「土木展 DOBOKU Civil Engineering」@21_21 DESIGN SIGHT

21_21 DESIGN SIGHTで24日から始まる企画展「土木展 」のプレスカンファレンスへ。
英訳すると"Civil Engineering"ーー市民のための技術であるDOBOKUを老若男女・ファミリーで親しんでもらい、さらに深く考えるきっかけになれば、というのが主催者の訴求。

企画展にあわせたグッズや書籍を集めた1F / 21_21 DESIGN SIGHT SHOP では、今回も楽しい関連商品を各種取り扱い(ショップは入場無料で利用できる)
前回の企画展「雑貨展」のオープンと期を同じくしてリニューアル。テーブルはスキーマ建築計画 / 長坂経氏のデザイン。
階段を降りて企画展会場へ。サンクンコートの壁に描かれているのは、重機(コマツのダンプトラックと思われる)はタイヤの大きさからして人の背丈くらいデカいと一目で判る「重機グラフィック」。
ロビー展示「都市の風景」。
作家のヤマガミユキヒロ氏によるキャンバスプロジェクション作品「六甲山からの眺望」。ギャラリー1の手前に「隅田川リバースケープ」も展示中。1Fショップでは「東京駅の眺望」や、東京ステーションギャラリーでの2012年企画展「始発電車を待ちながら」に出展された「Platform No1/No2」の絵葉書も販売(「熊本城」の絵葉書の売り上げはチャリティーとして寄付される予定)
展覧会ディレクターを務めるのは、東京大学名誉教授の内藤 廣氏の推薦を受けた西村 浩氏株式会社ワークヴィジョンズ代表取締役)。 ドローイング作品「東京駅駅解体」、「新宿駅解体」を前に、プレスカンファレンス冒頭に挨拶。
西村氏と内藤氏それぞれのコメントをまとめると以下の通り。
「この会場に来るために皆さんが使った電車や道路など、インフラを整備するのが土木の仕事。我々の日常生活を支え、暮らしの空間ほぼ全てが土木によるもの。現場にはものすごいものづくりのエネルギーがあり、最新技術が投入され、ナイーブかつダイナミック、社会を変えていくものである。そんなことをいちいち意識させないのが土木の良いところだが、ひとたび大きな災害が起これば悪い意味で注目されてしまう、誤解を受けやすいのが土木でもある。それに対して我々関係者は敗北感のようなものを味わってきたが、デザインとアートの力で乗り越えようというのが本展の狙い。これはほんの入り口にすぎず、本展を見れば、それまでの暮らしの見え方が変わってくるはず」。
TASS建築研究所の共同代表を務める建築家の田中智之氏は、東京の巨大ターミナルを俯瞰したドローイング作品を3点出展。上の画は「渋谷駅解体」。
ギャラリー1「DOBOLERO」。渋谷駅で進行中の再開発現場で集めた音で奏でる、モーリス・ラヴェルの楽曲「ボレロ」にあわせて、日本の高度経済成長を支えた工事現場などの映像で構成された、大迫力の土木オーケストラ。
ワークヴィジョンズによる「土木の道具」の展示。このうちひとつを青森で借用しようとした際のエピソードが面白い。借用先に「これは土木で使った道具ですか?」と確認したところ、先方に「道具に土木も何も区別があるものか。土木専用なんて道具は存在しない。道具は道具だ」と返されたとのこと。
解説パネルを掲示した足場に引っ掛けられたタオルは本展オリジナルグッズのひとつ。グラフィックを担当した柿木原政広氏株式会社10incによるデザイン。
ギャラリー2では、土木にまつわる行為:まもる、ほる、つむ、ためる、つく、つなぐ、ささえる、はかるなどをキーワードに、参加作家それぞれがドボクを表現。
壁面をスクリーンでループ上映の映像作品は、ビジュアルデザインスタジオWOWによる「まもる:キミのためにボクがいる」。画面を動き回るドボくんをナビゲーターに、山間部斜面で樹木を保全するノンフレーム工法、沿岸部における消波ブロックなど、知られざる3つの工法をわかりやすく解説。
康 夏奈(吉田夏奈)「ほる:地質山」は、作家いわく「一瞬で地層のありようがわかる」作品。
(株)設計領域による「人孔(ひとあな)」はマンホールをモチーフにした擬似体験展示。
マンホール孔から顔を出すと、こんな感じ。これほど至近にアスファルトを眺めることなど日常ではまずもってナイ。
作品には下水管の主の姿も。
(株)感電社が刊行する土木建築系総合カルチャーマガジン 『BLUE'S MAGAZINE(ブルーズマガジン)』に掲載された、写真家・菊池茂夫氏による「現場で働く人達」シリーズについて説明する社主の柳 知進氏(右)と、同社顧問で作家の石丸元章氏。柳氏は水道土木工事会社の経営者でもあり、パンクバンド活動も行なっている。音楽のライブに通じる現場の"LIVE"感を切り取った写真とのこと。
『BLUE'S MAGAZINE』バックナンバーはプレカン開催時にロビーにて特別配布された。
漫画家の横山裕一氏による「ニュー土木」(手前)と、土木を専門に取り続けている写真家の西山芳一氏による大判写真4点(奥の壁)。 「土木の美しさ、かっこよさ、スケール感が伝わる写真をセレクトした」。
西山氏が撮影した貴重な土木写真は、階上のショップにあるパネル「土木マップ」でも見ることができる。
403architecture [dajiba]は"つむ"をテーマに「ライト・アーチ・ボオリューム」を出展。ビニル素材の台形エアクッションを本展のために特注、橋の構造を体験して学ぶことができる。
桐山孝司(東京藝術大学大学院映像研究科教授)+栞原寿行(東京藝術大学COI特任助手)は、「土木で遊ぶ:ダイダラの砂箱」を2タイプ出展。共に砂を敷き詰めた"砂箱"で、来場者が砂に触れて自由に高低差を変えることができる。要は、児童公園のお砂場のようなもので、右奥の"砂箱"では等高線が、手前の"砂箱"では高いところが赤く、低いところが青く、リアルタイムで投影される。
後者の"砂箱"では、"上空"でかざした手が雨雲と認識され、下の窪地に雨水が溜まる。
日本左官会議(挟土秀平、小林隆男、小沼 充、川口正樹)による「つく:山」。
左官職人が手で突いた痕跡が残る版築工法を取り入れた土と石の作品。ピラミッド状の壁の表面は掻きおとし仕上げ。「大型重機が導入されるまで、土木は人の手が作り上げてきた、その歴史に想いを馳せてもらえれば」と関係者談。
渡邉竜一+ローラン・ネイ株式会社ネイ&パートナーズジャパンによる「ささえる:ストラクチャー」。板のままでは自重でたわむ、厚さ1ミリのステンレスによる橋の縮尺模型。
厚さ1ミリともなると、人力ではパンチングや溶接などの加工が不可能となり、それらをロボットが担当する。全長65メートルの橋の計画が実際にヨーロッパで進行中。
田村圭介+昭和女子大学環境デザイン学科 田村研究室が制作し、過去にも何度か渋谷マークシティ内のスペースなどで披露されている「渋谷駅(2013)構内模型」。
平面縮尺1/100、垂直方向は1/150で表現。地上5階+地下3階の空間に、JR、私鉄、地下鉄各線が乗り入れる巨大ターミナル駅の複雑な構造がわかりやすい模型。
DOBORELOの音楽に始まり、ファミリーで楽しめる体験型を含む展示の数々、ライゾマティクスリサーチによる「Perfume Music Player Installation」などを巡った後、最後に、主催者は、目をそらしてはいけない現実の問題をしっかりと提示する。「自分たちの未来、街をどう作るかを考えてほしい」と西村氏談。関東大震災後に架けられた永代橋設計図(上の画は、青図による「BLUE WALL」を構成したEAU代表取締役の崎谷浩一郎氏)と並んで、東日本大震災で被災した三陸地域を記録した、GSデザイン会議+岩本健太監督による66分の映像作品『GROUNDSCAPE』を上映。

