納谷建築設計事務所《昭和女子大学附属 昭和こども園》を見学

納谷建築設計事務所が設計し、昨秋に竣工している《昭和女子大学附属 昭和こども園》を見学。通常は親御さんでも園が発行する身分証の提示が必要なセキュリティチェックがある施設につき、セミクローズの特別内覧会。
地下1階+地上3階建て、鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造(構造設計:昭和女子大 森部康司研究室+yAt構造設計事務所)
上の画は、施設西門前、西側道路からの園舎外観。1、2、3階のセットバック形状が確認できる。旧園舎内の樹木で中が空洞になっていたものは伐採、上の画の木は世田谷区に保存樹林の届け出をして残した。

国道246沿いの大学正門から入って行くと、L字に右に折れて、大学1号館と80年館に挟まれた空間の先に園舎が見えてくる(下の画、赤く囲ったところ)。旧園舎では園舎は北側、南側に園庭が広がり、園児を迎える門にはアーチがかかっていた。
同大学環境デザイン学科と関わりのあった建築家複数を指名して、敷地外にも在った認定保育所(昭和ナースリーなど)と合併した園舎の建て替えを大学側が計画、実施設計者を決めるプロポーザルが実施されたのが3年ほど前。隣接する初等部(上の画・左側)と同じ4階建てという大学側の草案がプロポーザル時に提示されていたところ、納谷学氏、新氏のご兄弟はあえて3階建てで、園庭を地上から1階の屋根の上に持ち上げた園舎を提案。競合他社の逆をいき、プロポーザルを勝ち取った。
設計期間は約2年。認定こども園法を想定して、保育所と幼稚園を合わせたプランを考えていたが、施行のタイミングから結果的に厳しい保育園法に準じた。待機児童問題を抱える世田谷区からの要請もあり、当初の規模より拡大して認定こども園に。
大階段を上がった2、3階が4、5歳児の保育室。1階が0歳児から3歳児の保育室。
大階段に向かって右、旧園舎にあったアーチ門を彷彿とさせる遊具の配置。かつて園内にあって中が空洞化していたため伐採した老木も遊具のひとつに(下の画)
1階メインエントランスがあるコーナー(この角が北を指す)。園庭を支える屋根に傾斜が付いているのが判る。
メインエントランス前から、大階段側面の眺め。階段下は倉庫になっている。
下駄箱を含む什器、家具のデザインは藤森泰司アトリエが担当。
緩やかにカーブする天井の下、ホテルのロビーのような開放的な教員室。スタンド照明デザインなど照明計画は岡安泉照明設計事務所
やや南に寄せた位置、前述の大階段と軸線を同じくして中庭が設けられている。面積が大きくなった園舎の奥までいかに光を取り込むかが今回の課題でもあった。児童が走り回っても衝突しないよう、柱も極力少なくしている。
遊戯室の側から、ランチルームを挟んで、保育室の眺め。向かって左から3歳児、2、1、0歳児を預かる部屋。走り回れる空間から0歳児が寝て過ごす部屋を遠ざけている。
3歳児はひまわり組。黄色いミツバチもあわせて描かれている。
2歳児保育室。
ガラス戸を閉めると組を表すグラフィックが重なるデザイン。これらの館内サイン計画は寺田尚樹氏インターオフィス粟辻デザインによるもの。
0歳児の部屋はつくしんぼうのグラフィック。扉は閉めた時に指を誤って挟んでも安全なように、把手より下の小口がゴムになっている。きょうびの幼保施設では当然の仕様とのこと。
セキュリティの厳しいキャンパス内という立地で安全性がある程度確保できるという利から、園庭および館内はかなり開放的に設計することができたという。
部屋を仕切る扉は収納式に。家具で空間を仕切るという考え方。納谷事務所も一部の家具のデザインを手掛けている。
テーブルは既製品だが、椅子は藤森アトリエのオリジナル。スタッキングできる。
保育室側から、左手が中庭、ランチルームを挟んで遊戯室の眺め。下が収納スペースになっているベンチも角を排し、緩やかなカーブを描く。
 
窓ガラスや透明パーテーションには必ず、子供の目の高さに花柄の衝突防止マークが描かれている。
段差が園児には腰掛けや遊び場になる、ペレットストーブコーナー。
親御さんには卒業生も多いため、全てをまっさらにはせず、ところどころに旧園舎を思い出せるものを残している。
旧園舎にあったタイル画もそのひとつ。
ステンドグラスも壁ごと取り外して3階に移設(ゆえのこの壁厚)
子供用トイレ。大人用トイレは別にあるが、併用できるようにカーテンを設けた。
カーテンの布のデザインは安東陽子デザイン(この回の見学時は披露がなかったが、館内ロールスクリーンのデザインも手がけている)
3階大人+子供用トイレ。
3階フロアの1/3を占める遊戯室。
晴天時は南からの陽が差し込み、ガラス屋根の下で雨の日でも遊べるテラス。向かって右側は食堂。初等部の校舎を渡り廊下で繋がっている。こちらの幼稚園の運動会は初等部と合同で開催するなど、上の代との接点を設けている。
3階ウッドデッキのテラス。
3階テラスから園庭北側と中庭の見下ろし。
中庭と南側園庭。奥の"お山"の頂上は砂場である。
もちろん階段があるが、砂場には滑り台から直行できる。
階段途中からの園舎見下ろし
2階の外壁は焼き杉+塗装。色は旧園舎の屋根に合わせた。杉板は厚みや幅を変えた4種類で表情をつけている。
大階段との境付近から、緩やかな傾斜がついた北側「こどもの丘」の眺め。
「こどもの丘」から南側の眺め。
枯れ草のような色が混じった人工芝は、建築関係者が多い見学者の間で「こんなのあるんですね」と話題を集める。
階段との境に設けた可動式フェンスのストッパーの上にも人工芝を張っている。金属の突起部分を露出させないため。
「こどもの丘」で見学者と談笑する納谷学氏、園舎からの眺め。
竣工は昨秋、10月には幼稚園の運営を再開していたが。今年4月から幼保一体の「昭和こども園」としてスタートしている。

納谷建築設計事務所 www.naya1993.com/

昭和女子大学附属 昭和こども園 http://kodomo.swu.ac.jp/




+飲食のメモ。
昭和女子大から徒歩10分ほどの住宅街にあるカフェ[ NOZY COFFEE ]で水出しアイスコーヒーをいただいて休憩中、向かいにある高級ブーランジェリー[ Signifiant Signifie(シニフィアン・シニフィエ)]の上階の飲食店が、開店と同時にゾロゾロと大勢の人が扉の中に吸い込まれていく光景を目撃。道を挟んだ公園に開店待ちの行列ができていたらしい。
聞けば、和食屋で、かき氷が有名とのこと。ならば、今年初のかき氷は此処で食せんと、シニフィアンで「パン オ ヴァン」など購入して大枚をはたいた後、[ 和キッチン かんな ]の扉を開け、行列最後尾につく。 
[かんな]はいちごやらティラミスやら多種多彩なシロップと、日光の天然氷がウリらしい。今夏初のかき氷なので+250円を奮発して天然氷「紫いも牛乳」をオーダー。¥1,000ナリ。

アイスコーヒーもパンも氷も、とっても美味しゅうございました。ごちそうさまでした。