CASE GALLERY 移転オープンのこけらおとし展「木工房ようびと14人のテキスタイルデザイナー」展

代々木上原・井の頭通り沿いにあったCASE GALLERY(ケースギャラリー)が、代々木八幡・旧山手通り沿いに移転、23日からこけら落としとなる展覧会「木工房ようびと14人のテキスタイルデザイナー」が始まった。

2棟のマンションに挟まれた、約7坪という狭小地に建てられた、床面積は約5坪のギャラリー。敷地も屋根も三角形のこの小さなギャラリーが建つ以前は、夏場は背丈ほどの雑草がぼうぼうの土地だったという(上の画・向かって左手が小田急線代々木八幡駅まで徒歩7分ほどの南側、向かって右が京王新線初台方面の北側)
竣工は今年5月末頃。設計者は新関謙一郎氏NIIZEKI STUDIO。6月に開催された内覧会時の様子、設計者については、[japan-architects.com]ブログのレポート元代々木プロジェクトが詳しい。
床および天井の三角形は正二等辺ではなく、構造と内装を兼ねるツーバイ用木材を中央の頂点に向けて立て込んでいく際、職人さんが難儀したとのこと。
三角形の北側隅からの天井見上げ。右側の辺に打ち込まれている"くさび"は本展の作品(後述)を展示するためのもの。
2辺の頂点には天井まで採光用のスリットが開けられている。天井と壁に照明器具はない。上の画に見えるグレーの箱(トイレレーム)の天井部分に、空調と照明がわからないように収納されている。
スリットがもしもクロス状なら、教会のような雰囲気。小さな"荒地"に出現したこの三角形の建物に、地元の人々も建設中から興味津々で、見学時にも「ここは何をやっているところなのか」と通りすがりに何度も声をかけられた。
北側隅からの眺め。
約9mもの長いスパンを支える細い鉄骨の角柱。雨が降った時、三角屋根をつたって道路側に落ちる雨水は均等に、滝のようにならないよう、水平のラインを美しく保つことが求められた。
道路からは一段上がっており、往来との距離は近いが、互いの視線が交わることがない。表面の板が竣工から約2か月を経て退色し、内部の床とひと続きのグレーになった。この横長のスペースは、昼夜を問わず"都市の縁側"のような様相を見せている。
左右の壁、真ん中がややくびれた木の把手がついた扉と合わせて3枚の一枚ガラス。それなりに重量があるが、ガラス戸は女性でもスムーズにスライドできる。
"負けるな、ようび、愛してる"とサブタイトルがついた本展。出展者の一人である木工房ようびは、岡山県西粟倉村で「用」と「美」を兼ね備えた家具づくりを行なっている職人たちが運営しているのだが、今年1月に工房を始めとする活動拠点を火事で焼失。facebookなどでそれを知った、木工房ようびの活動に共感し、作品を愛する全国の人々の力添えもあり、早期に活動を再開することができたという。
本展は、CASE GALLERY ゆかりの作家やテキスタイルデザイナーとのコラボレーション。木工房ようびが3年ほど前から販売している「ホタルスツール」の座面をキャンバスとした作品14点が、左右の壁に華やかに並ぶ。

参画した14人(五十音順):
赤羽美和、植田志保、kata kata、gabriyolly、シミズダニヤスノブ(JUBILEE)、島塚絵里、鈴木マサル、炭酸デザイン室、点と線模様製作所、氷室友里、Masashi KONDO、YUMI YOSHIMOTO、YOKANG、ようびオリジナル[デザイン協力 西川圭]

森の"きのこ"のようにも見えるこの「ホタルスツール」は、香がやや強くて継手仕口などの加工も難しいため家具には不向きとされてきたヒノキを用材とする。危機的状況にある日本の林業、そのひとつでもある西粟倉村産の間伐材を有効に使うことで、人が手を入れ続けて守るべき森林の生態系を整備し、緑と水が揃って豊かな地を好むヒメホタルの繁殖につながるようにという願いを込めてのネーミング。
円形の座面は脱着可能。腰を下ろせば背筋がピンと伸びる椅子、またある時はサイドテーブルとしても使える。日本の和の空間や、人々の暮らしにそっと寄り添い、ポッと灯してくれるような家具にという、木工房ようびとしての願いもまた込められている。
素材も柄もコンセプトも"14人14色"の座面は、壁に釘を1本も打ち付けることなく、2×4材によるストライプの美しさを損なうこともなく、後付けの展示台に据え置かれている
ホタルスツールの座面がちょうど立てかけられる台を付けたパイン材が、壁の段々に違和感なく収まっている。丈は取り付ける位置の床から天井までの高さぴったりにカット。天井と壁との接点に、前述・パイン材の"くさび"を打ち込み、固定している。
この見事な会場構成は、本展出展者の一人である鈴木マサル氏が自身初となる"傘展"を、当時は代々木上原にあったCASE GALLERYで開催した際に会場構成を手がけた、小林 恭とマナの両氏が代表を務める設計事務所imaによるもの。
参考:設計事務所imaがyoutubeに掲出した2012年「鈴木マサル傘展 持ち歩くテキスタイル」会場の動画
設営時の様子や、14名の出展作家については、CASE GALLERYの公式facebookが詳しい。
この時期は両隣に立つ2棟のビルの間に陽が沈む。照明が灯された後のCASE GALLERYは、内外観ともにガラリと雰囲気が変わる。 
「木工房ようびと14人のテキスタイルデザイナー」展 負けるな、ようび、愛してる の会期は8月9日(火)まで。開廊は12:00〜20:00、会期中無休。

CASE GALLERY(ケースギャラリー)
www.casedepon.com/

木工房ようび
http://youbi.me/




+飲食のメモ。
代々木八前駅から旧山手通りを北上してCASE GALLERYを目指す途中、複雑な起伏を持つこの土地ならではの歩行路の脇に設置された黄色い看板が目に入る。左の画・ビルの1階にある焼き菓子専門店に入るには、ビルのエレベーターを拝借して降りるべし。
こちらはテイクアウト専門店。この日は夜も予定があったのでキッシュ類とショコラのタルトは諦め、予約しておいたベイク類ほか(下の画)を引き取りに戻った17時頃の店内が上の画。やや品薄の状態(8月3日から営業日は水・木・金・土曜日、開店時間12:00〜19:00)
プレーンのスコーン、バニラのパウンドケーキ、パインナップルとココナッツのケーキ、バターサブレ、どれも美味週ございました。ごちそうさまでした。

temps des coloris(タンデコロリ)
http://temps-des-coloris.com/