「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」@21_21 DESIGN SIGHT

21_21 DESIGN SIGHTにて、企画展「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」が14日から始まる。前日に開催された内覧会にて会場を見学。
展覧会グラフィック:佐藤卓デザイン事務所

「デザインの解剖」とは、本展覧会ディレクターを務める佐藤卓氏が、2001年から取り組んでいるプロジェクト。きっかけは、ガムや(本展でも取り上げる)牛乳など、身近な大量生産品の商品デザインに関わり、そのモノの成り立ちや背景といったデザインの裏側について、世の中に伝わっていないのではないか、ものづくりの現場がブラックボックス化し、製品がただの記号と化してしまうのではないかという、デザイナーとしての懸念から。
これまで解剖対象となった事例が導入部の展示。
掲出文によれば、「デザインの解剖」とは、
①身近なものを ②デザインの視点で ③外側から内側に向かって ④細かく分析することで ⑤ものを通して世界を見る ⑥プロジェクト である。
本展で解剖されるのは、株式会社明治の〈きのこの山〉〈明治ブルガリアヨーグルト〉〈明治ミルクチョコレート〉〈明治エッセルスーパーカップ〉〈明治おいしい牛乳〉の5点。その解剖結果たるや膨大だが、誰にでもわかりやすく、というデザインの初歩が守られている(会場構成協力:五十嵐瑠衣)
様々な解剖データの展示に加え、13組の若手クリエイターが出展。見て、触れて、感じとれる、インタラクティブ性も盛り込まれている。
例えば〈きのこの山〉の展示室で見られる、クリエイティブチーム aircordによる〈正面外装グラフィック印刷の拡大〉では、展示台のダイヤルなどを操作すると、表面の網点のほか、白1色と思われた部分にも微細なデザイン処理が施されていることが明らかに。
2つ目の解剖対象は〈明治ブルガリアヨーグルト〉。
製品開発の契機は、1970年の大阪万博のブルガリア館で、当時の社員が口にしたヨーグルトの味同製品公式サイトより)。翌年に「明治プレーンヨーグルト」として発売された紙パックから現在までの〈正面外装グラフィックの変遷〉が、aircordが制作した流れるような映像表現で確認できる。
本展では、まず消費者が最初に目に触れ、製品を意識するロゴが入ったパッケージという外側から内側へ向かって解剖が進んでいく。
ふだん何の気なしに食べている食料加工品のパッケージの情報量を浮かび上がらせた展示。
この後に出てくる牛乳もヨーグルトも、毎朝摂取しているが、ここまで面と向かって付き合わされることなどない。1つの製品が世に出るまでのレイヤーの種類と量に圧倒される。
解剖対象〈明治ミルクチョコレート〉の展示。
当備忘録からリンクを設定している5製品の公式サイトについて、グラフィックデザイナーの中野豪雄氏が〈ウェブサイトの解析〉を行なっている。
解剖対象〈明治エッセルスーパーカップ〉の展示。
容器を巨大化させて形状の微細な部分をわかりやすく視覚化。
明治おいしい牛乳〉の解剖。製品を安全・確実に運搬するためのケースも並べ、進化を続ける流通のデザインについても展示。
aircord〈ロゴタイプの書体変化〉は、手前のダイヤルを回すとパッケージの書体が変化する。佐藤卓氏いわく「デザイナーにとって未来のツールになりうる」。
積み木感覚で学びとれる下浜臨太郎〈ロゴタイプの拡張〉の展示では、四方に用意された踏み台がかわいらしい。
佐藤卓氏が「おいしい牛乳」のアートディレクションを手がけたのは2001年、今から15年前のこと。ほかの乳製品パッケージも手がけている(参考:佐藤卓デザイン事務所サイト
会場ではこのほか、5製品を1つの同じ手法で解剖した展示も。
手前:菅 俊一〈製品に関与する人たち〉では、社内外の各セッションとのつながりを視覚化。奥の壁は、各製品ができるまでを図で示したもの。
荒牧 悠〈工場設備の動き〉の展示は柱周りをうまく使っている。
私たちが牛乳を得るために、乳牛がどんな草や資料を食べ、1年間にどれくらいの量の乳を搾られ、糞を排出するかを視覚化した展示(ちなみに雌の乳牛1頭の年間乳量は約9tとのこと)
作ること・食べることとは、同時にあらゆる場面でゴミが出るということ。効率的かつ環境に配慮した処理が不可欠に。
「このように、身近なモノを解剖していくと、分子レベルまで到達し、ひいては宇宙と繋がっているとも言える。今の時代は想像力がすごく大事。本展を見て、世の中って面白いなぁと思ってもらえれば」(内覧会プレスビューの終わりに、佐藤卓氏談)

入場料無しで利用できるショップも展示と同じくらい楽しい。今回は解剖対象にならなかった製品「明治たけのこの里パズル」、佐藤卓氏がデザインしたオリジナルビーカー、小泉硝子製作所の三角フラスコ、瑠璃色の綿球容器、志賀昆蟲普及社のルーペなど、リケジョ的グッズがズラリ。
企画展「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」は 21_21 DESIGN SIGHTにて、2017年1月22日(日)まで。21日のギャラリーツアーを皮切りに、会期中は関連プログラムも多数開催。

21_21 DESIGN SIGHT「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」
www.2121designsight.jp/program/design_anatomy/




+飲食のメモ。
先月16日に国内4号店めとしてオープンしたばかりの [ブルーボトルコーヒー六本木カフェ]へ。朝8時から20時までの営業、席数は27。平日の午前10時台は悠々と過ごせた。
上の画・左手奥は、六本木天祖神社を見下ろしつつぐるりと回る遊歩道に接続。
設計は長坂常氏が代表を務めるスキーマ建築計画、施工:TANK
カタネベーカリーのパンを使ったサンドイッチなど、フードメニューが魅力的な六本木店。「太陽の味がしますよ」と説明された「サフラン&バニラビーンズクッキー」(税抜¥300)と、カフェラテ(税抜¥520)をオーダー。なるほど、ウマいことを。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

ブルーボトルコーヒー
https://bluebottlecoffee.jp