土木展 DOBOKU Civil Engineering」は21_21 DESIGN SIGHTにて9月25日まで。

展覧会チーム(敬称略)
展覧会ディレクター:西村 浩
企画協力:内藤 廣
企画チーム:崎谷浩一郎、新堀大祐、中村勇吾、八馬 智、羽藤英二、本田利器
テキスト:青野尚子
会場構成協力:菅原大輔
照明デザイン:海藤春樹
展覧会グラフィック:柿木原政広
アドバイザー:中村英夫


21_21 DESIGN SIGHT
www.2121designsight.jp/




+飲食メモ(後日の追記)
「土木展」関連イベントとして、東京ミッドタウン内の飲食店2店舗で、会期中特別メニュー「ダムカレー」を提供している。会場の展示品(カレーを貯水湖、白飯を防波堤に見立てた数種類の「ダムカレー」の食品サンプル)と同じレイアウトのダムカレーを実際に、という趣向(参考LINK:日本ダムカレー協会
「銀座プラチナダムカレー」を提供するプラザ館1F(敷地の端の端)にある[GRILL&WINE BENIE'S TOKYO]はラストオーダー14時に3分間に合わず、炎天下をガレリアB1Fの[デリー]に引き返す。

「ダムチキン・ダムカレー」(ドリンク付き¥1,200 左の画の赤丸囲い)を食すつもりが、この日は気分で[ビーフカレー クラシック]をオーダー。かなりボリューミー。欧風とうたってはいるが、やはり独特のスパイシー感が舌に残る。
牛肉トロトロで、美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

DEHLI(デリー)
www.delhi.co.jp/