものをアッサリと壊し、再び積み、また崩してを繰り返し、夢中になって遊ぶ子どもたち。前述の隈氏の言が見事に証明された。
「小さなものの中にも世界は込められる。小さなものを積み重ねていくことで、大きな世界ができていく。建築も同じ。会場を訪れた子どもたちにそんなことを感じてもらえれば」(隈研吾氏談)
参考:AXIS Magazine『jiku』隈研吾インタビュー:建築家・隈 研吾×more treesーー建築にもつながる現代の「つみき」(2015.9.17掲載)

隈氏と同様に、国産材による「つみき」を基本形として、3組4名のアーティストがそれぞれ作品を発表している。
齊藤太一「Relax & Joy tsumiki garden」
鈴木啓太「BIRD HOUSE STAND」
ミヤケマイ+佐野文彦「木ヲ見て森ヲ見ズ 森ヲ見て木ヲ見ズ」。
ミヤケ氏が佐野氏と共に考えたコンセプチュアルな世界観を表現した作品。角材による構造物のいくつかの天辺に「つみき」を2つ組み合わせた菱形が。広場の手前側は緑、奥は赤。秋の紅葉をイメージした微妙なグラデーションがつけられているとのこと。
菱形は透過性のあるシートで、中には作家からのメッセージが白ヌキ文字で込められている。日本の森林産業を取り巻く現状、矛盾が指摘されている。この「森ヲ見て...」作品は、真上から鳥瞰すると「き」という文字になるように配置されており、かつ「Not イコール」のメッセージも密かに込められているとのこと(ミヤケ氏談)
ガレリア2階からの眺め。この高さではミヤケ+佐野作品の全貌は掴めない。
日没後、岡安泉氏岡安泉照明設計事務所のライティングにより、ガラリと雰囲気が変わる。芝生への入場時間は11-18時につき、夜間は入れない。以下はプレス内覧会開催時の撮影。
Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015」は11月3日まで。入場無料。各種会場によってオープン時間や期間が異なるので、公式サイトを参照のこと。

東京ミッドタウン「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015」
http://www.tokyo-midtown.com/jp/designtouch/2015/





+飲食のメモ。
ミッドタウン館内には、隈研吾氏が設計した「サントリー美術館」がある。金沢の加賀麩 不室屋がプロデュースする[cafe]は、入館料なしで利用可。

前回のオーダーは「抹茶ラテ」。今回はセットのお茶が加賀棒茶、煎茶などから選べる「豆腐スコーンとお茶のセット」をいただく。クリームとジャムも付いて消費税込み778円はたいへんお値打ち。温めて出してくれたスコーンも美味しく、幸せに腹がふくれました。ごちそうさまでした。

サントリー美術館内 SHOP×CAFE www.suntory.co.jp/sma/shopxcafe/